家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
施主が行う竣工検査はどこを見ればいい?
工事を進めていく中で信頼関係をつくる
建物が完成し、引渡し前に行なわれるのが施主による竣工検査です。突然検査と言われても、どこを見ればいいのか戸惑うかも知れません。しかし、あまり神経質にならず、気がつくところをチェックできれば大丈夫です。大切なことは、住んでみて不具合に気が付いた時、すぐ見に来てくれるような関係を築いておくことです。
一般に着工から竣工までは、何回か現場で打合せをします。その際、疑問や質問があればその都度聞き、お互いの考え方や人柄を理解してきたはずです。そうした中で信頼関係をつくりあげていくことが大切なのです。とはいえ、もし、工事中から施工会社の対応が不十分であったり、不信な点が多かったりするようなら、早めに注意する必要があります。或いは第三者の専門家に竣工検査を立ち会ってもらう必要があるかも知れません。第三者の専門家は、ネットなどで容易に探すことも可能で、費用もそれほど高くありません。
具体的にどこをチェックすればいい
基本的に気がつくところをチェックできれば大丈夫なのですが、一般的には仕上げの汚れや傷、建具のすべり具合、設備機器のチェックになります。
汚れや傷はパッと見て目立つところを、建具は開閉のしやすさなどすべり具合を、設備機器は一度動かして不具合がないかを確認します。
竣工検査の前には、施工会社や設計事務所も検査をしていますので、それ程不具合はないはずですが、これらはあくまでもつくり手側の検査です。あたりまえの事ですが、施主は使う側の視点に立ってチェックを行うことが大切です。具体的には様々ありますが、今回は、意外な盲点と気になる部分として10項目を取り上げてみました。
1.キッチンの蛇口の開閉は、スムーズで水量の調節は出来ているか
2.換気扇は、実際に作動させ異音が出ていないか
3.カーテンといずれ取り付けるエアコンの取り合いは大丈夫か
4.寝室のベッドの枕元にスイッチは取り付けられているか、又、照明は眩しくない位置に取り付けられているか
5.折戸の開閉はスムーズで、子どもが手を挟んでも安全な納まりになっているか
6.コンセントの位置は、設置を予定している家具の後ろになってしまわないか
7.ベランダの水勾配に問題はないか
実際に水を流して確認してみることをおすすめします。
8.ベランダの手すりの取り付け具合が不十分だと事故につながりかねません。
特に小さな子どもがいる場合は、入念にチェックしておきましょう。
9.住まいの中には多くの設備機器があります。全てに取扱説明書や保証書がついています。
おそらくファイル一式にまとめて渡してくれるはずなので、図面、確認済証などと一緒にして大切に保管しておくことです。
10.引渡しの際はどうしても室内に目が行きがちです。しかし、建物外まわりの排水枡、室外機、電気引込線の位置、ガスメータの位置、外部タタキコンクリート部分の水勾配等も確認しましょう。
以上、一般的でない部分で、つい見落としがちな箇所も取り上げました。
なかには新築プランを計画する段階で注意しなければならないこともあります。特に外まわりはそうです。引渡し時にあれ?と思ってもどうにもならない工事項目もあります。竣工検査項目を確認することで、新築プラン計画時にチェックしておくことも見えてくるのです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。