住まいづくりについて、これだけは、ぜひ、知っておいて欲しいという事項を解説しています。より分かりやすく活用しやすいように多くの写真とイラストを使いまとめてあります。
Q&A形式で解説しています。
間取りの肝(ポイント)をおさえる
間取りを考える前に
間取りを考える際、はじめにどんなことをイメージすれば良いのでしょうか?
住宅はいたって個人的なものです。一般論ではなく、ひとりひとりの想いが大切です。 「したい暮らし」を表す言葉を見つけてはいかがですか?
想いを表す言葉を見つける
「どんな住まいにしたいですか?」という質問に対して、たとえば洋風でモダンな外観、日当りがよく収納もたくさんつくって、さらにリビングは〇〇畳くらい、できる限り広く、といったように答えるかもしれません。
しかしその前に、これまでの家族のあり方やライフスタイルなどをふり返ることも大切です。それによって、家族が大切にしてきたことや自分の好きな空間や色、そしてしたい暮らしのシーンを思い浮かべることもできるかもしれません。
そこから想いを表す言葉やこだわる所が見つかれば、形にしていくこともできるのです。
すべては「想い」から始めよう。想いはきっと時を積み重ねながら家族の心に刻まれていくということです。
外と内を繋ぐ
道路から玄関までの距離があまりないので、どんな工夫をすれば良いのか想像がつきません。
具体的な例を教えていただけますか?
外と内を繋ぐスペースは、ホッと心が落ち着く最初の場所です。
植栽や照明なども活かしてゆとりを感じさせることです。
なにげない心理的な切り替えのスペースを設ける
道路から玄関までのアプローチは気持ちを切り替えるスペースとしてとても大切です。敷地の性格上あまりスペースがとれない場合は、道路から一度曲がって玄関に入るようにすることで一瞬の「間」ができ、奥行き感が演出されます。
さらに心理的な切り替えができる工夫などが求められます。
小さなスペースでも良いので、ひと呼吸できるスペースを設けるということです。
間取りには余白が大切
以前住んでいた家は画一的で面白みに欠けていました。
今度は少し遊び心をとり入れた住まいにしたいと考えています。
どんなところに注意すれば良いのでしょうか?
用途のはっきりしているスペースとスペースの間に、用なきムダなスペースを設けてみてはいかがですか。
用なき間をつくる
今から680 年前、日本三大随筆のひとつと言われる、吉田兼好の「徒然草」に次のような文章があります。
「造作は用なき所を作りたる。見るも面白く万の用にも立ちてよしとぞ」
用なき所をつくると視線のずれや広がり感が出て見るも面白い。何かの時にはちょっと腰を掛けて使うこともできると、つれづれなるままに日本の「間」の良さを説いてくれています。
住まいは無駄で曖昧なスペースを設けておくと、居心地に対する想像力をかきたててくれるということです。
基本となる広さを把握する
家族4人が生活する上で最低限の基本となる広さを教えて下さい。
延床面積32坪を目安に考えて下さい。
1階16 坪、2階16 坪で合計32 坪です
住まいの広さを考える時どのくらいの広さがあれば満足できるのか、と聞かれても明確に答えることは難しいものがあります。様々な条件があるからです。しかし、基本となる広さを考えることはできますので検討してみましょう。
4間×4間、この広さをひとつの目安として覚えておくと分かりやすいということです。
間取りが固まる所
間取り全体を決めるカギはどこですか?
ズバリ! 玄関と階段です。
外と内、内と内を繋ぐ所
玄関の位置は道路との関係、駐車場、庭などの外構を考え、さらにリビングやダイニング、キッチンなどの繋がりを考えながら位置を決めていきます。
玄関が外と内を繋ぐ動線とすれば、階段は上と下を繋ぐ動線となり、全体の間取りを決めていく中でとても重要なポイントとなるのです。
玄関は外と内を繋ぎながらも心理的にけじめをつける場で、階段は1階と2階の生活空間が切り替わる所を繋ぎます。
間取り全体を決めるカギは玄関と階段にあるということです。
間取りは平面ではなく立体で考える
展示場のモデルハウスで同じ広さのリビングを見たのですが、開放感が全然違っていました。なぜでしょうか?
