家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
木と塗装
木は腐る、だから塗装のことを知ろう
近年公共建築はもちろん、個人住宅の屋外にエクステリア木材が人気です。ルーバーやウッドデッキ、軒裏等です。理由としては温かみがあり、外部空間を優しく包み込んでくれる雰囲気を醸し出してくれるからでしょう。
一方、室内とは違ってエクステリア木材は太陽光や風雨に晒されるため、無処理では当然劣化が生じます。きちんとメンテナンスをしていけば木は長持ちするのですが、手間がかかるということで、なかには人工木にする人もいます。最近はホームセンターなどでも自分で気軽に塗装できる製品が販売されています。木と塗装の関係を知って天然の木で住空間を楽しみ、長寿命の家づくりを心がけて下さい。
塗装による保護
高温多湿の日本の気候では木材腐朽菌やカビによる劣化によって、外部に使われる木材は決して美しい外観とはなりません。それらを防ぐには「木材保護塗料」を仕上げに使うことです。木材保護塗料とは一般の塗装にも含まれる樹脂及び着色顔料の他に防腐剤、防虫、防カビ効果を有する薬剤を含有する既調合の半透明塗料のことです。
◎木材保護塗料には塗料を木材に染み込ませるタイプと、膜をつくるタイプがあります。
・染み込ませるタイプ → 含浸系塗料 …膜をつくらないので、木のもつ調湿機能を失いません。
・膜をつくるタイプ → 塗膜系塗料(造膜型塗料)…ペンキ、ウレタン等で表層を守ります。
耐水性と耐久性はどちらがいい?
耐水性や耐久性の保護力については木材表面に塗膜をつくる塗膜系の塗料のほうが優れています。含浸系塗料は撥水性や防カビ性を備えていますが、素材を保護する点では表面への水分の付着による乾湿の繰り返しが防げず、耐水性の面ではダメージを受けやすいとされます。
木材を劣化から守る
仮に外壁に木材を使うということで、木材の耐候性を少しでも上げるのであれば、軒の出を深くする、基礎の高さを上げるなど、雨のかかりを少なくすることです。つまり設計による間接的な保護です。他には塗装による保護とメンテナンスですが、やはり長く木材を劣化から守るには、メンテナンスを定期的に実行していくことがポイントです。
〈メンテナンスの目安〉
種類 | 新しい木材の場合 | 再塗装時の木材の場合 | 参考メモ |
含浸系 | 2~3年 | 4~6年 | 塗布量が増えると耐候性が向上し、塗替え周期が長くなる。 |
塗膜系 | 5~7年 | 7~10年 |
塗装・その他で注意、確認しておくこと
◎含水率20%未満にする
塗装の適正含水率は18%以下と言われています。18%と言われてもピンときませんが、一般に新築時で使われる柱などは14~15%です。新築時はともかく、何年か後に自分で塗装するのであれば、とにかくよく乾燥させてから塗装をすることです。
◎木の木口面と突き合わせには注意
木の幹には水を運ぶ道があるため、木口面は水分や塗料を吸込みやすくなっています。
木材同士が接触する面は水分が滞留しやすいです。
◎針葉樹と広葉樹の塗装
・針葉樹…
木自体は柔らかいので、ソフト感を大事にして薄い膜とつや消し仕上げを採用すると良いでしょう。着色はあまりせず、するのであれば薄めの着色をすることです。
・広葉樹…
樹種によっても異なり、明るい淡色から暗い濃色までバラエティーに富んでいます。材質が硬いので、塗料や着色剤が浸透しにくいため、着色されにくく、素地着色には塗料系ステインが適しています。
おすすめ木材保護塗料
・キシラデコール(https://www.xyladecor.jp/)
・シッケンズ(https://www.sikkens-japan.com/)
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。