家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
土地の購入で気になる、建築基準法の「ここ!」を確認
最低限のポイントを知ろう
家を建てるにあたり、誰もが立地の良さと広い敷地を求めると思いますが、予算に限りがあります。特に土地の価格はエリアにもよりますが、建物より高い傾向にあるため、より慎重に選ぶ必要があります。周辺環境はもちろんのこと、家族の希望が叶う広さや、間取りがつくれるのかなどありますが、建築基準法の確認も重要です。
建築基準法の専門用語は、初めての家づくりを考えている人にとって理解しづらいポイントがあるかと思われます。「ここだけは」理解をして欲しいポイントを紹介します。
土地には用途地域がある
人間に性格というものがあるように、土地にもどのような用途で使って欲しいという「用途地域」が、自治体ごとで定められています。たとえば緑が多く静かな環境を形成しようとする「第一種低層住居専用地域」や、マンション等の中高層住宅の形成を目的とする「第一種中高層住居専用地域」など、13の用途地域が存在します。そのうち、住居系が8、商業系が2、工業系が3となります。
家を建てるとするならば、多くの人が住居系の地域にある土地を選択することになるかと思われます。
用途地域を確認したら、次に重要なのが建ぺい率と容積率です。これはその土地に対して、どの程度の規模で建物を建てられるかを表す数字です。住居系の建ぺい率は主に30~60%、容積率は50~200%となります。
土地には斜線制限がある
緑が多く、静かな環境を形成しようとする地域には、厳しい斜線制限が存在します。特に低層住居専用地域や中高層住居専用地域といった地域には斜線の中でも厳しい北側斜線が適用されます。近隣住宅への日当たりや通風など、健康的・衛生的な住環境を確保できるようにするためです。規則によっては建てられる住宅の規模に影響する場合があります。土地購入の際は必ず確認をしておくことです。
〈北側斜線〉
真北方向の水平距離×1.25+5m(もしくは10m)
〈第1種高度地区〉
真北方向の水平距離×0.6+5m
※自治体ごとで条件が異なります。
駐車スペースに屋根があれば建築面積に含まれる
土地の購入にあたり意外と見落としやすいのは、車庫やカーポートのスペースです。特に車を大事にされる方は駐車場に屋根を付けたいものです。しかし、屋根をつけるとこれは建築面積に含まれるため、結果的に住居スペースの床面積が十分に確保できない場合があります。これについては外壁の長さや柱の間隔により、建築面積の算定で緩和を受けられる方法があります。以下の項目が主なポイントとなります。
・外壁のない部分が連続して4m以上
・柱の間隔が2m以上
・天井の高さが2.1m以上
・地階を除く階数が1
これらの条件を満たせば、緩和措置として各辺から1m後退した部分の面積のみ、建築面積として含まれることとなります。
仮に購入予定の土地で、車庫やカーポートを設けると建築面積がオーバーするのであれば、上記の条件を満たすカーポートを選定する必要があります。首都圏郊外の土地で柱2本の片持屋根のカーポートが多く見受けられるのは、その緩和措置を受けるためのデザインでもあるのです。
建築基準法を知って空間を広く確保する方法を知ろう
建築基準法は規制だけでなく、上手にプランニングに活かすことで、実際の床面積より体感的に広くつくる事ができる基準も存在します。主に次の2つを紹介します。
・吹き抜け…
建築基準法で床面積として含まれるものは、あくまでも「床がある」部分です。住まいの中に吹き抜けを設けると、吹き抜けは上下階で繋がっているため、2階の床面積は含まれません。玄関上部やリビング・ダイニングなどに吹き抜けを設けると大きな開放感が得られます。
・ロフト…
2階の天井小屋裏を利用したロフトですが、1.4m以下の天井高であれば床面積には算入されません※。さらに設置される階数の床面積に対して1/2の面積まで設けることが可能です。季節物の収納スペースとしてとても重宝するでしょう。
※自治体ごとによって条件が異なります。
上記以外にも床面積を広く使いたい方法としては、ビルトインガレージや地下室などもプランニングによって容積率の緩和を受けられます。
土地購入についてのまとめ
不動産といえば「土地」です。字のごとく動くことのない財産です。したがって誰もが慎重になります。一度買い求めれば、その場所で人生の殆どを過ごすことになるのです。
今回は、初めて土地を購入し、家を建てることを目的にされている方に向けて、わかりやすく建築基準法のポイントを絞ってまとめています。購入したいと考えている土地で、さらに別の建築条件や専門用語があれば、ご自身でよく調べ、本当に購入を検討していいのか吟味していただければと思います。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。