様々な理由はあると思いますが、天井の高さやデザインによっても開放感は違ってきます。
天井を高くする際の注意点は
一般に、日本人は広さの感覚をつかみやすいようにリビングは〇畳、子ども室〇畳と言ったりします。和室が少なくなり、洋室中心の生活になった現代でも、和室の基準の大きさから広さをイメージしているのです。
しかし、住まいはそもそも平面からつくられているわけではなく、高さを含めた空間でつくられているわけであり、高さをどのように決めるかで開放感は全然違ってくるのです。
ただ開放感を出すために天井を高くすると、2階がある場合はその分階段の段数が増えることになりますし、熱環境の効率も変わります。全体のバランスも考えて天井の高さを決めていくことです。
たて×よこの「㎡」ではなく、たて×よこ×高さの「㎥ 」で考えることが開放感をつくるということです。
光の質を意識する
光を上手く採り入れた住まいをつくりたいのですが、どのような方法がありますか?
光にも性質があります。
スペースの広さや用途に応じて光の質を意識して採り入れて下さい。
光の性格と採り入れ方
四季の変化や時刻とともに変わる光の表情や色などを上手くコントロールすることで、室内空間は全く違った表情を見せてくれるということです。
キッチンの形式はダイニングにあり
どんなキッチン形式が良いのか迷っています。
選定するポイントを教えて下さい。
ダイニングに何を求めるのかを見極めることで、キッチンの形式は変わります。
ダイニングとキッチンの形式
ダイニングとキッチンの関係は、現在の家族構成と将来の変化も踏まえてどんな形式が一番適しているかを見極める必要があります。
たとえば、食事は落ち着いてゆったりしたい、リビングにいる子どもと会話をしながら料理をしたい、などキッチンに求めるものは家族によってそれぞれ違います。
近年の傾向では、キッチンは単に料理をつくるだけのスペースではなく、家族のコミュニケーションの場という考え方に変わりつつあります。
ダイニングとキッチンの関係は家族の求めるものによってそれぞれ違います。
将来の変化もふまえて決めていくということです。
冷蔵庫の位置でキッチンのレイアウトは変わる
キッチンのレイアウトを考えています。冷蔵庫の位置を決める留意点などがあれば教えて下さい。
冷蔵庫をどこに置くかでキッチンの配置は変わります。
冷蔵庫の配置を考える
キッチンは食事の支度をする場所という明確な目的がありますから、機能性が重要になります。一般的に、キッチンはコンロ(ガスまたは電気)、シンク、冷蔵庫、まな板スペースの4つの組み合わせです。これらをどのような配置にするかによって使いやすさが決まります。
基本の流れは、冷蔵庫から食材を取り出す→シンクで洗う→まな板で切る→コンロで煮る・焼くです。そして、最も重要なのは、冷蔵庫を配置する場所なのです。
生活スタイルに応じたキッチンの形式を決めると同時に、冷蔵庫の位置もどうするか、あわせて考えていくということです。
サニタリースペースを工夫する
入浴している時間やトイレにいる時間が比較的長いので気持ちの良い空間にしたいのですが…?
サニタリースペースは他と比べると設備機器が設置され、どちらかというと無機質で画一的になりがちです。他の要素と何らかの関係性をつくることで、気持ちの良い空間になります。
サニタリースペースは必要最小寸法に抑えられがち
家族みんなが集まるダイニングやリビングは広いスペースを取り、浴室や洗面室、トイレなどいわゆるサニタリースペースは必要最小寸法に抑えられがちです。しかし、これらのスペースはかがんだり、服の着脱など様々な動作が伴うので、極端に小さくすることはできません。
浴室はくつろぐ要素が高いのでスペースが許せば坪庭、またデッキを採り入れてみてはいかがでしょう。洗面室は天窓、トイレは地窓などで上手く自然光を採り入れると、明るく広く感じられます。
必要スペースを確保したら、あとは機能的でプライバシーを守りながら快適空間にするためのアイデアをどこに求めるのかということです。
収納スペースの目安はどのくらい?
