不動産購入、不動産売却は「三井住友トラスト不動産」

 購入を検討している土地と建物には、所有者であるＡさんがＢ銀行からお金を借りたときの抵当権が登記されています。抵当権という言葉は聞いたことがあるのですが、どのような権利なのですか。またこのような抵当権付きの不動産を購入するときに、どのような注意をする必要がありますか。

（１）Ｂ銀行は、Ａさんにお金を貸すときに、将来、Ａさんが必ず返済してくれるとは限らないことから、返済が滞った場合に貸付金の回収ができるような取り決めをしておきたいと考えます。そのような取り決めの一つとして、Ｂ銀行は、Ａさんと合意して、Ａさんの不動産に抵当権を設定したのです。
 抵当権を設定しておけば、もしＡさんがＢ銀行から借りたお金を返済しなかった場合には、Ｂ銀行は、裁判所に申し立てて強制的に不動産を競売し、売却代金から優先的にお金を回収することなどができます。

（２）このように抵当権は、債権者（Ｂ銀行）の債務者（Ａさん）に対する債権の回収を担保する（債権回収を確実にしようとする）ために設定される権利であり、「担保物権」という種類の権利です。なお、抵当権に着目した当事者の呼び名として、Ｂ銀行を「抵当権者」、Ａさんを「抵当権設定者」といいます。

（１）抵当権は、抵当権設定者（Ａさん）と抵当権者（Ｂ銀行）の契約により設定することができ、抵当権設定者は抵当権者に対して不動産を引き渡す必要はありません。
 このように、抵当権設定者がそのまま不動産の使用を続けられることは、抵当権の大きな特徴とされています。この点は、同じ担保物権である質権の場合、不動産の占有を質権者に移転することが効力発生の要件とされていることとよく対比されます。
 例えば、Ａさんが不動産を工場として使用して事業を行っており、この工場が使用できなくなると事業に支障が生じるような場合には、質権ではなく抵当権を設定することが適しています。

（２）抵当権は、第三者が所有している不動産にも設定することができます。
 例えば、Ｂ銀行のＡさんに対する貸付金の回収を担保するために、Ｃさんが所有している不動産に抵当権を設定することもできます。この場合、Ｃさんは、「物上保証人」と呼ばれます。

（３）抵当権は登記をすることによって、抵当権付きの不動産を購入した第三者に対しても対抗する（抵当権の効力を主張する）ことができます。
 本件では、Ａさんの不動産には抵当権の登記がされていますので、相談者がこの不動産を購入した場合には、Ｂ銀行は相談者に対して抵当権を対抗することができます。

（４）同じ不動産に複数の抵当権を設定することもできます。
 本件では、Ａさんの不動産にはＢ銀行の抵当権しか設定されていませんが、例えば、その後にＡさんがＤ銀行からお金を借りて、Ｄ銀行を抵当権者とする抵当権を設定することができます。複数設定された抵当権の優先順位は、登記の先後で決まります。

（５）抵当権は、債権の保全のために設定されるものですから、債権が消滅した場合には抵当権も消滅します。
 例えば、本件で、ＡさんがＢ銀行から借りたお金をすべて返済すれば、Ｂ銀行のＡさんに対する貸金債権が消滅することから、抵当権も消滅します。

（６）ＡさんがＢ銀行にお金を返さない場合、Ｂ銀行は、抵当権の実行として、裁判所に対して競売の申し立てをすることができます。
 要件を満たした申立てがなされた場合、裁判所のもとで不動産の競売手続が行われます。買受人が代金を納付すると、不動産の所有権は買受人に移転します。この売却代金は、一定の基準に従って債権者に配当されます。そして、売却があると、抵当権は消滅します。

（１）前記のとおり、本件の不動産にはすでにＢ銀行の抵当権が登記されていますので、相談者が不動産を購入したとしても、Ｂ銀行は相談者に対して、抵当権を対抗することができます（このような意味で、相談者よりもＢ銀行のほうが優先されます）。
 したがって、相談者が不動産を購入したのち、ＡさんがＢ銀行にお金を返済せず、抵当権が実行され、競売になった場合には、相談者は不動産の所有権を失ってしまう可能性があります。このように、抵当権付き不動産を購入する場合には、のちに抵当権が実行されて所有権を失うなどのリスクがあることに注意をする必要があります。

（２）このようなリスクを避けるためには、売買契約締結前の段階で、ＡさんがＢ銀行に借入金を返済できるのか、いつ、何を原資として借入金の返済をするのか、などといった事項を確認し、抵当権抹消のための段取りを確認する必要があります。
 そして、売買契約締結後に抵当権を抹消するという場合には、売買契約において、不動産の引渡し・所有権移転時までにＡさん側で抵当権を抹消することなどを定めて、抵当権の負担のない状態で不動産の所有権移転及び引渡しを受けることが考えられます。