表明保証条項とは
相談事例
私が所有している土地と建物を売却するにあたり、買主候補者との間で売買契約条項についての交渉を行っています。そのなかで、先方から、土地について土壌汚染がないこと等についての表明保証条項を入れて欲しいとの要望がありました。
表明保証条項とはどのようなものですか。また表明保証条項を設ける場合に検討や注意が必要なことはありますか。
解説
1 表明保証条項とは
表明保証条項についての法律上の定義はありませんが、「契約当事者の一方が、相手方当事者に対して、一定の事項を表明し、その表明した内容が真実かつ正確であることを保証する条項」などと言われます。
本件における表明保証条項は、売主が、買主に対し、売買の目的物である土地について土壌汚染がないこと等を表明し、その表明した内容の真実性・正確性について保証するものであり、もし仮に表明した内容に反して土壌汚染が見つかった場合には、それに伴う責任を負うことになります(責任の内容として損害賠償責任等が考えられますが、契約内容等によります。)。
なお、表明保証条項は、もともと欧米の契約実務において利用されていたところ、我が国の契約実務においても用いられるようになったものであり、日本においては表明保証条項についての判例等の蓄積がまだ十分とはいえないことから、表明保証条項に違反した場合の効果が明確ではないなどの指摘があります。
2 表明保証条項を設ける場合に検討や注意が必要なこと
表明保証条項を設ける場合に検討や注意が必要なことの例として、以下の点が挙げられます。
(1) 表明保証の対象事項の限定及び明確化
表明保証違反があった場合、表明保証条項の内容等によっては損害賠償責任等が発生することから、表明保証の対象事項が広範にわたる場合には、表明者の負担が重くなります。また、表明保証の対象事項についての定め方が不明確であると、表明保証違反の有無の判断が難しくなります。このような事情を踏まえて、表明保証の対象事項の限定や、明確化の方法・程度等について検討する必要があります。
(2) 違反の重大性による表明保証責任の限定
表明保証違反があったとしても、その違反の程度には軽重があります。軽微な違反があった場合にも必ず損害賠償責任等を負うこととすると、表明者にとって酷となる場合があります。このような事態を避けるため、表明保証違反が重大な場合に限り責任を負うという条項にするなどして、表明者の責任を限定することを検討することがあります。
(3) 表明者の主観的要素による表明保証責任の限定
仮に何らの留保なく表明保証をした場合、表明者が全く想定していない事実が発覚したときでも、客観的にみて表明保証内容に反していれば責任を追及される可能性があります。このような事態を避けるために、表明者の知・不知等を問題とし、例えば、表明者が知る限りにおいて対象事項が真実かつ正確であることを保証するという条項にするなど、表明者の主観的要素を考慮することにより責任を限定することを検討することがあります。
(4) 表明保証の時点の明確化
いつの時点の事実関係等について表明保証するのかを明確にする必要があります(契約締結時の事実関係等について表明保証するのか、代金支払い・引渡し時とするのか、両時点とするのか等)。
(5) 表明保証違反の効果の明確化
表明保証条項への違反があった場合に、どのような効果が発生するのかを明確にする必要があります。効果としては、例えば、損害賠償責任や解除権の発生などが挙げられます。また、契約不適合責任との競合が問題になりうる場合には、契約不適合責任との関係(表明保証責任と契約不適合責任のいずれも追及できるのか、いずれかしか追及できないのか等)を明確にし、矛盾がないようにする必要があります。
(6) 表明保証違反による責任を負う期間の制限
表明保証違反の効果として損害賠償責任等が定められ、その責任を負う期間が長期間にわたる場合には、表明者にとって大きな負担になります。そこで、例えば、表明保証責任を負う期間を土地建物の引渡しの日から1年に限るなどの期間制限をすることを検討することがあります。
3 最後に
このように、表明保証条項を設ける場合には、個別具体的な事情により、検討や注意が必要なことが多数あります。売主の立場からすれば、そもそも表明保証条項を設けること自体の是非について検討する必要があります。いずれにしても、表明保証条項が問題になる場合には、専門家へのご相談をお勧めいたします。