「建築基準法上の私道」にご注意を~2項道路を中心に~
相談例
増築を予定して、行き止まりとなっている道に接した住宅を購入しました。
ところが、役所から、「増築を予定されている土地の一部が、建築基準法の『2項道路』に指定されていますので、その部分に建物を建てることはできません」と言われてしまいました。
「2項道路」というのは、どういったものなのでしょうか。私の所有する土地なのに、知らない間にそのような指定がされて、増築ができなくなってしまうことなどあるのでしょうか。
ここがポイント
1.建築基準法上の私道
私道とは、一般に、私人が所有・管理するものですから、基本的にはどのように使用するかは私人の自由に任されているはずです。
しかし、その私道が、建築基準法の適用を受ける道路である場合には、一定の制限を受けることになります(なお、私道のトラブル一般につきましては、2014年11月号「私道をめぐるトラブル~売買前の調査が重要!」をご参照ください)。
建築基準法というのは、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康および財産の保護を図り、公共の福祉の増進に役立つことを目的として定められた法律のことです。昭和25年11月23日から施行されています。
建築基準法は、道路を基準として、敷地と道路との関係、道路内の建築制限、私道の変更または廃止の制限といった規定を設けています。
このように道路が様々な制限の基準とされているのは、道路が単なる交通の手段であるということにとどまらず、防災活動や避難の手段となったり、日照や風通りなどを確保したりする上でも、大切な役割を果たすことが期待されているからなのです。
2.建築基準法上の道路の種類
では、こうした建築基準法における道路には、どういったものがあるのでしょうか。
建築基準法は、原則的な道路として、都市計画区域内においては、幅員(道の幅のことです)4メートル(特定行政庁が指定した区域内では6メートル)以上であり、次のもの(建築基準法42条1項)を道路としています。
①道路法による道路
②都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法等による道路
③建築基準法が施行された際に、現に存在する幅員4メートル(6メートル)以上の道路
④ ①、②の法律等による新設・変更の事業計画がある道路で、2年以内に事業が執行される予定のものとして、特定行政庁が指定したもの
⑤特定行政庁が利害関係人の申請に基づき位置の指定をした幅員4メートル(6メートル)以上の私道(位置指定道路)
※特定行政庁とは、簡単にいえば、建築主事を置いている地方公共団体の長(市町村長や都道府県知事)です。建築主事とは、建築確認等を行う地方公共団体の公務員のことです。
以上の原則に対し、建築基準法では、例外的に、「2項道路」という制度を設け、上記のような道路にあたらないものであっても、一定の要件を満たす場合には、道路とみなすこととしています(建築基準法42条2項)。
次項で詳しくご説明いたします。
3.2項道路とは
(1)2項道路が認められている理由は?
先ほどみましたとおり、建築基準法上の道路と認められるには、4メートル以上の幅員がなければなりません。
しかし、実は、建築基準法ができる前の法律であった市街地建築物法という法律では、幅員2.7メートル(9尺)以上の道であれば、4メートル未満であっても、例外的に道路と認められていました。
このような経緯があるにもかかわらず、かつての道路を建築基準法で決められた基準(幅員4メートル)を満たさないからといって、道路ではないことにしてしまいますと、市街地建築物法の下では適法であった多くの建築物が、建築基準法に適合しない建築物となってしまうという不都合が生じます。
そこで、こうした建築物を一時的に救済するために、「2項道路」の制度が設けられたのです。
すなわち、幅員4メートル未満のものであっても、一定の要件を満たす場合には、42条1項の道路とみなし、基本的にその中心線からの水平距離2メートルの線をその道路の境界線とみなすものとしたのです。
そうして、現在は建築物が境界線からはみ出していたとしても、将来、増改築が行われる機会に、建築物を境界線までセットバックさせることで、次第に、幅員4メートルの道路が出来上がっていくようにしたのです。
(2)2項道路といえるためには?
では、どういった要件を満たす道が2項道路となるのでしょうか。
建築基準法42条2項、これについての裁判例や行政の考え方によりますと、
(ア)建築基準法第3章の規定が適用されるに至った際に
(イ)現に建築物が立ち並んでいること
(ウ)幅員四メートル未満の道であること
(エ)一般の交通に利用されていること
が必要であるとされています。
特に問題となるのが、(イ)の「現に建築物が立ち並んで」いたという要件です。
その具体的な意味については、考え方が分かれており、2戸以上の建築物が存在していればよいという考え方と、それだけでは足りず、建築物が道を中心に寄り集まって市街を形づくり、道が一般の通行の用に供され、防災、消防などの面で公益上重要な機能を果たす状況にあることが必要である、とする考え方があります。
また、(エ)の「一般の交通に利用されている」というのは、現実の利用度までは問わず、通行の可能性が確保されていればよいとする考え方が一般的です。そのため、相談例のような行き止まりの道であっても、一般の方が現実にはそう通行していなかったとしても、通行の可能性がある場合には、この要件を満たすものといわれています。
(3)どのように指定される?
こうした要件を踏まえ、特定行政庁が2項道路を指定することになりますが、この指定は申請によらずに職権で行われます。
また、指定の方法には、特定行政庁が対象となる土地を具体的に特定した上で行う個別的指定と、特定行政庁が規則や告示によって行う包括的指定の方法があります。実際に行われているのは、包括的指定の方が多いと言われています。
包括的指定の場合、土地を特定せずに、一定の条件を満たす道を一括して指定することになります。
2項道路の指定は、所有者などの承諾を得て行われるものではありませんので、相談例のように、私道の所有者の方が知らない間に「2項道路」として指定されている場合もありえます。
4.2項道路に指定されるとどうなる?
このようにして2項道路に指定されますと、その道は建築基準法上の道路として制限を受けることになります。
例えば、建築物などを道路内や道路に突き出して建築したりしてはならないことになります(建築基準法44条1項)。
また、建築基準法上の道路は、多くの場合に、いわゆる「接道義務」を果たすための前提となっているため、勝手に廃止したり変更したりしてはならないことになります(建築基準法45条)。
※「接道義務」とは、簡単にいえば建築物の敷地が道路に2メートル以上接していなければならないという義務のことです(建築基準法43条)
5.まとめ
以上からしますと、相談例のように、知らない間に私道が2項道路に指定され、建築物が建てられなくなっているという場合もありえます。
このように、建築基準法が適用されることになりますと、私道であっても大きな制限を受けることになります。
そのため、住宅を購入する場合には、敷地に接している私道が2項道路に指定されていないかといった道路についての調査を行うことが大切ですが、専門的な内容になることもありますので、専門家に相談されることをおすすめいたします。
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