家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
話題の建材を使って、より自分らしい空間をつくろう!
素敵な建材を知ってオリジナルな住まいをつくろう!
一般的な住まいの内装材は、床は合板フローリング、壁は量産タイプのビニールクロス、または珪藻土(けいそうど)風壁紙といった具合でお決まりのコースで仕上がっています。しかも近年はドアや収納扉もカタログから選ぶので、なんとなく画一的な空間になりがちです。
建主は誰もがより自分らしい空間を手に入れたいはずです。そこで今話題の建材を知ってオリジナルな住まいづくりをしてみましょう。
何を手がかりに選ぶ?
オリジナルな住まいづくりといっても、何を手がかりに考えたら良いのかがわからないと思います。そこで次の5項目を一つの目安にして選んでみてはいかがでしょうか?
①省エネ度が高い建材を選ぶ→外装材、樹脂サッシなど
・外装材
建物全体のライフサイクルコストの低減を考えているのであれば、耐久性の高いアクリルシリコン樹脂系塗料による仕上げが一体となった外張り断熱システム、エコサームがあります。左官仕上げなので、目地もなくスッキリとしたファサード(立面)になります。色の種類も豊富で、材工共9,800円/㎡位を目安として下さい。
・樹脂サッシ
寒さの厳しい環境下でも省エネで快適な住環境をつくるためにドイツで開発したのが始まりです。ガラスが複層ガラスでも枠がアルミであれば結露します。しかし樹脂であれば熱を伝えにくいため、結露しにくくなります。
②経年美を醸し出してくれる建材を選ぶ→無垢材、手作りタイルなど
・無垢材
一般的に無垢のフローリングは一枚板です。しかしコストが高くて採用できないケースもあります。そうした場合は表面材のみが無垢材で、しかもその表面材の厚みが4mmのものを選ぶといいです。表面の厚みが2.2mmの物が主流なので、貼った際の重厚感の感じ方が全く違います。厚みがあると、仮に床が傷ついても表面を削り、もう一度新しい表面をつくり出すことも出来ます。
・手作りタイル
自分でつくる手作りタイルもありますが、専門の職人により作られた手作りタイルもあります。タイルの厚みが10.5mmと薄いので軽いです。一枚一枚手作業で製作されるので、ハンドメイド特有の柔らかさを感じさせ、流行に流されない経年の美しさを発揮した存在感をみせてくれます。洗面室やキッチンの壁に一列のみアクセントとして使ってみてはいかがでしょうか?
③モダンさを感じさせる建材を探す→反射性の高いタイル、デザインガラス、錫板(すずいた)など
・反射性の高いタイル
ホテルなどのエントランス部分に多く採用されています。キラキラとした反射性の高いタイルは高級感を演出してくれるので、玄関の床や棚板の一部に使うことが出来ます。
・デザインガラス
アンティークなガラス、色ガラスなどデザインされたガラスは豊富にあります。ドアの窓、間仕切り建具、食器棚に使うことでモダンな印象を与えてくれます。
・錫板(すずいた)
錫はあまり馴染みがないかも知れませんが、グラスや花瓶などに見ることができます。金属でありながら冷たさはなく、どことなく優しい雰囲気を醸し出し、控えめで美しい銀色の板材です。錆びにくく有害性もなく、抗菌作用もあるのでレストランなど商業施設には多く採用されています。壁の装飾やニッチまわり、床の間などに使うと優雅さを演出してくれます。錫板一枚の価格も12cm×12cm×1.0mmで2,500円前後とそれほど高くはありません。また、柔らかいので再生もしやすいエコ建材でもあります。
④環境に考慮している建材を選ぶ→リノリウム建材、和紙壁紙
・リノリウム床材
リノリウムは亜麻仁油や石灰岩、木粉、コルク粉、天然色素など天然の成分で構成されていて、とても環境に優しい床材です。耐久性はもちろん、抗菌作用が有り傷もつきにくくワックスも不要です。キッチン、洗面室、トイレなど水まわりの床に適していて、コストも5,000円/㎡くらいです。水まわりは床面積が小さいのでそれほど工事金額が高くはなりません。
・和紙壁紙
主成分が天然素材なので、廃棄後は生分解されます。和紙独特の手触り感や温かみなどの風合いがとても素敵です。近年はモダンな和紙壁紙があるので和室はもちろん、リビングや寝室にも使うことができます。
⑤多少手間はかかるが愛着をつくってくれる建材→外でも腐りにくい天然木
・腐りにくい天然木
外まわりに木を使いたいが腐ってしまうので手間が大変という人がいます。その腐りにくさを実現したのがエステックウッドです。薬品を一切使用せず、窒素加熱処理を行い、木の腐りやすい成分を分解しているのです。天然木でありながら屋外でも長期的使用ができる耐朽性の高い改質木材です。外部のルーバー、手摺、デッキ、外装材などに使うことができます。徐々に味わい深い色にも変化していきます。
佐川旭のメッセージ
以前友人に「人間の身体は角がないのに建築物は角だらけだよな」と言われたことがありました。構造体の強さを発揮するには角も必要ですが、確かに内部空間はもっと角をなくした方が、心地よい空間になるでしょう。
これからの時代は硬い空間から、より柔らかさをもった空間を求められていく様な感じがします。その中で代表的な素材がテキスタイルです。
近年のテキスタイルは色、柄、透明感のある素材が豊富にとり揃っています。吹き抜けの天井や寝室の内装材など、様々な光(自然光・人工光)の変化を楽しむことが出来るでしょう。
テキスタイルといえば、カーテンのイメージがありますが、更に用途を広げ、工夫してみることでインテリア空間はより自分らしくなっていくと思われます。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。