不動産売買のときに気をつけること~土地の状況・不具合
不動産売買に際し、留意しなければならない事項として、今回は「土地の状況・不具合」の問題をとりあげます。
ここがポイント
1.土地の状況・不具合が問題となるのはなぜか
不動産の売買において、買主候補者が、物件を購入後、建物を建築することを考えている場合がしばしばあります。
建物が建っていない土地(更地)のみを買おうとする買主候補者は、更地の状態のまま利用しようという場合もありますが、土地の上に将来建物を建てようと考えている場合もあります。
また、建っている建物と土地の両方を買おうとする買主候補者が、物件購入後、建物を取り壊して新しく建物を建てようと考えている場合もあります。
以上のように、買主候補者にとって、購入する土地のうえに希望する建物がきちんと建つかが大きな関心事である場合、土地の状況・不具合が問題となります。売主としては、土地の状況について知っていることや、土地の不具合と考えられることについて、不動産売買契約の前に、きちんと買主に報告しておく必要があります。例えば、次のようなことです。
①土地の地盤が沈下しているのではないかと考えられるような状況がある
②以前、地盤が軟弱だと言われたことがある
③前所有者から、昔、この土地には建物が建っていたが、そのときの建物は取壊されたものの旧建物の基礎や旧建物の廃材、浄化槽、井戸などの残存物が土地の地中に残っていると聞いた
④前所有者がこの場所でクリーニング業を行っていて、薬剤が残留しているかもしれないと聞いた
2.土地の不具合
(1)土地の不具合の例はいろいろありますが、重要なもののひとつに「地盤の問題」があります。
(ⅰ)不動産売買後に、建物を建築する際、建築を依頼する建設会社から地盤・地耐力調査を要請されることがあり、その結果、「地盤が軟弱のためこのままでは希望の建物は建てられません。希望の建物を建てるためには地盤補強工事が必要です」と求められる場合があります。
「地盤の不具合」によっては、そのような追加費用がかかるのです。
買主の建築計画が具体化しているのであれば、買主は発注を予定しているハウスメーカーに、あらかじめ希望する建物と基礎工事や地盤補強工事に伴う概算額について相談・確認しておくとよいでしょう。
(ⅱ)そもそも、不動産売買契約の前に、売主としては、①土地の地盤が沈下しているのではないかと考えられるような状況がある、②以前、地盤が軟弱だと言われたことがある、など知っている事実があれば、買主に対し伝えておくべきですが、例えば、②地盤が軟弱だと言われたことがあるという事実を売主が買主に対し事前に伝えておくことにより、「それでは、地盤調査をあらかじめ行っておいたほうがよいのではないか」、「地盤調査は売主と買主のどちらが依頼をかけて、どちらが費用の負担をするか」、また、「仮に地盤調査の結果、軟弱地盤の調査結果が判明した場合はどのように取り扱うことにするか」「地盤補強工事が必要な場合の費用はどちらが負担するか」などを、契約前に売主と買主の間で確認しておくことができます。契約前に売主と買主との間で確認しておくことができれば、紛争の発生を予防することができます。
(ⅲ)「地盤の軟弱」の問題だけではありません。「地盤の沈下」も問題です。売主が、土地と建物の両方を売却する場合、敷地の沈下が敷地の一部で生じたり、敷地の一部が他の部分に比べて沈下速度が速い場合、その上の建物が地盤に追随して傾くことがあります(不同沈下)。
売主としては、建物や基礎にひび割れが生じる等の現象が生じた場合は不同沈下が発生している可能性があることに留意し、売買契約前に報告しておくべきです。万が一「高く売れなくなるから土地の沈下を買主に黙っていよう」などと知っているのに報告をしないまま不動産売買契約を成立させてしまうと、あとになって買主から高額な損害賠償や契約の解除・無効・取消などの請求をされるなどして、売主が責任を追及されることになってしまいます。
(2)土地の不具合の例として、「擁壁」の問題もあります。
既存擁壁が存在する物件を購入する場合、買主としては、その既存擁壁を利用して建物の建築が可能であるか否かに注意が必要です。それは、既存の擁壁の中には、建築基準法の確認手続を経ていないもの、中にブロック塀を簡易に積んだだけのもの、などもあります。
最近建築確認を取得のうえ建築された擁壁である場合を除いて、擁壁の構造や強度については疑ってかかるくらいの対応が必要と考えられます。
既存擁壁が存在する物件を購入後、将来、建物を増改築・再建築する場合は、所轄官庁から、既存擁壁について、補修や再築等の指導がなされる場合があり、その際は、費用負担が生じることがあるということに留意いただき、既存擁壁への対応や費用負担も、契約前に売主と買主との間で確認しておくことができれば、紛争の発生を予防することができます。
(3)以上のほかにも、土地の不具合の例として代表的なものに「地中埋設物」の問題や「土壌汚染」の問題があります。
以前の所有者から、旧建物の基礎などが地中に残っていると聞いた、とか、以前の薬剤が土地に残留しているかもしれないと聞いた、などの情報は、きちんと売主から報告すべきことは、これまで述べたことと同様です。
「地中埋設物」の旧建物の基礎などの問題の場合、例えば、過去にその土地にどのような構造や規模の建物が建っていたかという情報は法務局で建物の閉鎖謄本を取得することによってわかります。その建物の閉鎖謄本は誰でも取得することができるのです。そうした建物の閉鎖謄本は、旧建物の基礎の可能性を推測するひとつの材料となることがあります。
「土壌汚染」の問題の場合、御承知のとおり、土壌汚染対策法が制定されていますので、売買契約にあたっても、この法律に留意する必要があります。
土壌汚染や地下汚染のおそれがある場合は、事前に調査機関に土壌調査などを依頼するよう契約前に売主買主で確認しておくとか、あるいは、契約のなかで、状況に応じて、土壌汚染調査を誰がいつ行うか、調査費用は誰が負担するか、土壌汚染調査結果により売買契約を解除できる条件などを特約で定めるなど、売主買主で確認しておくことが重要です。