

家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
家づくり気になる14の心得(後編)
14の心得
満足度の高い家づくりを目指すため、前回は14のヒントを紹介しました。改めて確認してみましょう。
① 誰に家づくりを頼む
② 間取りとは何か
③ 長寿命な家づくり
④ 竣工時からメンテナンス性を考慮
⑤ 光・風・熱・音・臭は見えない、見えないからトラブルになる
⑥ 省エネで暮らす
⑦ 地震に強い家づくり
⑧ 内外の一体的な空間づくり
⑨ 防犯の心得
⑩ 収納の心得
⑪ やっぱり自然素材が良い
⑫ 素材は3つ以上使わない
⑬ 気持ちの良い吹抜、気持ちの良くない吹抜
⑭ 重い壁と軽い壁
前回はその中でも①~⑦項目をご紹介しました。今回は残りの⑧~⑭項目を解説していきます。
⑧ 内外の一体的な空間づくり
日本の気候は暑さと寒さの両方を経験することができます。そのため、その間となる春と秋で過ごしやすい季節が2回も訪れます。この季節を利用して、住宅でも内部と外部を繋げられる空間をつくれば、とても豊かな空間を享受することができるのです。
具体例をあげれば、ウッドデッキ、インナーテラス、サンルーム、土間、広縁、坪庭といったものです。さらにそれらの役割として、採光や通風といった衛生環境を良好にする機能も備えている場合もあります。
⑨ 防犯の心得
最近は凶悪な事件が見受けられ、それに伴い住宅の防犯対策の関心が高まっています。
敷地内に「死角」をつくらないこと、窓には防犯のためのシャッターや防犯フィルム、面格子、そして特殊な錠前といった重装備な開口部が建材メーカーによってラインナップされてきました。
水道等の検針や宅配便の出入りなど、人が出入りする入口等は完全なセキュリティ対策が難しいかもしれません。ただ、出来る範囲の対策は講じておくことです。都心部の密集地や郊外など、急速に開発された地域は、「地域のコミュニティ」が育っていない場合が少なくありません。新築を予定している周辺環境を分析して、しっかりと防犯対策を考えておくことです。
⑩ 収納の心得
それぞれの家全体の面積は決まっていますので、収納スペースをたくさん確保すれば、その分生活空間が狭くなってしまいます。ではそのバランスをどうとるのか、心得とはどのようなことでしょうか。
・使うところで収納を
→当たり前かもしれませんが、これをきちんと計画することです。あまり大きな収納スペースを必要としません。
・腰から目の高さが一番使いやすい
→この位置は日常生活でよく使うものを、多くスペースを確保した方が良いです。作業がしやすいことを優先する空間であればよりその方がいいでしょう。
・重さで収納位置を考える
→目より高い位置には軽いもの、腰より低い位置には重いものを収納する。特に台所周りの収納で工夫してみてください。
・「大きくしまう」という考え方
→最近はファミリークローゼットやウォークインクローゼットなど、「大きくしまう」という考え方もあります。ライフスタイルに応じて取り入れてみてはいかがでしょうか。
⑪ やっぱり自然素材が良い
自然素材のいいところは時間の経過とともに、素材の表情が変化し、味わい深い経年美が生まれてくるところです。ただし、汚れや傷が残りやすい、掃除やメンテナンスが面倒、個々の素材でバラツキがある、施工が大変、腐りやすいといったデメリットもあり、性質を理解しないとクレームにもつながります。使う人がその性質を理解し、その価値を認めて採用することが大切です。
⑫ 素材は3つ以上使わない
内装材を決める際、多くの素材を見たり、提案されたりするかもしれません。そこで気をつけることは、要素を出来る限り増やさないこと心掛けることです。要素を絞ることで、空間全体に広がりを得られます。反対に要素が増えると、統一感のない空間になる恐れがあるので注意してください。
⑬ 気持ちの良い吹抜け、気持ちの良くない吹抜
天井を高くした吹抜けに憧れる人も多いでしょう。しかし、ただ天井を高くしただけの吹抜けは、気持ちの良いものとはなりません。吹抜けは外への視線、上下階のつながり、空間の行き交い、階段と一体となった吹抜けなどは、気持ちの良い吹抜けとなります。そして上に高すぎず、上下階との間に密接な関わりが持てる距離感も大切な要素です。
⑭ 重い壁と軽い壁
石積壁は非常に重い壁です。一方で、木や紙でつくられた襖のような壁は軽い壁です。
現代の住宅は同じような仕上げ材で、壁に対してもあまり変化を与えません。重要なのは、その違いをしっかりと感じ取ることです。
例えばコンクリート打ち放しの壁と木造の板壁であれば、その材質の違いを楽しみ、違いを空間で表現することで、空間に対して人の感性は変化し磨かれていくでしょう。
すべてに変化をもたせる必要はなく、適材適所で選択したほうがより効果的です。
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佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。