家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
地盤はこうしてチェックしなさい
土の中は見えない
住まいづくりで難しいところは、目に見えない土の中、光、風、熱等をどう考えて計画するかです。特に注意しなくてはならない箇所は、土の中、すなわち地盤です。
仮に環境の良い場所を求めたとしても、そこが軟弱地盤であったり、液状化現象が出るようでは、とても安心安全な家とはなりません。したがって、あらかじめきちんと調査をし、その対策を施しておかなければなりません。
土地を求める、あるいは、今まで住んでいたところ、いずれにしても家づくりの第一歩は、地盤のチェックから始めなければなりません。
地盤の調査方法は
一般的で簡易な方法が「スウェーデン式サウンディング試験」(SS試験)で安価な地盤調査です。
ドリル状のスクリューを人の手で回転させながら地盤にねじ込み、その感触や回転数から地質を調べます。木造一戸建てであればこの試験方法で得られた数字で判断ができます。たとえば、土質は粘性土か砂質土かを見極め、一般的に粘性土であれば換算N値が3以下、砂質土では換算N値が5以下であれば軟弱地盤となります。
地盤調査会社にお願いすれば必ず調査報告書を作成します。その際、このN値という数値を覚えておいて下さい。N値とは、土の硬さや締り具合を示す単位なのです。
この数値が、大きくなるほど地層は硬く、ちなみに関東ローム層のN値は3~5程度、軟弱な沖積粘性は0~2程度なのです。
SS試験は、地耐力を直接測るわけではありません。もし、地耐力をより正確に調べるのであれば「ボーリング試験」(標準貫入試験)を行うことです。費用は「スウェーデン式サウンディング試験」に比べ高くなりますが、もし地盤に不安があればこの試験方法を行うことです。よりきちんとしたデーターが得られるので安全かつ効率的な基礎設計ができます。
ボーリング試験を実施して、地耐力が㎡あたり3t前後であれば、木造住宅の基礎はベタ基礎で対応できますが、1~2tしかない場合は、地盤改良や杭基礎にする必要が出てきます。
■スウェーデン式サウンディング試験
住宅の地盤調査で最もよく利用されます。
先端のおもりの回転数から地盤の地耐力を算出します。
■ボーリング試験
決められた重さのハンマーを一定の高さから落とし、30cm打ち込むのに必要な回数を調べます。
回数が多いほど硬い地盤といえます。
調査の結果によって
仮に地盤調査の結果によって、地盤改良が必要になった場合、どうするかがとても重要です。
建築予定の建物が、木造かコンクリート造なのかによっても変わってきますが、地盤の状態に応じて採用されるのは住宅の場合主に次の3つのタイプです。
・軟弱地盤の層が地表から2m程度の場合・・・表層改良工事
・軟弱地盤が地表から2m以上8m以下の深さの場合・・・柱状改良工事
・地盤が相当悪いケース・・・鋼管杭工事
<表層改良工事>
表層地盤を1m程掘り起こしセメント系粉体固化剤を混ぜて強固な地盤にします
<柱状改良工事>
地盤に直径40~60cmの穴を掘り、その中に固化剤を入れて柱状体をつくり土との摩擦抵抗で建物を支えます。
<鋼管杭工事>
軟弱な地盤が分厚く分布していてその下に強固な支持地盤がある場合に適した工法。支持地盤まで杭を打ち込み建物を支えます。
地盤の三大トラブル
地盤の三大トラブルは、①不同沈下②液状化③盛土です。仮に、これらに遭遇してしまったら、建物を使用することが不可能なくらい大変な出来事です。
不同沈下や盛土は、事前の調査でわかりますので対策を講じることはできます。しかし、液状化は、地震の揺れで一時的に液体のようになり、自分の敷地はもちろん、周囲にも大きな被害をもたらします。あらかじめハザードマップなどで調べて置くことが重要です。
また、盛土は、1970年以前に宅地造成された土地に多く見られます。特に造成基準を定めた宅地造成等規制法が策定される1961年以前の造成地は、擁壁や雨水処理が不十分なところが多く、地下水がたまり土地が滑りやすいといわれていますので、斜面地などで盛土された敷地なら十分注意をして計画して下さい。
地盤に関してはとても難しい判断や専門性が必要とされますので不安であれば一級建築士などに相談することをおすすめします。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。