不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産売買の法律アドバイス眺めが気に入って不動産を購入する際に注意すべきこととは?(2015年10月号)

不動産売買の法律アドバイス

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弁護士
田宮合同法律事務所

2015年10月号

不動産売買に際し、留意しなければならない事項を弁護士が解説した法律のアドバイスです。

眺めが気に入って不動産を購入する際に注意すべきこととは?

相談事例

 わたしは、今の家が手狭になったので、郊外の住宅地を購入して住宅を建てることを考えています。土地が高台にあるため、市街地を遠くまで見渡すことができる眺めが気に入っています。
 ただ、最近は高層マンションの建設ラッシュが起きているようですので、私が購入を予定している土地の近隣にも高層マンションが建ち、眺めが悪くなるかもしれないと心配になりました。
 今のところ、近隣で高層マンションが建設される計画はないようですが、今後はわかりません。
 もし高層マンションが建設されて眺めが悪くなりそうな場合には、建築工事の差止めを求めることができるでしょうか。また、マンションが建設されて眺めが悪くなってしまった場合には、損害賠償請求を求めることができるのでしょうか。

ここがポイント

1.眺望の利益は法的に保護されるのか?
 相談事例で問題となっているような特定の場所から得られる眺めのことを「眺望」といいます。
 たしかに、眺望は、景色などを見る人に美的な満足感や精神的な安らぎなどを与えるものですので、人が生活していくにあたって少なからず価値があるものといえます。
 しかし、日照、騒音、大気汚染といった問題が、人の健康などに直接的な影響を与えるのに比べますと、眺望が害されたとしても人の健康などに直接的な影響を与えるとはいえないところです。
 また、眺望の利益は、ある特定の場所を所有していたり、占有していたりすることからたまたま得られる利益であるという面もあります。
 参考のために、東京高等裁判所の裁判例をご紹介します。

「元来風物は誰でもこれに接しうるものであつて、ただ特定の場所からの観望による利益は、たまたまその場所の独占的占有者のみが事実上これを亨受しうることの結果としてその者に独占的に帰属するにすぎず、その内容は、周辺における客観的状況の変化によつておのずから変容ないし制約をこうむらざるをえないもので、(略)」

 このような観点から、眺望の利益は当然に保護に値するとまではいえないものと考えられています。
 もっとも、このことは、眺望の利益がいかなる場合にも法的保護に値しないということを意味するものでありません。
 眺望の利益について社会通念上独自の利益として承認される重要性があると認められる場合には、法的保護に値するものとされています。

 2.法的保護に値するのは具体的にはどういった場合か?
 では、法的な保護が受けられる程度に重要性があるといえるのはどういった場合なのでしょうか。
 まず、リゾート地などの景勝地においては、そこから見える風景に特別に重要性が置かれていることが多いため、眺望の利益が法的保護に値するとされることが多いといえます。
 これに対し、大都市においては高層建築物が数多く建設されることが予定されています。そのため、大都市にあるマンションや住宅からの眺望の利益は、法的保護に値しないとされることがほとんどでしょう。
 相談事例のような郊外においては、眺望や見晴し、視界の良さといった点を重要な目的として建物が建設される場合もあるので、眺望の利益が法的保護に値するとされることもありうるといえます。

 3.「受忍限度」とは?
 もっとも、眺望の利益が法的に保護に値するとしても、それだけで、裁判において、差止め請求や損害賠償請求などが認められるわけではありません。
 法的に保護に値する眺望の利益が害されたとしても、社会通念上、一般に受忍すべき範囲内であるとされると、損害賠償請求などが認められないことになります。
 こうした考え方を、「受忍限度論」といいます。
 相談事例のような住宅地における眺望についての裁判例では、眺望を侵害している建物が法律を守った建築物である場合には、適法な財産権の行使の範囲内であるとして、受忍限度を超えるものではないとされることが多いといえます。

 4.購入の際の注意すべきこと
 以上からしますと、眺望を気に入って不動産を購入される際には、必ずしも眺望の利益が法的保護に値するとされるとは限らないこと、法的保護に値するとされたとしても、眺望の利益が害される程度が受忍限度を超えていないとされる可能性があることに注意しておかれる必要があるでしょう。

 5.相談事例の場合など
 相談事例の場合には、購入を予定されているのが郊外の土地ですので、大都市の場合に比べれば、眺望の利益が法的保護に値するとされる余地はあります。
 しかし、住宅地からの眺望の問題ですので、建築されるマンションが法律に従ったものである場合、裁判例の傾向からしますと、侵害の程度が受忍限度を超えていないとして請求が認められない可能性が相当に高いといえるでしょう。

 大阪高等裁判所も、類似の事例において、次のとおり述べて、眺望の利益が法的保護に値するとみることは極めて困難であると判断しました。

 「(本件居宅の眺望は)第一種中高層住宅専用地域(略)における一般住宅の眺望であって、(略)単に、本件居宅敷地が付近より高台に位置し、周辺が未開発であったことからこれまで眺望利益を享受しえたにすぎないものであることが明らかである(略)」

 なお、相談事例の場合とは異なりますが、売主が周囲に高層マンションが建設されることを知っていたのに黙っていた場合などには、別途、信義誠実の原則に基づく説明義務に違反したとして、売主に対して、損害害賠償請求などが認められる場合があります。

 いずれにせよ、眺望を巡る問題は専門的な判断が必要となりますので、専門家に相談することをおすすめします。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

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