収納スペースはどれくらい確保すれば良いのですか?
一般に戸建て住宅の収納スペースは家全体総容量の12%~15%を目安として計画をたてることです。
生活スタイルに合った収納を
物質的に豊かになった現代生活では、物の量をコントロールするのではなく、いかに効率よく収納するかを重視するところがあります。しかし、収納の目的は多く詰め込むことではなく、いかに暮らしやすくするかです。
間取りが決まったら収納スペースの総容量を計算して、どのくらいあるのかを確認して下さい。
●収納スペースを計算してみる
たとえば総2 階建て住宅の場合、「延床面積(m2)×天井高さ(m)×2」で家全体の大まかな総容量(m3)が分かります。そして各収納部の容量の合計が、家全体総容量の12~15%以内であるか確認します。
収納計画の基本的な考えは、
①各部屋で収納を決める ②その物を使う場所に置く ③奥行きを重視する
④収納内部はシンプルに ⑤デッドスペースも工夫して利用する
ということです。
施主が見るべき優先図面
設計図面の中でもっとも優先して見なければならない図面は何ですか?
第一に優先して見る図面は平面図、基礎伏図、電気・給排水図です。
意匠、構造、設備、それぞれをチェック
一戸建て住宅をつくるのに必要な図面は15~16 種類あり、大きく分けると意匠、構造、設備の3つに分類されます。これらの多くの図面の中で施主が第一に優先して見なければならない図面は「平面図」「基礎伏図」「電気・給排水図」、つまり意匠、構造、設備それぞれをチェックするということです。その次に優先する図面は「展開図」と「仕上げ表」です。
第一優先の平面図は間取り計画、基礎伏図は耐震などの構造、電気・給排水図は後で修正のきかない設備計画など建物の根幹をなしているからです。
また、展開図と仕上げ表は、どちらかといえば暮らしをイメージさせてくれる図面です。生活に即密着するのでこれらも確認しておく必要があります。
トラブルになりやすい所や修正のきかない所は、一番初めに確認しておかなければならないということです。
間取り図で理解しづらい所は階段
間取り図でイメージしづらい所はどこですか?
階段の勾配と高さ関係です。
階段の高さに要注意
設計の上手い人ほど階段の納め方が上手いと言われ、階段によって住み心地は大きく左右されます。しかし 平面図だけを見てもイメージしづらいので、でき上がって気がつくことも多いのです。
平面図だけでは分かりづらいので断面図と合わせて確認すると良いでしょう。
階段はもともと上階の床が1枚ずつ落ちてきたとイメージして下さい。したがって、上ることより下りていくことを意識して勾配と高さを決めていくと分かりやすいということです。
生活スタイルの変化に対応
将来、家族構成が変わるための間取りは、どのように考えておけば良いですか?
壁には「取れる壁」と「取れない壁」があります。
取れる壁をつくっておくことです。
間仕切り壁で区切っておく
取れる壁は間仕切り壁で、取れない壁は耐震壁です。生活スタイルの変化に対応させるなら、初めから耐震壁ではなく間仕切り壁でスペースを区切っておくことです。
あらかじめ平面計画で構造計算も検討し、予想される生活スタイルの変化に対応できるようにしておくということです。
吹抜けをつくる
吹抜けで開放感のある住まいをつくりたいのですがどんなところに注意が必要ですか?
吹抜けをつくる上で大切なことは、何のために吹抜けをつくるのか目的を明確にしておくことです。
魅力的な建築的手法のひとつですが…
吹抜けは平面では表現できなかった開放感、上下階でのコミュニケーションや気配を感じさせることができます。そして立体的に空間を豊かにする魅力的な建築的手法のひとつです。しかし注意点もあります。
吹抜けは目的と対策を明確にすることで気持ちの良い開放感が得られるということです。
中庭を取り入れる
敷地が密集地で光も入りづらく、隣家のプライバシーも気になります。
どんな家の建て方がありますか?
