日当たりが良い物件を購入したのに隣地にマンション計画が・・・
相談事例
私は、日当たりが良い家で暮らしたいと思い、そのような希望に沿う家を見つけて購入しました。ところが、聞いたところによると、隣地でマンションの建設計画が持ち上がっているようであり、マンションが建つと私の家に日が当たらなくなるのではないかと心配しています。私が家で日当たりを受ける利益というのは、法的に保護されるのでしょうか。日当たりが悪くなる場合、マンションの建築主などに対して、何か主張できるのでしょうか。
1.日照は法的な保護の対象になる
本件のように居宅で日当たりを受ける利益は、快適で健康な生活に必要な生活利益であり、法的な保護の対象になります。
しかし、人々が互いに土地を利用して社会生活を営んでいることなどからすれば、建物が建つことによって隣地の日照が妨害される結果が生じてしまうことは避けられません。
そのため、日照妨害が発生したからといって、ただちに日照妨害に当たる行為が違法になるわけではなく、日照妨害の程度が、妨害された側にとって、社会生活上受忍すべき限度(以下「受忍限度」といいます。)を超えている場合に、違法になるとされています。
2.受忍限度を超えるかどうかの判断要素は何か
日照妨害が受忍限度を超えるかどうか(日照妨害が違法と評価されるかどうか)については、何らかの基準があるわけではなく、個別具体的な事情を総合的にみて判断をするほかありませんが、以下のような判断要素が挙げられます(あくまで一例です。)。
①日照被害の程度
当然のことですが、日照被害の程度が大きいほど、受忍限度を超えるという評価を受けやすくなります。なお、一般的には、冬至日の午前8時から午後4時までの間、建物主要開口部がどの程度の時間、日照を妨害されているかを中心に、日照被害の程度を把握します。
②地域性
都市計画法上の用途地域の指定や、その地域における土地の利用状況は判断要素になります。例えば、低層の建物が中心の住居系の地域であり、今後も建物の中高層化は進まないと見込まれる場合には、商工業系の地域等よりも日照を保護する要請が一般的に高いと言えます。
③加害回避の可能性と被害回避の可能性
例えば、建築主側において、合理的な範囲内での設計変更や建物の配置の工夫などによって、隣地の日照被害を容易に減少させることができるにもかかわらず、そうした行為をとらないという事情がある場合には、日照妨害が違法と評価される可能性を高めます。
④加害建物の用途
加害建物が学校や病院などの公共的建物か、それとも営利目的の建物か等は、判断要素になります。
⑤交渉の経緯や態度
例えば、建築主側が、建物を建築するに当たって、周辺住民と誠実な協議を重ね、日照に関する紛争が生じないよう努力をしてきたような事情がある場合には、日照妨害が違法と評価される可能性を減少させます。
⑥加害建物の公的規制違反の有無
公的規制の例として、建築基準法には日影規制があります。この規制は、規制対象地域内において、所定の高さ等がある建物が近隣の敷地に落とす日影の時間を制限し、近隣の日照を保護しようとするものです。建築建物がこのような日影規制に違反しているかどうかは、重要な判断要素になります。
3.本件について
本件の相談者が日照を受ける利益は、法的保護の対象になります。
もっとも、隣地のマンション建設によって、相談者の居宅への日照が妨害されるとしても、ただちにその日照妨害が違法になるわけではありません。ご説明したような判断要素をもとに、日照妨害が相談者の受忍限度を超えると判断される場合に、はじめて違法と評価されるのです。
そして、もし受忍限度を超える場合、相談者は、マンションの建築主や施工者に対して、建築工事の差し止めや、損害賠償を請求することが考えられます。
なお、受忍限度を超えるかどうかの判断や、とることのできる法的手段については、個別具体的な事情に基づく専門的な判断が必要になりますので、まずは弁護士にご相談されるようお勧めいたします。