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部屋のリフォームは、禁止? 借地契約で禁止されている増改築
先日、所用があって久しぶりに夕方の渋谷に行きました。
駅も駅の周りも、外国人でごった返しており、どこの国に来たのかという感じでした。
さらに、ハチ公前に行くと、多くの外国人が、ハチ公の周りに集まり、ハチ公の写真を撮っていました。中には、ハチ公と並んで自撮りしている外国人もいました。
ハチ公は、いつの間にか、外国人でも知っている有名犬になっており、ハチ公前は、観光名所になっているようです。
ちなみに、わたしの出身地の新潟市にも、タマ公という有名?な犬がおり、新潟駅の構内にハチ公と同じように銅像がありますが、タマ公前には、外国人どころか日本人が集まっているのも見たことがありません。
さて、今回は、借地契約で禁止されている増改築のお話です。
先日、私の知り合いの地主のAさんから、こんな相談がありました。
Aさんが土地を貸しているBが、Aさんに断りもなく、借地上のBの建物の周りに足場を組んで、建物を直しているが、AさんとBの借地契約では、増改築にはAさんの承諾が必要なので、これは、借地契約違反ではないかと言うのです。
そこで、私から、Bに対して、Bの行っている工事の内容によっては借地契約違反となるので、現在行っている工事の内容を説明してほしいという内容の通知を出したところ、Bから工事の見積書と図面が送られてきました。
Bの説明によると、「自分の長女が結婚して同居してくれることになったので、建物の2階のリフォームをしているだけで、建物の躯体には何も手を加えていない。足場を組んだのは、エアコンの室外機の交換のためであって、外壁の修理などをしているわけではない。」ということでした。
確かに、Bから送られてきた工事の見積書と図面を見ると、2階の建物内の壁を取り払い、壁紙を全て交換したり、新しく水回りを設置したりする工事であることが分かりました。
このような大がかりなリフォーム工事をすると、建物の内部は新築同様となり、居住者は快適に暮らせるようになることから、建物の使用期間が長くなるように思えますが、このような工事は、増改築には当たらないのでしょうか。
一般に、建物の増築とは、建物の床面積が増加するような工事であり、また、改築とは、既存の建物の全部または一部を取り壊して新たに建物を建て直すことをいいます。
ある工事が増改築に当たるかどうかについて、裁判所は、建物の主要な構造部分を補修しているかどうか、その工事によって建物の耐用年数が延長されるかどうか等の基準によって判断しています。
なぜ、裁判所が、このような基準で判断しているかというと、借地借家法上、借地契約の契約期間の終了時に建物が存続していることが借地権の法定更新の条件となっているため、増改築によって建物の耐用年数が延長されると、借地権の存続期間に影響を与え、地主に不利となってしまうからです。
本件のような大がかりなリフォーム工事を行うと、確かに居住者は快適に暮らせるようになることから、建物の使用期間が長くなりますが、建物の主要な構造部分を補修しているわけではなく、また、この工事によって、建物の寿命が大幅に延長されるわけではありません。
ですから、Bの行った工事は、増改築とは認められません。
私は、Aさんに対して、Bの説明が事実であるとすると、Bの行った工事は、借地契約でAさんの承諾が必要とされている増改築とは認められませんので、契約違反を主張することは難しいと説明しました。
すると、Aさんは、これから土地を貸すときは、借地契約書に、土地上の建物の増改築だけではなく、修繕やリフォームにもAさんの承諾が必要となるような条項を入れたいと言い出しました。
しかし、過去の裁判例からすると、建物の維持や保存に必要な修繕を制限するような条項は、効力が認められていません。小規模なリフォームの禁止条項も同様です。
従って、このような条項を入れても、意味がありません。
また、大規模なリフォームを禁止する条項については、裁判所は、建物の主要な構造部分を補修しているかどうか、その工事によって建物の耐用年数が延長されるかどうか等の基準によって大規模かどうかを判断するので、増改築禁止条項と同様の結論となります。
結局、土地を貸して建物を所有することを認めた以上、建物の主要な構造部分を補修する工事や建物の耐用年数を延長させるような工事以外の修繕やリフォームを制限することは、原則として認められないということになります。
地主さんとしては、なかなか厳しいところです。
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大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。