家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
「新築か中古」迷った時どう考える
新築住宅をつくる?それとも中古住宅を買う?
これまで「家が欲しいなぁ」と思うと、ほとんどの人は新築をイメージして建築するか、購入してきました。しかし、最近は中古住宅の数も増え、良い物件も多く出回るような傾向があります。家を求めるということは周囲環境や利便性など、その家族にとって様々な条件をクリアしなければなりません。
その中でも重要なことは全体予算と家を求める時の年齢です。なかには無理してローンを組み、途中で新築住宅を手放す人もいます。さらに中古住宅を気に入って購入したが、後に不具合が出て何回もリフォームを繰り返し、予想外の出費になるケースもあります。そのあたりの判断は極めて慎重に、時には専門家に相談して決めていくことも考えておかなくてはいけません。
まずは新築住宅と中古住宅に対する考え方を整理しておきましょう。
はじめの一歩
まず、はじめにあなたが重要視している項目を以下の中からいくつか選んでみて下さい。
・住みたいエリアが決まっている
・予算を抑えたい
・完成品を見たい
・間取りは自分で考えたい
・耐震性や省エネ性能が気になる
・長期保証かどうかが気になる
この中で間取りは自由に自分好みに考えたいという人は、間違いなく新築住宅になります。当然長期保証も付きます。住宅ローンも長く借りることが可能になるので、収入にあわせて借入を組むことができます。ただ、注意することは頭金が少なく借入金額が多いと子供の教育費が最大にかかる時期は返済がとても大変になります。したがって、その時期と自分の年齢を重ね合わせて無理のない返済計画にしておくことがとても重要なポイントになります。
一方住みたいエリアが決まっている、予算を抑えたいとなれば中古住宅になるでしょう。なかには住みたいエリアで良い物件を見つけたが、耐震性に不安があるという場合、もし予算に余裕があればリフォームすることで解決することができます。その他、水廻りなども不安があれば、専門家にお願いしてチェックしてもらうことです。
さらに完成品を見たいのであれば、分譲住宅を選択することです。注文住宅よりは安く、かつ、中古住宅よりは長期保証が担保されます。多少間取りで使い勝手の良くないところがあるかも知れませんが、一次取得層に購入しやすい金額を設定している会社が多いです。
ライフサイクルもあわせて考えていこう
2000年以降、住まいは新しい建築基準が次々と制定や改正されてきました。その結果、耐震性や省エネ性など住宅性能はとても良くなってきました。デザインの好みは別として、かなり信頼のできる住まいが多くつくられるようになってきたと思われます。
したがって、中古住宅であれば築10年ぐらいを目安に探すと良いでしょう。もちろん中には築20年、30年でもしっかりつくっている物件もありますが、構造躯体、設備機器など住まいは個別性があります。そのあたりは費用がかかっても必ず専門家を入れて判断してもらうことです。費用については、事前に専門家に問い合わせてみてください。
「新築・中古住宅」いずれにしても家を持つということは、長い間どこかで必ず修繕が発生します。マンションなどの集合住宅は毎月修繕積立金を納めますが、一戸建ては集合住宅よりも費用は多くかかります。できれば毎月少しずつ積立していくことをお勧めします。人間はいつどうなるか予測はつきません。「備えあれば憂いなし」ということです。自分のライフサイクルに準じて無理をせずローンや積立をし、家族が安心して暮らせるよう計画をきちんと立てていくことです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。