家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
家を建てられない土地や条件とは
土地情報を集めよう
家と土地には都市計画法や建築基準法によって様々な決まり事があります。
都市計画法が施行されている都市計画区域では、原則として家が建てられない区域や、建物の構造・工法に条件のある地域が指定されています。家が建てられる区域であっても、工事に規制がかかったり、用途が決められていたり、煩雑な手続きを必要とする場合など珍しくありません。
他にも自治体による条例や、建築基準法に基づく建築協定などの影響を受ける土地もあるので注意が必要です。また、すでに建物が建っていても建築基準法の改正で条件が満たせないため、既存の建物と同等以上の規模で建て替えが出来ないというケースもあります。
土地自体に問題がなくとも、売り手側から条件があるなど、周辺と比べて価格の低い土地にはそれなりの理由があるものです。一般に土地選びは土地の価格を含め、生活の利便性や住環境、地域性などあらゆる条件に優先順位をつけていきます。
今回は、家を建てられない土地や条件に的を絞ってわかりやすくまとめていきます。
厳しい制限のある土地
主に次の4つのことに注意しましょう。
・都市計画道路の区域
区域内の建物は階数、構造などが制限されます。また、相場よりも格安の「道路予定地」は後に立ち退きが発生することもあるので、必ず行政に確認をすることです。
・宅地造成工事規制区域
がけ崩れなどのおそれがある区域のことで、都道府県知事の許可を受けなければ宅地造成工事が出来ません。
・高圧線の下
電圧の大きさや送電線との距離によって、建物に制限がかかる場合があります。また、建て替えなども制限されます。
・工業専用地域
用途地域による分類で、工業の利便増進を図る地域のことで、市街化区域の中で、唯一住宅が建てられない地域です。
家を建てられない土地
家を建てられない土地は主に次の3つですが、特に注意したいのは道路の幅です。
・接道する道路の幅が狭い
敷地は幅4m以上の道路に接道する義務があります。それ以下でも建築基準法上の道路(2項道路)なら条件付きで建築が可能です。
・敷地と道路が2m以上の幅で接道していない。
敷地は道路に2m以上接道しなければ、家を建てることが出来ません。一般的に言われる「旗竿敷地」のような形状の土地です。また、接道面に高低差や水路がある場合は、一定要件を満たせば建てることも可能なので、審査機関と協議するとよいでしょう。
・市街化調整区域
市街化調整区域は、街づくりにおいて制限のかかった土地で、建物の建築による「市街化」を制限し、環境を残すことを目的とした区域です。高齢者住宅や変電所等、地域に需要がある施設や区域指定前の既存宅地の建替えを除いて建築は出来ません。
条件付きの土地
建築基準法ばかりでなく自治体による条例や建築協定、さらに中古住宅などは市の合併によって建築基準法が改正されることもあります。
・歴史的風土特別保存地区
京都や鎌倉など歴史的な町並みが残る地区です。この地区内の新築物件には規制があり、事前申請が必要です。
・景観地区
市街地の景観維持のため、必要な場合に建築物などの外観や色彩、デザインなどに規制があります。
・高度利用地区
土地の有効活用を目的に指定されています。建築物の容積率、建ぺい率、建築面積、壁面の位置を制限し、小規模建築物を抑制します。
・風致地区
自然の風景がもつ趣きや美しさを維持・保存するために、建築物の建築や樹木の伐採などが制限される地区になります。
建築条件
売り手の指定する建設会社と工事請負契約を結ぶことが条件の土地。土地を購入後、一定期間内に家を建てます。基本的には自由設計とはいえ、工法やデザインなど限られることが多いです。
中古住宅付きの土地
建物つきで売られる土地で、更地よりも安価で販売されます。ただし、建て替えをする場合は注意が必要です。建築基準法の改正などで建築不可や、建築できても建て替え前よりも規模が小さくなってしまう場合があります。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。