家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
収納計画で落とし穴は洗面・脱衣室です
標準的な家族の収納スペースは12~15%です
一般に戸建住宅の収納スペースは家全体総容量の12~15%を目安に計画するとモノが納まると言われています。初めて家を建てる人が「家全体総容量の12~15%を目安に」と言われてもピンときませんね。まずは下図の間取りを参考にイメージしてみて下さい。
わかりやすくする為に、木造平屋で135㎡(約40坪)の延床面積としました。これらの収納スペースを合計してみると、48.37㎡で家全体の14.9%になります。(※天井高2.4mと仮定)
収納計画の基本は、まず始めにこの数字をおさえて平面計画を考えるとよいでしょう。
落とし穴は洗面・脱衣室
住まいに関する様々な不満や不具合を調べてみると、必ず上位に上がるものが収納です。さらに収納の中でも洗面・脱衣室に不満を持っている人が多くいます。一般的に洗面・脱衣室は洗濯機と洗面化粧台が設置されています。洗濯機があれば当然、洗濯物を入れるカゴが必要であり、脱衣もするのでパジャマや下着、バスタオルを置く棚、或いは壁スペースも必要になってきます。さらには浴室で使う予備のシャンプーや洗剤、そして体重計と、大きな収納物と小さな収納物が混在するところでもあるのです。したがって収納棚の幅や奥行、そして使いやすい位置に収納スペースと、スッキリした収納計画が求められます。しかし実際には、何とかなるだろうと曖昧にし、結果的にゴチャゴチャになってしまうので、入居後に不満に思うようになってしまうのです。特に化粧品類や歯ブラシなど、細々したものは10cmの奥行があればきれいに納めることが出来るので、壁厚の深さを利用することも考えていいでしょう。
収納スペースが多くあれば暮らしやすい?
収納スペースが多くあれば暮らしやすいのでしょうか?そうとは言えないと思います。実際には敷地や延床面積、予算の制限等もあるので、大きなスペースを確保できないことが多いのです。大切なことは、自分が何を重視して生活をしていくかを見つめることから始めることでしょう。例えば、アウトドアが好きならその道具はどこに収納するのか、或いはお菓子づくりが趣味なら、キッチンの収納はどうあれば使いやすいのかを考えてみて下さい。なんとなくボンヤリして掴みにくいと思えば、現在生活していて何に不便を感じているのかを書き出してみることです。
色々なモノで溢れている現代生活では物の量をコントロールするのではなく、いかに効率よく収納できるかにエネルギーが注がれているところがあります。収納の目的は仕舞うところにあるのではなく、いかに使いやすくするのかにあるのです。
1年に1回くらいは物の整理をし、生活スタイルに合った収納計画を心がけていくことで、モノとの良い付き合い方が生まれてくるのです。
ミニ解説
・洗濯動線
洗濯機から物干し場までの動線をいいます。洗濯機をどこに置くかによって家事動線は大きく変わります。さらに収納計画も変わってきます。
・見せる収納と隠す収納
収納物を見せるので、統一性を考えることが重要なポイントです。また、見せる収納は、収納しているものを覚える必要がありません。一方、隠す収納は覚える必要があります。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。