賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
知らない人が住んでいる?借主が同居人を引き入れた場合の取り扱い
私は、事務所が有楽町の駅前にあるので、いろいろな用事で銀座の街を歩く機会が多いのですが、最近の銀座では、外国人の旅行者と思われる人たちが、本当に多くなりました。
すれ違う外国人たちの肌の色、体格、服装、話している言葉はさまざまで、いろいろな国から旅行者が来ていることがわかります(もっとも、私がいろいろな国の言葉が分かるというわけではなく、聞きなれない言葉が多いということです。)。
おそらく円安のせいで、日本への旅行は割安となっているのかもしれません。たくさんの外国人が日本に遊びに来て、お金をどんどん使ってくれることを期待したいところです。
さて、私の知り合いの大家さんのAさんから、こんな相談がありました。
Aさんは、都内にマンションを2棟持っていますが、そのうちの1棟の住人が、異性の友人を居室に引き入れて同居しているので、契約違反として契約を解除したいというのです。
このように、借主が大家さんに無断で他の人を貸室に同居させた場合、大家さんは、賃貸借契約を解除することができるでしょうか。
過去の裁判例を見ると、解除の効力を認めた事案と解除の効力を否定した事案とがあります。
どちらの裁判例でも、借主が元夫を居住させていたという事案でしたが、解除の効力を認めた裁判例では、①貸室が単身者居住用住宅であったこと、②契約書上、貸主の承諾なく同居人の数を増やしてはならないことが記載されていること、③借主は貸室が単身者居住用住宅であることを認識しており、これを前提として自分一人が入居すると言う申し込みをしていることなどの事情をあげ、信頼関係の破壊を認め、解除の効力を肯定しています。
一方、解除の効力を否定した裁判例では、上記の裁判例の①から③のような事情はなく、また、同居していた元夫は、借主と同居している子供たちの実父であり、借主と元夫は、復縁の予定であったことなどの事情から、信頼関係破壊をみとめず、解除の効力を否定しました。
このように、借主が大家さんに無断で他の人を貸室に同居させた場合、大家さんは、賃貸借契約を解除することができるかという問題については、①契約書上、単身者居住用賃貸住宅となっているか、②契約時に借主がどのような言動をとっていたか、③貸室の構造や面積はどうなっているか、④同居人を増やすことについて、貸主が承諾しない理由は何か、⑤同居人は借主とどのような関係の人かなどの事情によって、結論が異なってきます。
これらの点について、Aさんに聞くと、①契約書上、貸室は単身者居住用住宅となっていないが、同居人を増やすには、貸主の承諾が必要であることが明記されている、②契約時に借主は、自分が居住予定であると述べている、③貸室の構造は、1LDKだが、面積は40平方メートルとやや広めで、2人暮らしに支障はない、④同居人を増やすことについて、貸主が承諾しない理由は、貸主に無断で同居人を引き入れたことにある、⑤借主は同居人と結婚予定である等の事情のようでした。
こうした事情からすると、なかなか契約を解除するのは難しいかもしれません。
Aさんとしては、借主から同居人についてきちんと情報をもらい、特に問題のない人であれば、同居を承諾する方が無難であると思います。
大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。