不動産売買のときに気をつけること~不動産購入者が注目すべき不動産の要素
不動産売買に際し、留意しなければならない事項として、今回は「不動産購入者が注目すべき不動産の要素」をとりあげます。
ここがポイント
1 不動産売買は、高額な取引であることが多いわけですが、全く同じ不動産はないといってよいほど、さまざまな個性、諸条件があります。不動産を購入する側からすると、建物がある場合はその建物の状況はもちろんのこと、その立地状況、土地の所在場所、周辺土地の状況など、いろいろな諸要素が極めて重要となります。
そのため、不動産を購入する前には、現地をこの目で見てみたい、現地見分を行いたいと購入予定者が考えるのです。
これら現地見分はもちろん重要で、購入予定者はぜひとも行うべきですが、他方、現地見分だけではわからないのが不動産です。現地を見ただけで、即刻、気にいったとしても、不動産には現地を見ただけではわからない諸条件がありますから、購入するにあたっては、その不動産の要素、諸条件、特性をふまえたうえで購入を決めるよう購入者は気をつけることが大事です。
以下、具体的にみていきましょう。
2 都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限
宅地建物の購入者は、何らかの用途に供する目的を有していますが、都市計画法、建築基準法、宅地造成等規制法などの法令に基づく制限によって、宅地建物に対する現状変更の禁止、建築制限、利用制限などの様々な制限を受けます。
対象の不動産が、都市計画法上の区域の別(市街化区域、市街化調整区域、非線引区域、準都市計画区域、その他)により制限される内容に、購入者は注意する必要があります。
建築基準法においても、対象の不動産の「用途地域名」「地域・地区・街区名等」「建ぺい率制限」「容積率制限」「敷地等と道路の関係」「私道の変更又は廃止の制限」「その他の制限」がありますので、これも注意する必要があります。「敷地等と道路の関係」では、敷地と接する道路により、様々な制限が生じます。敷地に接する道路の幅員が4メートル未満の場合は再建築時にセットバックが必要になったり、道路に接する敷地部分が2メートル未満の場合には再建築ができないことになる、などです。
3 私道に関する負担に関する事項
売買の対象土地の一部に第三者のための通行に供されている土地部分(私道)が含まれている場合や、対象土地へ通じるために第三者の土地部分(私道)を通行する必要がある場合があります。
私道に関する負担が存在すると、契約の目的物について建築制限等の利用制限を受けたり、制限内容によっては不動産の購入目的を達することができず、損害を被ることがありますので、「私道に関する負担」の有無や、負担が有る場合のその負担の内容、面積とか負担金などに購入者は注意を払う必要があります。
4 「飲用水・電気・ガスの供給施設」や「排水施設」の整備状況がどのようになっているか、生活を営むうえで必要不可欠の施設ですから、購入者は注目すべきです。
まず、「飲用水」や「電気」「ガス」が直ちに利用可能な供給施設として整備されているのか否か、という情報を確認します。
「飲用水」供給施設が整備されている場合、それが「公営」か「私営」か「井戸」かも確認しましょう。「ガス」供給施設が整備されている場合は、「都市ガス」か「プロパンガス」かも確認しましょう。
それでは、「飲用水・電気・ガスの供給施設が整備されていない場合」ですが、単に「整備されていない」だけではなく、「整備の見通し」(施設の整備予定)を確認しましょう。また、施設整備について特別の負担金の有る無しや、負担金が有る場合はいくらか、なども確認しましょう。
「排水設備」には、「汚水」「雑排水」「雨水」について「公共下水」か「浄化槽」か「それ以外」か、また、浄化槽施設の必要の有無などを確認しましょう。
5 不動産売買の対象に「既存の建物」が入っている場合、「建物状況調査を実施しているかどうか」に注目しましょう。「建物状況調査」を実施していないのであれば、「実施していない」ということを確認し、「実施している」場合は、その「建物状況調査の結果の概要」がどのようなものであったかを確認しましょう。
6 不動産売買の対象に「既存の建物」が入っている場合、建物の「設計図書」「点検記録」その他の「建物の建築及び維持保全の状況に関する書類」が有るのか無いのか、残っているのか残っていないのか、「保存の状況」に注目しましょう。例えば、次のような書類の有無を確認します。
(ⅰ) 新築時の「確認の申請書や添付書類、確認済証」「検査済証」の有無
(ⅱ) 増改築を行った物件である場合は、増改築時の「確認の申請書や添付書類、確認済証」「検査済証」の有無
(ⅲ) 建物状況調査を実施した住宅である場合、その「建物状況調査結果報告書」の有無
(ⅳ) 既存住宅性能評価を受けた住宅である場合、その「既存住宅性能評価書」の有無
(ⅴ) 一定の建築物や昇降機等の建築設備については、建築基準法に基づき一定の時期ごとに定期調査報告を行うものとされているところの「定期調査報告書」の有無
(ⅵ) 昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手した住宅である場合、「新耐震基準等に適合していることを証する書類」の有無
7 不動産売買の対象の当該宅地建物が、「造成宅地防災区域内か否か」、「土砂災害警戒区域内か否か」、「津波災害警戒区域内か否か」にも注目しましょう。
「水防法の規定により市町村の長が提供する図面(水害ハザードマップ)」における当該宅地建物の所在地も確認しておきましょう。
ハザードマップとは自然災害による予測被害を地図化したもので、自然災害に応じて地震、火山、土砂災害など様々なものがあります。このうち、水害ハザードマップとは、水防法に基づき市町村長が住民等に周知させるため作成された洪水・内水(雨水出水)・高潮の被害予測を地図化したものです。
水害ハザードマップは、対象となる宅地建物が存する市町村等が配布する印刷物やその市町村等がホームページ等に掲載しているものを調査することで、水害ハザードマップがあれば、入手することが可能であり、そのなかで購入希望の土地建物がどこに位置するのかをみることができます。ただ、市町村等に照会した結果、水害ハザードマップの全部または一部がつくられていない、ということもあります。
8 「石綿使用調査結果の記録」の有無や、記録が有った場合の石綿使用調査の内容を確認しましょう。なお、「石綿使用調査結果の記録の有無」について「無い」ということは、調査結果の記録が「無い」ということであり、「石綿が使用されていない」ということを意味するものではないことは注意が必要です。
耐震診断の有無、住宅性能評価を受けた新築住宅である場合の登録住宅性能評価書の交付の有無などについても確認しましょう。
9 以上の注目点や確認点は、宅建業者からの重要事項説明によっても説明が受けられます。購入者は、それらが不動産の重要事項であることを常日頃から、十分認識し、不動産購入にあたっては、受け身ではなく、積極的に理解していくことが重要です。