家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
人気の外装・内装材、そして注目する建材は
家づくりは迷うことばかり
多くの人にとって一生に一度の家づくりは、人生で最大のライフイベントです。したがって何から手をつけて良いのかもわからないため、とりあえずショールームや住宅展示場に行きます。あるいはSNSで情報を集めたりするでしょう。
しかし、仮に気に入った設備機器や建築材料があったとしても「価格はどうなのか」「メンテナンスの頻度はどれ程か」「実際に採り入れてみて空間にあうものなのか」と迷うことばかりです。そこで今回は、多くの人に支持されている建材(外装材・内装材)や人気のある商品をピックアップして解説していきます。
屋根材と外装材
建物の仕上げ材の中で最も過酷な環境に晒されるのが屋根と外壁です。そのため最も重要になってくるのが「耐候性」です。耐候性とは屋外で使用された場合に、変形や変色、劣化等の変質を起こしにくい性質を持っていることです。
○屋根材
主に使われるのが瓦、化粧スレート、ガルバリウム鋼板等です。
中でも今最も人気なのがガルバリウム鋼板で、アルミニウムと亜鉛、シリコンによってメッキ加工された鋼板です。金属素材でありながら錆びにくく、軽量なので耐震性もあります。保証期間も長く、耐用年数は30年と謳われていますが、周辺環境にもよるので15年位を目処に想定しておくとよいでしょう。
次に人気であるのが化粧スレートです。セメントなどを材料としてつくる板状の屋根材です。コロニアルやカラーベストとも呼ばれ、予算を抑えたい人におすすめです。耐用年数は一般的には20~25年程度といわれますが、こちらも定期的にメンテナンスをすることで耐用年数を伸ばすことができます。
○外装材
主に使われるのがサイディング、ガルバリウム鋼板、モルタル塗装などがありますが、人気があるのはサイディングとガルバリウム鋼板です。
外装材は建物全体の印象を大きく左右するので、耐候性や耐火性だけでなくデザイン性にも配慮する必要があります。
サイディングは木目柄やレンガ柄、奥深い色調と自然な凹凸感など様々なバリエーションもあるので選択に迷うでしょう。サイディングは素材によって主に4つに分けられますが、今回はよく採用される窯業系と金属系について解説します。
・窯業系サイディング
セメント質と繊維質を主原料に、圧力釜の熱で作られます。最近は30年保証の商品もあります。
・金属系サイディング
窯業系サイディングの次に人気があるのは金属系サイディングです。鋼板なので、熱を心配されるかもしれませんが、高い断熱性能があります。表面は焼付塗装を行っているため、外観の美しさを長く保つことができます。
窯業系サイディングは横に貼るデザインが多いですが、金属系はシャープなイメージを醸し出すために縦に貼る商品が多いです。
・サイディング以外で注目する外装材
以前の建物はリシン吹付けなど顔料を混ぜた砂状の外壁仕上げ材を壁に吹き付けていました。しかしひび割れがしやすい、汚れがとれにくい、耐用年数が短い等の問題がありました。
そこでおすすめするのが「モールテックス」です。ベルギーで開発された薄塗りの鉱物性左官塗装材です。特徴は防水性が高いため、強靭な仕上げ層を作ることができます。外壁材だけでなくキッチンや洗面等のカウンター、トイレの床材にも採り入れることができます。
手間がかかるためコストは少し高くなりますが、メンテナンスの頻度も減らせるのでおすすめです。
内装材
○珪藻土について
これまでの家づくりで内装材はビニールクロスが殆でした。しかし近年は珪藻土が採用されるようになってきました。珪藻土は「珪藻」という植物性プランクトンの化石を主原料にしたもので、珪藻には目に見えない大きさの細かい穴がたくさん空いています。その穴は水蒸気との相性が良く、珪藻土は調湿機能に優れているのです。それ以外にも脱臭効果や断熱性の高さなどの長所があり、多くの人に支持されている素材です。ただ、採用にあたっては注意点もあるので、それらを理解したうえで使うことをおすすめします。
・珪藻土を採用するときの注意点
① シミができやすい
水分を吸収しやすいため、子どもが飲み物をこぼした時などシミができやすいです。特にコーヒー等着色しやすい飲み物には気をつけたいです。
② ポロポロと粉が落ちやすい
最近の商品は粉が落ちにくいよう改良されてきましたが、採用する前にどの様な珪藻土なのかを確認してください。
③ ヒビが入りやすい
大きな壁面に塗る、或いはドアの開閉回数が多い場所などには気をつけなくてはなりません。大きな壁面などは振動や揺れの影響を受けやすくなります。
○ガラスについて
近年の住まいの窓ガラスは複層ガラスが主流です。ガラスが2枚の複層ガラスは「ペアガラス」、3枚の複層ガラスは「トリプルガラス」と呼ばれています。
一方、ガラスは割れると危険なので、屋内空間ではあまり使われません。しかし近年の住まいは気密性や断熱性が向上したことで、間取りもあまり区切らず「ワンルーム的」でなんとなく気配を感じさせるような間取りも多く見受けられるようになってきました。
そんな空間をつくりたい人におすすめなのが、断面がU字型になっているガラスです。厚さは7mmほど有り、強化ガラスで半透明なのでプライバシーを保ちながら光を透過させます。リビングのコーナーに書斎やユーティリティーのスペースを設けたい時など間仕切り材の一部として採用すれば、存在感を生み出してくれるでしょう。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。