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不動産売買の法律アドバイス

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弁護士
田宮合同法律事務所

2015年5月号

不動産売買に際し、留意しなければならない事項を弁護士が解説した法律のアドバイスです。

家族で不動産を購入するときの注意点~「共有」とは?

事例

ここがポイント

 「共有」は有用な制度ですので、不動産を購入する際には、検討すべき選択肢の1つとなる場合も多くあります。もっとも、「共有」という制度にはいくつかの制約もありますので、あらかじめ制度の内容を確認しておきましょう。

1.「共有」とは
 数人で1つの物を所有することを「共有」といいます。不動産(土地・建物)だけでなく、家財道具や車など、他の財産も共有することができます。
 物を共有する人の権利を「持分(もちぶん)」または「持分権(もちぶんけん)」といいます。共有者は、一定の割合ずつ持分をもちますが、その割合は自由に決めることができます。たとえば、2人で1つの物を共有するとき、2分の1ずつの持分とすることもできますし、片方が10分の9の持分をもち、もう片方が10分の1の持分をもつこともできます。
 不動産については、所有者の住所・氏名などを登記することとされていますが、不動産を共有する場合には、共有者の住所・氏名とともに、共有者ごとの持分も登記することとされています。以下では、不動産を共有する場合を念頭においてご説明します。

2.「管理行為」には持分の過半数が必要
 通常のメンテナンスなど、不動産の現状を維持することは、持分の割合にかかわらず、それぞれの共有者が単独で行うことができます。これを「保存行為」といいます。
 これに対して、共有物の利用・改良などを行うことを「管理行為」といいますが、管理行為は、持分の価格の「過半数」でなければ行えません。過去の裁判例では、賃貸している不動産の賃貸借契約を解除するのは「管理行為」だとして、過半数の持分をもたない者は他の共有者の同意なく契約を解除できないとした例などがあります。
 したがって、不動産を2人で2分の1ずつの持分割合で共有する場合には、どちらの共有者も「過半数」(2分の1を超える)持分をもたないため、どちらも単独では管理行為を行うことはできないことになります。

3.「変更」・「処分」には全員一致が必要
 農地である土地を宅地にするなどの「変更」や、建物を取り壊して新しい建物を建てるなどの「処分」については、共有者全員一致の同意が必要とされています。
 例えば、建物を取り壊す場合、仮に多数決で行えることとすれば、少ない割合の持分しかもたない共有者は、意思に反して権利を失ってしまいます。このように、変更や処分については、それぞれの共有者の権利に対する影響が大きいため、多数決で決めることはできず、必ず共有者全員の同意が必要とされているのです
逆にいえば、共有者が1人でも反対する限り、共有物全体を変更・処分することはできません。
 (なお、マンションなどの区分所有建物は、不動産を共有する場合と同様な状態にありますので、以前は、建て替えには区分所有者全員の同意が必要とされていました。しかしながら、建て替えの促進などのため、その後、5分の4の多数決により新たな区分所有建物に建て替えることができる制度が設けられています。もっとも、区分所有建物ではなく、建物の共有の場合には、このような特例は設けられていません。)

4.持分の処分は自由
 共有者は、自分自身がもつ持分自体は、自由に処分することができます。
 例えば、不動産を2人で2分の1ずつの持分割合で共有する場合、共有する不動産自体を売却するには共有者全員(2人)の同意が必要ですが、2分の1の持分だけを売却することは自由です。
 もっとも、実際には、持分だけを購入しようという人は多くないと思われます。結局、持分は自由に処分できるといっても、実際に購入者が現れて売却できるとは限りません。

5.分割請求
 共有には以上のような制約がありますので、共有者は共有物の分割を請求することができます。例えば、土地を2分の1ずつ共有する場合には、それぞれの取得する土地の価値が等しくなるようなラインで2つに分け、それぞれの単独所有地とするよう求めることができますし、共有者間の話しあいがまとまらない場合には裁判所に分割してもらうことができます。
 もっとも、土地であればどこかに線を引いて分ければよいでしょうが(その線を定めるのもかなり困難ですが)、建物は「私は玄関とリビングと台所、あなたはベッドルームとバスルーム」などと切り分けることはできません。一方の共有者が他方にお金を支払って建物全体を取得するという方法もあり得ますが、そのような経済力がなければ、売却したうえで代金を分けるほかありません。

6.共有物「全体」を持分に応じて使用
 例えば不動産を2分の1ずつ共有する場合でも、それぞれが不動産の2分の1の面積だけを使用できるのではなく、不動産の「全体」を、持分に応じた割合で使用することができます。
 ただし、使用の割合はあくまでも持分の割合に限られますから、共有者の1人が独占的に使用した場合には、持分に応じた使用をできない他の共有者に対して損害賠償責任を負うことになります(なお、他の共有者が独占的な使用に同意しているのであれば、このような問題にはなりません)。

7.「共有」は実際にトラブルになるのか?
 1人で1つの不動産を所有する場合には、管理でも処分でも、自分の意思で好きなように決めることができますが、「共有」という制度には、以上のとおり、いくつかの制約があります。
 では、共有はトラブルのもとである、として敬遠しなければならないのか、というと、必ずしもそうではありません。
 「事例」の新婚夫婦のように、2分の1ずつお金を出し合って不動産を購入したいのであれば、2分の1ずつの持分で共有したうえで、管理も処分も、夫婦の共同作業として仲良く話しあって決めれば、何の問題もありません。もっとも、話しあいが成り立たなくなると困ってしまいますので、不動産を夫婦で共有するというのは、場合によっては結婚指輪の交換に匹敵するような制約を伴う、ということは認識しておいた方がよいかもしれません。

8.少し異なる事例
 「事例」は夫婦でお金を出し合うということでしたが、お金を出すのが夫婦どちらか一方の親である場合はどうでしょうか。妻が2分の1・夫の父親が2分の1の共有、とした場合、夫の父親が亡くなったときにその持分の相続の問題が出てきます。
 また、夫婦ではなく、両親と子ども2人の4人でお金を出し合う場合はどうでしょうか。子どもの1人が将来家を出た場合や、孫の代に承継する場合などに、公平に共有不動産を使用したり持分を分けたりするのは、なかなか難しい問題です。
 もちろん、話しあいによりトラブルなく円満に解決されていることが多いとは思いますが、共有する人の関係が遠くなったり、人数が増えたりすると、トラブルの可能性が高まっていくことにはなります。

9.若干の脇道・・・共有物分割請求権と経済的自由権
 すこし脇道にそれるようですが、かつて森林の分割請求を制限していた法律について、最高裁判所は、憲法に違反して無効と判断しました。分割請求により「単独所有」に移行させる権利は、財産権、経済的自由権として憲法により保障されているのです。人は、「みんなの物」ではなく「自分の物」を所有することによって初めて、自分自身で判断し行動できる自由な個人として市民社会を築くことができる、という意味で、物の「単独所有」は、自由の基盤としてとても重要な意味をもっています。そのような自由を重視する観点からは、「共有」はあくまでも例外的な制度といえるかもしれません。
 もっとも、つながりや絆を大切にする観点からは、共有者個人の自由は制約されても、話しあいにより円満に解決していけばよい、ともいえますので、「共有」は避けるべきだというわけではありません。共有する物があるということは、夫婦や家族の絆を確かめるきっかけになるかもしれません。
 重要なことは、「共有」とは、意のままにならない制約が生じる可能性もある制度であることを十分理解した上で、ご自身の判断により選択することでしょう。

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