賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
インスタは要注意!インスタの写真で真実がばれて解除されたケース
日経平均は、4万円台を維持しています。
日経平均4万円と言えば、平成元年のバブルを思い出しますが、当時、私は、司法試験に合格したばかりで、司法修習も始まっておらず、法曹としては、見習い前でした。
その後、バブルがはじけて、失われた20年とか30年と言われていますが、バブルに浮かれて大損をした弁護士もたくさんいたと聞いています。今の日経平均は、本物なのかバブルなのか、ちょっと怖い感じがしています。
さて、今回は、インスタグラムの写真で真実がばれて、居室から退去した入居者のケースについてお話しします。
私の知り合いの大家のAさんから、こんな相談を受けました。
Aさんは、都内に単身者向けのマンション1棟を持っていますが、そのマンションの賃貸借契約書には、1人暮らし用と明記され、賃借人以外の人を同居させることを禁止する条項がありました。
ところが、管理会社からAさんに、このマンションの一室を賃借しているBが、特定の女性と借りている部屋で同棲しているらしいという連絡がありました。
Bが特定の女性と同棲しているらしいという情報を管理会社が把握したのは、Bの居室の隣の部屋の入居者から、「毎日Bと女性が大声で話している声がしてうるさいので、なんとかしてほしい。」という苦情が入ったからでした。
コロナ後は、テレワークで、一日中自宅で仕事をしている人も多いので、コロナ前には気付きもしなかった隣室からの騒音も、気になってしまうようです。
管理会社の担当者は、この苦情を受けて、何回かBの居室の様子を見に行きましたが、確かに中から女性の声が聞こえ、また、Bがその女性と連れだって居室から出てくるところも確認しました。
管理会社からの連絡を受けて、Aさんは、管理会社を通じて、Bに対して、Bが賃貸借契約書の条項に違反してB以外の人間を同居させている事実を指摘し、直ちに同居人を退去させること、もし現在の状況が続くようであれば契約を解除することを通知しました。
これに対して、Bは、Bの居室に、ときどき婚約者の女性が泊まることはあるが、同居しているわけではないので、賃貸借契約書の条項に違反してB以外の人間を同居させている事実はないと回答してきました。
このような回答が来ると、なかなか反論をするのが難しいのですが、管理会社の担当者は、何を思ったのかBのインスタグラムを調べ、Bのインスタグラムから、Bが婚約者とBの居室で同居している証拠となる写真を多数発見しました。
婚約した日、同居を始めた日、それぞれの誕生日など、節目の日の写真には、必ずBと婚約者がBの居室にいる姿が写されていました。
しかも、ご丁寧なことに、同居を始めた日の写真には、「同居を始めました!」というコメントまで入っていました。
このインスタグラムの写真を見たAさんは、再度管理会社を通じて、Bに対して、前と同様の通知を出しました。もちろん、今度は、証拠のインスタグラムの写真を添えました。
この通知を受けたBは、数日後に、管理会社に期間内解約の申入れをして、一月後に出て行きました。
今回の件は、SNS全盛期の今を象徴するようなケースでした。
大家さんが、入居希望者のSNSを見たところ、どうも良からぬ人たちと交流があるらしいということが分かり、契約締結を見送ったという話を聞いたこともあります。
今後、もしかすると、入居申込みの際に、仲介会社や大家さんから、SNSのアカウントを聞かれるなどということも起きてくるかもしれません(もちろん、それに答える義務があるかは、議論の余地があると思います)。
大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。