家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
自分でチェックする耐力壁の柱と筋かい
耐震構造は地盤と耐力壁がポイント
これまでの震災をみると、地震被害において建物に最も影響を与えるのは地盤です。近年は着工前に、殆どの建物は地盤調査を行ってから基礎設計をしますので、かなり安全性は高くなったと言えます。
次に影響を与えるのは壁です。土の中は見ることはできませんが、壁のつくり方は見ることができ、基本的なことは自分でチェックすることができます。現場でチェックしてみるといっても、目を皿のようにチェックするのではなく、一緒につくりあげるという気持ちで現場の人にも協力して頂き、確認してみてはいかがでしょうか。
耐力壁の柱と筋かいをチェックしてみる
耐力壁の考え方と捉え方は、地震が起きた際、そのエネルギーをどう流してやれば建物への負担を減らせるかがチェックポイントです。
具体的には、1階と2階の間取り図で柱の位置や壁を一致させ、力の伝達をスムーズにすることです。この力の伝達を示す指標として「直下率」という言葉があります。これは耐力壁の位置が上下階で一致する割合を示すものです。
直下率をチェックしてみよう
壁の直下率は容易で、間取り図ができたら1階と2階の平面図を重ね合わせてみましょう。
その結果、2階に柱がある箇所には、なるべく1階にも柱を設けるようにすることです。仮に1階に設けることができなければ、2階の柱を移動できないかを検討してみてください。これは柱だけでなく、壁にも同じことが言えます。
筋かいをチェックしてみよう
上下階の壁の位置をチェックした後は、筋かいの配置、筋かいの向き、筋かいの接合部をチェックします。
①筋かいの配置の考え方
筋かい(耐力壁)はバランスよく配置することです。地震時に変形やねじれが発生し、建物が倒壊する恐れがあるからです。
基本的な考え方は、柱同様、上下階の耐力壁の位置をできるだけ合わせるようにし、建物の隅角部には必ず耐力壁を設けることです。
②筋かいの向きの考え方
建物の立面で見れば、1階の両隅は「ハの字」になり、2階は「Vの字」に入れられているかをチェックすることです。
③筋かいの接合部はどう納める
筋かいは主に木材を使いますが、鉄筋を使うこともあります。主な筋かい端部の接合方法を3例あげておきます。現場でどのような納め方をしているのかを確認してみましょう。
ミニ解説
・耐力壁
建築物において、地震や風などの水平荷重に抵抗する能力をもつ壁のことです。一方、構造的耐力のない壁は間仕切り壁と呼びます。
・耐力壁構造用合板
耐力壁は筋かいを使う方法と、構造用合板を使う方法があります。構造用合板は床に使うことで耐震性や耐風性をさらに強度を高めることができます。また、副次的な効果として、気密性や防音性を高めることができます。
・通し柱
2階建て以上の建築物において土台から軒まで通った継ぎ目のない柱のことです。一般的には、四隅に入れますので4本が使われ、太さは12cm×12cmです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。