家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
健康住宅のポイントは窓にあり
健康住宅の定義を考える
健康住宅といえばシックハウス症候群の対策がとられ健康に住めるように工夫されていることです。身体的には気密性、断熱性、通気換気性のバランスがよく室内の湿度分布も一定であることです。
しかしながら室内の壁に珪藻(けいそう)土を使う、あるいは床材に無垢材を使うぐらいで健康住宅といって販売している住宅会社もあります。決して間違ってはいませんが、健康という意味は広いのでどこに焦点をあてるかによって健康住宅という言葉の意味合いは変わってくるのです。たとえば住む人の心の健康、環境の健康、さらには経済の健康まで広げることができるということです。
窓に焦点をあててみる
窓ガラスというよりはサッシがポイント
家の美しさは形や壁の色、そして窓の配置の仕方で決まります。なかでも窓ガラスのサッシがどんな素材でどの色を使うかはとても重要なポイントなのです。
人間の容貌でいえば、ヘアスタイルは屋根で顔の色艶は外壁、目鼻立ちはサッシで化粧に例えればアイシャドーとかマスカラで目をはっきり見せるものなのです。しかしながら今もって外壁の色とサッシの色まで細心の注意をもって選択はしていないように見受けられます。その原因は、サッシは基礎工事をしているあたりで早めに発注しなければ取り付け工事に間に合わなくからです。ですが基礎工事の段階ではまだ外壁の色は決まっていないことが多いのです。したがって無難なアルミ色やステンカラーを選んでしまうのです。
アルミサッシより樹脂サッシに注目
健康住宅をつくる重要なポイントに窓ガラスがあります。
近年はほとんどの住宅に複層ガラスが採用され、遮熱や断熱の性能を向上させ快適な室内環境をつくり出しています。特にLow-E(ロー・イー)ペアガラスは放射による伝熱を少なくする優れた性能を持っているガラスです。しかしながらガラスは優れていてもサッシから逃げる熱が大きいのです。
次の表をみて下さい。アルミサッシ(単板ガラス)の熱損失を100とした場合の数字です。
二重サッシ、あるいは樹脂サッシの熱損失がとても小さいのが分かります。樹脂サッシはアルミサッシに比べてまだ製品そのものは割高ですが、省エネの視点で考えればランニングコストは安くなり経済的健康といえます。又アルミサッシは結露を引き起こしますが樹脂サッシは結露を発生させません。これは環境の健康といえるでしょう。
健康住宅を考えるのであれば、内装材や複層ガラスはもとよりサッシの選択にも十分注意を払って決めていくことがキーポイントになるということです。
※珪藻(けいそう)土とは、植物性プランクトンが海底や湖底に堆積して化石化したものです。調湿機能、脱臭機能、吸水機能、吸着機能に優れ、健康住宅人気とともに注目されています。
※無垢材とは、合板や集成材ではなく、自然の木そのもので天然木本来の風合いを持ち、室内の湿度を調整する働きもあります。
※複層ガラスとは、複数の板状ガラスを合わせ、断熱性や遮音性などを高めたものです。「複層ガラス」あるいは「ペアガラス」といいます。
※Low-EとはLow Emissivity(ロー・エミシビティー)の略で「低放射」という意味です。
※Low-Eペアガラスとは特殊金属膜をコーティングした低放射(Low-E)ガラスを使った複層ガラスでLow-Eペアガラスと呼んでいます。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。