家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
依頼先はこうして選びなさい
依頼先を決める-その前に-
家づくりを成功させる最大のカギはどこに家づくりを依頼するかです。
近年は施主と依頼先をマッチングさせるサイトや第三者の立場でアドバイスをするプロデュース機関もあります。大切なことは、大きな買い物をする訳ですから、そのために手数料を払ってでも悔いが残らないで、満足した家を手に入れることができたなら、それはそれで良いお金の使い方といえるでしょう。
何といっても自分の足で歩き人と出会い、人柄をみるなどいわば、ザラザラした情報を集めることです。ネットなどツルツルした情報からは、比較する情報等をたくさん集めることはできますが、モノづくりには、そこに情熱も大切なのです。
どんな依頼先があるの
依頼先は大きくは建築家、工務店、ハウスメーカーの3つがあります。それぞれに特長や注意点がありますので、よく内容を理解して依頼先を決めることです。
<建築家>に依頼する
世界にたったひとつの家にすみたいという人に、最適な依頼先は何といっても建築家です。
特に変形敷地や狭小敷地などの設計力を必要とする厳しい敷地条件の中では、想像を超えるすばらしい提案が期待出来るでしょう。そのためには当然設計期間も必要で設計費用がかかります。設計費用は、大体工事金額の10~12%程度を目安にして下さい。建築家に依頼する際の注意するところはデザインを重視するあまり使い勝手が悪く作品的な住まいを施主に押しつけられる可能性があることです。それと建築家は個性が強いので相性が合うかどうかも始めの段階で見極めておくとよいでしょう。
<工務店>に依頼する
工務店というと小さな町の工務店をイメージするかも知れません。しかし、その規模と取り組み方は、さまざまで大きくは3つに分けられます。
①中堅の地域ビルダー
中堅の地域ビルダーとは、地域限定のハウスメーカーともいえる規模の工務店で住宅展示場などにモデルハウスを持っている場合もあります。
②フランチャイズ加盟店
フランチャイズ加盟店とは、もともと地元の中小規模の工務店だった会社がフランチャイズ本部と契約を結んだ工務店です。
③小規模の工務店
小規模の工務店は、街の大工さんのような工務店で、昔ながらの工務店がこの中に入ります。
それぞれに特長があるのですが、一言でいえば地域密着型の会社ならではの信頼性をもって仕事をしているといえます。一般的に工務店は、施工技術を大切にしているので建てやすさが重視され設計もオーソドックスな傾向になりがちです。
<ハウスメーカー>に依頼する
ハウスメーカーの大きな強みは情報量の多さとトータルにサポートしてくれる安心感です。また、施工に関して品質のばらつきが少ないのもハウスメーカーの特徴です。それは全国に何万棟もつくるので、できる限りクレームを避けたい為に既製品を多く用いシステム化を図っているということでもあります。
システムからはずれるとできないことが多く、仮にそれを実行すると思いのほか、金額がアップすることもあります。住宅展示場やテレビコマーシャルなどを使っての営業戦略なので広告宣伝費等間接経費が建物に加算されるため割高な家になりがちです。
家づくりの王道をめざして
住まいには、健康・安全・人権・環境などと並んで、本来社会的に一定レベル以上の質が保証される仕組みが備わっていなければなりません。欧米では設計と施工の業者は分けて行うことになっているのですが、日本の建築基準法では設計と施工が分離して行うことは規定されていません。
日本では、土地までにも建築条件をつけ設計・施工とすべてを受注して営利を追求しています。何が問題なのかといえばそこに第三者の目が入らずチェック機能が働かないことです。
欠陥住宅は一昔に比べるとかなり少なくなりましたが、むしろ熱環境など専門知識の不足からくるチェック漏れも起きているのです。家づくりの王道をめざすのであれば、設計と施工を分離し第三者によるチェック(監理)を行うことで一定レベル以上の質が保証されるのです。しかしながら予算や工期など様々な条件の中で進めていかなければならず難しいこともありますが、できれば一歩でも二歩でも理想に近いところで一生に一回の財産をつくりたいものです。そして家づくりに対して、熱い心をもって依頼先を探せばきっとその夢を実現してくれるパートナーと出会うはずです。
家づくりは、ほとんどの人が一生に一度の大仕事です。まず依頼先をどこにするかより先に、自分たち家族の生き方や論理観などを心構えとして行動していくことが求められるのです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。