不動産売買のときに気をつけること~「土地の面積と売買代金」
ご相談
私は、ある土地の購入を考えておりますが、その土地については、きちんとした測量がなされているかどうかわからないようです。このような場合、売買契約を締結するとしたら、どのようなことに留意しておけばよろしいでしょうか。
ここがポイント
1.土地の面積
「土地の面積」は「地積」ともいわれます。
土地の面積は、不動産登記簿・全部事項証明書などの「地積」の欄に記載されています。
その意味では、登記簿上の面積というのは、「地積」の欄の記載をみれば、だいたいこのくらいの面積なのだな、とひととおり判断することができます。
登記簿上の面積は「公簿面積」ということもあります。
ところが、実際には、登記簿上の「地積」の数字は、その「土地の真実の面積」の数字とは異なることがあります。
登記簿上の「地積」の数字は、絶対に正しい数字であるとは限らない、ということを、まずご理解ください。
2.売買する土地の範囲と境界
売買対象の土地の面積は、土地の範囲が決まっていれば一義的に明白のようですが、土地の範囲を決める「境界」がどこであるか、は、実務上、それほど簡単に明確にされているものではありません。
昔からの御影石の境界杭が明確に四隅に入っていれば、その境界杭を結んだ線が、近隣の間で、境界であると認識しているといえそうですが、境界杭も抜かれたり、移動されたりで、境界の認識は人によって異なるということもありえます。
境界杭がない場合、塀などが境界の根拠とされることもありますが、昔、塀を設置する際に境界より内側に塀をつくった、などという事情を述べて、塀が境界を示すものとはいえない、などの言い分がでることもあります。
また、仮に、「境界」が明確であり、土地の範囲が決まっていても、専門家による測量がなされてはじめて、当該土地の正確な面積が出されることになります。その実測面積が登記簿上の「地積」と一致しないこともあるのです。
3.取引する土地の境界や範囲の確認方法
土地を買う場合、土地の境界や範囲を買主が確認する方法としては、たとえば、次のような方法があります。
(1)買主が売主から土地の境界や範囲の指示や説明を受けるが、隣地の人との立ち合いは行わない。測量も行わない。
(2)買主が売主から土地の境界や範囲の指示や説明を受けるとともに、隣地の人との立ち合いで境界確認は行うが、測量までは行わない。
(3)対象土地を実測して隣地の人との「民民の境界」を確認し、境界確認書を作成し、隣地の人に署名と押印をしてもらい(実印での押印、印鑑証明書の添付が必要な場合もあります)、私人との間で境界に争いがないことを確認するとともに、公道などとの間の「官民の境界」を証する書面も取得し、確定測量図も作成する。
以上のうち、買主にとって、将来、境界問題が一番発生しにくい方法は、(3)のように、確定測量された後の土地を買う方法です。
他方、(1)のように、隣地所有者の立会や、隣地所有者の確認もなく、売主の説明が有るだけ、というのは、境界問題が隠れているリスクがあります。
(3)の方法が買主にとって一番リスクが少ないわけですが、しかしながら、売主は、売買契約を締結する前に、「売主側で測量はしないが、それでもよいという買主候補のみを募集する」などという立場をとることも自由です。確定測量がなければ買わないという購入希望者に対し、売買契約が成立していない段階において、そのような購入希望者には売主側としては売る気はない、という選択肢をもっているのです。
実務上は、「不動産売買契約の前に、必ず、確定測量が行われる」ものではないことにご留意ください。
4.土地面積と売買代金の定め方
土地を買うにあたり、その土地の面積が、登記上は明らかだけれども、実際に測量しているわけではないので、正確な面積が登記上の表示より大きいのか小さいのかはわからないという場合、土地購入を検討している人としては、売買代金の定め方について、次のような方法があります。
(1)登記簿上の面積を記載したうえ、土地の売買代金は〇〇円と固定してしまって売買契約を締結する方法です。代金を決めて売買を実行してしまいますが、買った後で、測量によって、実際の土地の面積が登記簿上の面積よりも大きいことが判明し、買主が得をした結果となっても、買主は売主に対し追加代金は支払わないし、逆に、実際の土地の面積が登記簿上の面積より小さく買主が損をしても、買主は売主に代金の減額を請求したりはしない、と取り決める定め方です。
売買代金固定型であり、「公簿売買」と表現したりします。
売買契約書のうえでは、たとえば、次のように記載します。
「売主、買主は、本件土地の売買対象面積を○ ○ とし、同面積が測量による面積と差異が生じたとしても、互いに売買代金の変更その他何らの請求もしません。」
(2)以上に述べた「売買代金固定型」とは異なり、「売買代金清算型」という定め方もあります。
それは、売買契約を締結した後、残代金支払日までに測量を行って、その実測面積と売買契約締結時の登記簿上の面積の差については、残代金支払において清算する方法です。
測量によって、実際の土地の面積が登記簿上の面積よりも大きいことが判明した場合は、買主は売主に対し大きい分にみあうだけの代金を残代金支払日までに清算して支払わなければならないと定め、逆に、実際の土地の面積が登記簿上の面積より小さい場合は、買主は売主に対し小さい分にみあうだけの代金を残代金支払日までに清算して減額すると定める方法です。
売買契約書のうえでは、たとえば、次のように記載します。
「売主は、買主に対し、残代金支払日までにその責任と負担において、隣地所有者の立会を得て、資格ある者の測量によって作製された土地の測量図を交付します。」
「売主、買主は、本件土地の測量の結果得られた清算対象土地の面積と登記簿上の面積とに差異が生じたとき、売買代金清算に関する覚書を締結して、残代金支払日に、表記清算単価により売買代金を清算します。」
5.測量について
(1)実測面積によって売買代金を清算すると定めて売買契約を締結した場合、測量が重要になります。
測量は、土地家屋調査士などの専門家に依頼することになります。
(2)対象土地を実測して、隣地の人との「民民の境界」を確認し、境界確認書を作成し、隣地の人に署名と押印をしてもらい(実印での押印、印鑑証明書の添付が必要な場合もあります)、私人との間で境界に争いがないことを確認するとともに、公道などとの間の「官民の境界」を証する書面も取得する。そのように、民間のみならず国や自治体の公的な関係でも全ての隣接地の立会いを完了した「確定測量図」が、買主にとって一番リスクが少ないことは前述したとおりです。
(3)しかし、確定測量図を作成するため、国・自治体に境界の確認と立ち合いを求めその対応を待っていると時間がかかってしまうこともありえます。
隣地が国・自治体が所有・管理する道路であるときは、買主は、国・自治体の境界確認を省略して、隣地の民有地のみの立会・境界確認した測量図でよいとすることもできます。
6.まとめ
購入を希望する土地について、きちんとした測量がなされているかどうかわからない場合、土地の購入希望者としては、当該売買契約の際に、売主側に「測量」させる義務を負わせるか、それとも、売主側に「測量」させる義務まで求めないか、を、決めておく必要があります。
さらに、仮に、測量した結果、登記面積と実測面積が異なった場合、売買代金の清算をするか、しないか、を考え、決める必要があります。清算しないとすれば、実測面積が登記面積と異なっても代金額の変動はなく、代金は固定ということになりますが、それでよいか、契約前に、買主自らよくお考えになられたうえ、売主との売買契約締結にのぞむ必要があります。