家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
住居地域と住居専用地域はどう違うの?
用途地域は大きく分けて住居系、商業系、工業系の3つ
一般に家を建てようと考えた時、仕事の通勤や子供の学校を考慮して、まずはどのあたりに住みたいか考えます。そして、周辺環境や交通機関、公共施設などをチェックするでしょう。
その際、あわせて確認しておきたいのが、市街化区域内の土地には用途地域による、建築物の用途制限があるということを忘れてはなりません。この用途制限を確認しておかないと、想像していた程、広さが取れなかったということが起こります。そして、用途地域には大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分けられているのです。住居地域と住居専用地域は住居系の中にあり、この中には8種類あります。この地域は基本的には戸建の住宅の環境が守られている地域です。
住居系の中にも8種類あります
住居系地域は住宅地として、将来にわたって住環境を守っていこうとする地域で、8種類あります。
①第一種低層住居専用地域
建てられる建物の高さや建ぺい率、容積率が低く抑えられ、最も規制が厳しい地域なので、良い環境が守られている地域です。
②第二種低層住居専用地域
主に低層住宅のための専用地域。住宅以外では、150㎡以下の店舗、飲食店などもつくることは可能です。
③第一種中高層住居専用地域
中高層住宅のための地域。住宅系以外では、大学、病院、2階以下かつ500㎡以下の店舗などをつくることが可能です。
④第二種中高層住居専用地域
主に中高層住宅のための地域ですが、必要な利便施設の立地も認めています。例えば、2階以下で、かつ1500㎡以下の店舗などです。
⑤第一種住居地域
大規模な店舗、事務所の立地を制限する住宅のための地域。住宅以外では、3000㎡以下の店舗、オフィス、ホテル、ゴルフ練習所などをつくることが可能です。
⑥第二種住居地域
住宅と店舗、オフィスなどの併存を図りつつ、住居の環境を保護する住宅地域です。カラオケボックスなどをつくることが可能です。
⑦田園住居地域
2018年4月より施行された新しい用途地域です。第一種低層住居専用地域に認められた建築物で、農地の開発が規制されており、農地と調和した良好な住居環境の保護を目的としたものです。500㎡以下の農業に関わる店舗、飲食店などをつくることが可能です。
⑧準住居地域
幹線道路の沿線等で、地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。
土地購入前に必ずチェック
第一種低層住居専用地域では、住宅地の環境を最優先した建築制限をしており、住宅以外の建築物は公共施設や医療・福祉関係の施設に限られています。
用途や建ぺい率、容積率が厳しく制限されている分、良好な住環境が確保されます。建ぺい率は主に30~60%であり、容積率は50~200%です。
もしこの地域で気に入った土地があったとしても、狭小地であれば、建築自体が無理なケースもあります。土地を購入する前に必ず建ぺい率、容積率を確認しておきましょう。
それと、必ず北側の斜線制限が厳しく制限されていますので、あわせてチェックしておくことです。わからない時は不動産業者、または専門家などに訊いてみることです。
土地に関しての言葉
・都市計画区域
市または町村の中心部を含み、一体的に整備、開発、保全する必要がある区域で、原則として、都道府県が指定します。
・市街化区域
都市計画区域のひとつで、すでに市街地を形成している区域及び、概ね10年以内に優先的かつ、計画的に市街化を図るべき区域。
・市街地調整区域
農家の住宅や、開発許可を受けたもの。線引き前宅地以外は認められず、宅地造成などの開発や、一般住宅の建設は出来ません。市街化区域に対するもの。
・北側斜線制限
北側隣地境界線を起点として、高さと斜線の勾配(角度)によって規制されます。例えば制限が5m+勾配1.25とすれば、図のようになります。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。