中庭を取り入れた間取りを考えてみてはいかがですか。
壁に囲まれているという安心感
中庭は主に室内に光を取り入れることを目的としていますが、壁に囲まれているせいか守られているという安心感と落ちついた雰囲気を醸し出してくれます。
一般の家の形状よりも外壁面が増えますので、コストはアップしますが、採光が期待できない敷地でも開放感をつくり、プライバシーを保ってくれる良さがあります。
密集地で、さらに狭い敷地で有効な採光が確保できない場合、中庭を取り入れた間取りは問題解決のひとつになるということです。
家事ラクの家
共働きをしているので少しでも家事の負担を軽くしたいです。
家事スペースで最もチェックしておくことは何ですか?
洗濯機と物干し場の関係です。
家事動線の中心は洗濯です
家事スペースの考え方は家族形態や家族構成によって違います。仮に、その家族にとっては失敗であっても他の家族には参考になることもあります。生活スタイルに合った家事動線を確認しながら間取りを決めていくことです。
一般に家事スペースでチェックする所と言えばキッチンまわり、水まわりでしょうか。
しかし共働きで忙しい家庭では、洗濯機と物干し場の関係が気になるところです。
洗濯機と物干し場をどこに配置するかによって家事動線、特に洗濯動線は負担にもなりラクにもなるということです。
狭小地に家を建てる
敷地面積が20 坪の狭小地です。広く見せたいし、光も上手く採り入れたいです。どんなノウハウがありますか?
コートハウス、スキップフロア、吹抜け、トップライトや窓の活用を考えてはどうでしょうか。
周辺環境を活かす
設計のポイントは、周辺環境を読みながら、いかに開放的で広く見せるかということです。さらには光と風の導き方にノウハウが必要で、次のような方法が考えられます。
狭い敷地だからこそ、工夫すれば想像できなかった空間の力が得られるということです。
二世帯住宅に住む
親の住んでいる敷地に二世帯住宅を計画しています。
気をつけることはどんな点ですか?
親子二世帯住宅の良い所は、困った時にすぐに助け合えるという生活面や経済面での安心感です。また、土地を有効に使い、土地代を建物や生活に役立てることもできます。
一方、問題になりやすいのは、両者の価値観と生活スタイルの違いです。
リフォームのしやすさという視点も
二世帯住宅にはそれぞれメリット・デメリットがあります。特に気をつけたいのは、一般に個人住宅と比べて家族形態の安定している時期が意外に短いという点です。
親は高齢になり子どもは成長するといった具合に、家族形態が大きく変化していきます。つまり、二世帯住宅は完成後の家族形態の変化に応じたリフォームのしやすさという視点も考慮して、計画すると良いのです。
お互いの生活スタイルを理解した上で共通のルールをつくり、それを間取りの中にどう反映していくか、将来のリフォームの視点も取り入れて計画を練っていくということです。
薪ストーブを設置したい
薪ストーブのある暮らしにあこがれます。
留意するのはどんなところですか?
あこがれだけでは長続きはせず、使われなくなってしまうこともあります。
しっかりと家族のライフスタイルも確認しておきましょう。
子どもが小さいうちは補助暖房をつけておく
薪ストーブは、現代生活から姿を消しつつある火を室内に取り入れることで生活の広がりをつくり、ゆらめく炎は人の心を和ませてくれます。
さらに、家族の親密な雰囲気もつくり、コミュニケーションも生み出してくれます。また、土間などと組み合わせることで新しい間取りも考えられます。
薪ストーブは自然環境に優しくすばらしい暖房器具ですが、使い方次第では危険な事故を起こす場合があります。十分に注意することです。
イメージばかり先走りしてプラス面、マイナス面をしっかりと認識しておかないと、快適な薪ストーブライフはおくれないということです。