賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
ババをひくな!地方の高利回り物件の勧誘には、要注意
5月中旬に、長野県で開催されたハーフマラソンの大会に参加して、完走しました。
ハーフマラソンは初めてで、それまでに走った最も長い距離が14キロメートル、ペースも1キロメートル当たり7分でしたので、1キロメートル当たり7分20秒の制限時間内に約21.1キロメートルを完走することができるか不安でしたが、14キロメートルを過ぎても、それほどペースダウンすることなく、制限時間より40秒以上早いペースで完走することができました。やっぱり、本番は、アドレナリンが出るのでしょうか。
一緒に走った息子はかなり早くゴールし、家内と息子夫婦がゴールの少し前で声援を送ってくれていたようですが、最後は、さすがにヘトヘトで、まったく気づきませんでした。
さて、今回は、地方の高利回り物件の勧誘のお話です。
私の知り合いの会社員の方から、こんな相談がありました。
「知り合いの不動産業者から、関東の地方都市の新築アパートで、表面利回り年15パーセントの物件を紹介されました。3000万円を借りて、買おうと思っていますが、先生の意見は、どうですか。」
私の答えとしては、「やめておいたほうがいいです。」です。
この物件をフルローンで買った場合を考えてみましょう。
ローンの利息の利率が高ければ、借入金3000万円を完済するのに、最短でも10年くらいかかるでしょう。
もっとも、新築物件ですので、返済期間20年くらいのローンを組むことは可能ですから、20年ローンであれば、月々10万円程度の手残りがあるかもしれません。
もちろん、ローンを完済してしまえば、その後に入る賃料は儲けということになります。
ただ、地方の高利回り物件には、買った値段では売れないという問題点があります。
地方の物件が高利回りなのは、土地の値段が安いからです。
3000万円の木造アパートであれば、1000万円が土地代で、残りが建築費という感じでしょうか。土地は、もっと安いかもしれません。
そうすると、20年ローンの完済時には、建物自体はほぼ残存価値はありませんので、価値が残っているのは、土地だけということになります。
また、新築物件ですので、本当に年15パーセントもの利回りが実現できるかどうかわかりません。
また、実現できたとしても、これから10年も20年も、年15パーセントもの利回りが維持されるとは思えません。それどころか、大幅に下落する可能性もあります。
そもそも、賃貸物件の賃料は、建物が古くなるにつれて下がっていきます。
しかも、日本は、超高齢化社会ですので、地方都市では、所有者が亡くなって住む人がいない空き家が溢れています。これから数年で団塊の世代が後期高齢者になっていきますので、亡くなる方が増えて、空き家もどんどん増えていくでしょう。
それに伴って、将来は、一戸建てでもマンションでも、安価に借りられる時代になるのではないでしょうか。
そうなったら、賃料相場は、大きく下落するでしょう。
もちろん、空き家が溢れるのですから、地価も下がりますので、買ったときの土地の価格が1000万円であっても、10年後、20年後には、300万円とか400万円になっているかもしれません。
この賃料や地価の下落が、ローンを完済する20年後にくるならばいいのですが、もっと早くきた場合には、かなり問題です。
たとえば、10年後に、このアパートの賃料収入が2分の1になり、土地の価格が500万円に下がったとしましょう。
この場合、賃料は、全てローンの返済に消えてしまいます。そうすると、諸費用の支払いは自腹となります。建物は、築10年を過ぎると、あちこち修繕が必要になりますので、最初の10年とは比べ物にならないくらい修繕費がかかってきますが、これが自腹となるのです。
しかも、「こんなに出費が多いのでは、やってられない。」と思い、物件を売ろうとしても、まだ10年しか返済していませんので、ローンがたくさん残っており、賃料も地価も下がっている状況では、残ローンを返せるような価格で売れるかどうかわかりません。
ということで、私は、こういう物件を買うのは、ババ抜きでババを引いてしまうようなものと思っています。
大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。