賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
私たちは新サブリース法で保護されていますから!サブリース新法の保護の対象
新型コロナウィルス感染拡大の第6波が下火となり、まん延防止等重点措置が解除されてから約3週間が経過しましたが、もう第7波の兆しが見え始めています。
いったいいつになったら、感染拡大とまん防のイタチごっこが終わるのか、少々うんざりしていますが、先日ヨーロッパから帰国した人の話では、ヨーロッパでは、新型コロナウィルスの話は、過去の話になりつつあるそうです。
ヨーロッパでは、3回目の接種が進んでいるためか、感染者数は、ピーク時よりもかなり減少しており、また、重症化率も低いらしく、人々は、もうあまりコロナを怖がっていないということでした。
そういえば米国でも、メジャーリーグやマスターズのテレビ放映を見る限り、多数の観客のほとんどがマスクをつけておらず、大声を出していますので、コロナを怖がっている様子はありません。
日本も、早く新型コロナウィルスの話が、過去の話になってほしいものです。
さて、今回は、サブリース新法のお話です。
昨年の12月のコラムで、サブリース会社が、大家さんに対して、賃料減額請求をした上、大家さんが減額を認めていないのに、減額した賃料を一方的に振り込んできたというケースについて、お話ししました。
このサブリース会社は、あちこちでこんなことをやっているようで、今年に入ってからも、同じような相談が2件ありました。
最近受けた相談では、大家さんが、サブリース会社の賃料減額請求をつっぱねると、サブリース会社の担当者が、「それじゃあ、裁判になりますね。われわれは、サブリース法で保護されていますから、、、」と言い放ったそうです。
この話を聞いたとき、私は、「???」でした。
まず、「裁判になる」という点は、そのとおりです。
昨年の12月のコラムでも書きましたが、大家さんが賃料減額請求を了解しない場合は、借主は、家賃の減額を求める調停を裁判所に申し立てなければなりませんが、調停で話し合っても合意ができない場合は、調停不成立となります。そして、調停不成立になった場合は、借主は、賃料の減額を請求する訴訟を裁判所に起こすことになります。
ですから、「裁判になる」というのは、間違っていません。
もっとも、サブリース会社の減額請求が、単に会社の都合によるもので、根拠のないものであれば、裁判をしても減額請求は認められません。
また、サブリース会社が裁判を起こすには、それなりの費用と手間がかかりますので、多数のサブリース物件を抱えるサブリース会社が、減額請求を拒否されたからといって、いちいち裁判を起こすとは思えません。
ですから、おそらくこの発言は、大家さんの気持ちを揺さぶるためのものでしょう。
また、後半の「われわれは、サブリース法で保護されていますから、、、」というのは、何のことでしょう。
この「サブリース法」というのは、恐らく「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」のことだと思います(以下、「賃貸住宅管理業法」といいます。)。
賃貸住宅管理業法は、令和2年に成立した法律ですが、この法律は、大きく分けて、サブリース業者と建物所有者との間の賃貸借契約の適正化についての規制と賃貸住宅管理業の登録制度の創設という2つの内容からできています。
この賃貸住宅管理業法を、通称「サブリース新法」などと呼んでいるようです。
ですから、上記の業者の言うところの「サブリース法」とは、おそらく賃貸住宅管理業法のことを言っているのだと思います。
しかし、賃貸住宅管理業法におけるサブリース業者と建物所有者との間の賃貸借契約の適正化についての規制の概要は、サブリース業者等が、建物所有者とサブリース業者との間の賃貸借契約(これを、マスターリース契約といいます。)締結にあたり、①不当な勧誘行為をしないこと、②誇大広告をしないこと、③マスターリース契約前に重要事項を記載した書面を交付して説明することなどであり、建物所有者を保護するものです。
ですから、サブリース業者の言った「われわれは、サブリース法で保護されていますから、、、」という言葉は、意味が分かりません。
そもそも、賃料減額のルールを守らずに、一方的に減額した賃料を支払ったり、また、法律に詳しくない大家さんに、「裁判になる」と言って気持ちを揺さぶったり、「われわれは、サブリース法で保護されていますから、、、」などと言って、煙に巻こうとしたりするやり方を聞くと、このサブリース業者のコンプライアンスはどうなっているのか、と思ってしまいます。
大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。