家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
ミスを防ぐ!見るべき図面は4種類
図面は20種類
新築住宅の設計を設計事務所に依頼した場合、A3用紙の大きさで40枚前後、約20種類もの図面を書きます。工務店やハウスメーカーに依頼した場合はこんなに書かないかもしれません。
施工会社は、この40枚前後の図面から見積書を作成、設計事務所はその見積り内容にもれやダブり、間違い等がないかをチェックして施主に報告をします。
金額が予算内に収まり、納得できれば工事契約となり、そして、工事が着工するという流れになります。
施主は、書かれた図面すべてを理解するのは難しいと思いますが、少なくともこの図面だけは必ず目を通してほしい図面があります。それは、仕上表、展開図、衛生設備図、電気図の4種類です。
『平面図や立面図ではないのですか?』と質問が来そうですが、これらははじめの段階からずっと打合せで見ているので頭に入っているはずです。また、平面図や立面図、断面図などは人間で言えば骨格にあたる部分なので、皆さんの関心は高く、放っておいてもチェックしているはずです。
一方、仕上表、展開図、衛生設備図、電気図は血液を流す血管の様なところがあって、不具合が起きて始めて事の大変さに気がつくことがあります。つまり、きちんとチェックしておかないと住まいの機能が悪くなり、住み心地も快適ではなくなります。
建築も予防(チェック)をしっかりしておくことなのです。
見るべき図面は仕上表、展開図、衛生管理図、電気図です
図面の種類は約20種類あり、大きく分けると意匠・構造・設備の3つに分類できます。
意匠図面は、平面図や立面図などで、主にすがたや形などが描かれています。
構造図面は、基礎、土台、そして建物の構造、骨組みなどが表現されています。
設備図面は、配管の経路や機器のリストなどがまとめられた図面です。
施主が見るべき図面として仕上表、展開図、衛生設備図、電気図の4種類をあげましたが、意外とこの4種類の図面は、お互いのミスを防いでくれる図面なのです。仕上表は、内外装の仕上げ材料が記入されているのですが、材料の品番や大きさ、色番号などを確認することができます。特に色番号を間違えると仮にサイズは納まったとしても室内に大きな影響を与えてしまいます。
展開図は、東西南北それぞれ室内の四つの壁面が描かれ、窓の方面や高さ、位置、開閉方法、家具の位置や棚の高さ関係等、多岐にわたって表現されています。日常生活にとても密着している図面ともいえます。
例えば、トイレの展開図であれば、始めに内装仕上げをチェックします。
次に窓や収納棚の大きさや位置、高さなどの確認、それぞれ手は届く高さなのか、さらに便器の品番、ペーパーホルダーの取り付け位置、照明とコンセントはどのあたりに、といった具合に確認していくのです。
衛生設備は、一言で言うと水まわりに関しての図面で、キッチン、浴室、洗面、トイレなどの給湯、給水、排水位置を表した図面です。給水や排水位置は、一度決めれば後で簡単に変更という訳にはいきません。
時に給水のメーターBOXや排水枡が玄関アプローチの位置にある住まいがあります。
工事関係者も施主も気が付かなかったのでしょう。
電気図面は、照明の位置と照明方法、そして、スイッチとコンセントの位置関係がわかります。特にキッチンまわりは、専用の回路や3路スイッチなど使い勝手と動線計画をあわせてチェックしておくことが大切です。
内装工事に入ってくる頃にトラブルが出てきます
新築工事は、建物の骨組みが完成すると、屋根、窓が取り付けられ、外壁や下地が張られていきます。そして、室内の内装工事が始まる頃になると現場が急にあわただしくなることがあります。
それは、内装工事に入る段階になって、窓の高さが違う、付く予定のところについていない、棚の下地が入っていないなど、トラブルが起こってくるからです。
特に設備機器は、取り付け位置や高さによって配管の仕上げが変わったりもします。さらに、機器変更などが発生した場合は納期が遅れるなど、次の工事工程にも影響を及ぼしてしまい、工期が遅れてしまいます。
こうしたトラブルの原因は、この4つの図面に関係することが実に多いのです。
事前にこの4種類の図面をしっかりと読み理解しておくことが大切で、そうすることでかなりのトラブルは防げるのです。
■展開図の見方
時計回りの方向に壁4面を見ていきます
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。