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家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
建物の外まわりで気をつけたいこと
生活は住まいの中だけでは成立しません。
誰もが家を建てるとなると、はじめに家の間取りを考えるでしょう。その間取りをより豊かに活かすために、様々な設備機器を設置する必要があります。その際、水道メーターや汚水桝の位置が、玄関のアプローチ等に配置されてしまい、図面では気づけなかった後悔が起きてしまうことが多々あります。
より良い間取りを考えることは重要なことではありますが、それに伴って外まわりの設備機器が、どのように配置されるのかも検討する必要があります。
まずは、どのような設備機器が設けられるのか整理してみましょう。
「地中」か「地上」、「壁際」か「壁」にあるもの
・地中か地上
地中にあるもの→給水管、汚水管、雑排水管、雨水管、ガス管、浄化槽
地上にあるもの→汚水桝、雨水桝、止水栓、量水器(水道メーター)、散水栓、境界杭
など
・壁際か壁
壁際→ガスメーター、給湯器、エコキュート、エアコン室外機、立水栓
壁 →電力計、給湯器、雨水竪樋、屋外コンセント、防犯ライト、ベントキャップ
(換気口)、電気・電話引込線
以上のように、外まわりには実に多くの設備機器や配管等が設置されることになります。さらに、メーター検針や配達等で、家族以外の出入りが生じる動線や、それらをメンテナンスするための作業スペースも確保することも考慮しなくてはなりません。また自動車や自転車の出入りなどでも、これらが邪魔にならないかを配慮する必要もあります。
外まわりで主に気をつけたいこと
ここではわかりやすくするために、Q&A形式で解説していきます。
Q1:室内外での高低差で気をつけることは?
A:室内と外との高低差は一般的に約60cm前後が多いです。仮に敷地内の水捌けが悪いことが理由で、床の高さを上げるとなると、玄関までの段数が増えたり、ウッドデッキ等を設けた際も階段が必要となります。
またエアコンの室外機の高さが60cm程度なので、浴室や脱衣室の窓の近くに配置してしまうと、泥棒や盗撮などの踏み台とされるリスクが高いため注意が必要です。
Q2:隣地との境界杭は確認していますか?
A:分譲地であれば問題ないのですが、トラブルになりやすいのが建替えの時です。建替え以前までは何も指摘されることがないため、何事もなく過ごせていても、いざ建替えをするとなった際に、隣家との境界ポイントが無く、境界のポイントが決められないケースがあります。これが2軒だけでなく、3軒に及ぶとなるとさらに大変です。この問題は直ぐに解決できる問題ではないので、時間をかけて協議する必要があります。
「建替えよう」と考えたら、まずは土地の測量図等を確認し、曖昧な境界等あれば、早めに隣家と相談することをおすすめします。
Q3:水道メーターの引込位置と口径は確認しましたか?
A:水道の引込は道路本管から引込まれますので、引込位置はある程度範囲が限定されます。仮にその位置が玄関アプローチあたりになると、タイル部分に水色の水道メーター蓋が見えるということになりますので、注意が必要です。
また、水道メーターの口径は、住宅では13mmと20mmが最も多いです。目安としては小家族であれば13mmで大丈夫です。基本料金も一番安く、同時使用は2ヶ所となります。同時使用が3ヶ所になるという家族構成であれば、20mmの口径にした方が安心です。
Q4:庭の水と防水コンセントは利用しやすいところに設けてありますか?
A:外で使う水は車の洗車、玄関アプローチの掃除、植栽の水やり等でしょう。また、立水栓か散水栓にするかも迷うところです。敷地やライフスタイルを考えて、判断してください。
防水コンセントは一般的に給湯器に使われますが、それ以外では屋外の照明や、近年だと将来的なEV車用の充電コンセントの必要性も考慮してもいいかもしれません。
Q5:設備機器の交換やメンテナンスをする際、十分な作業スペースはありますか?
A:外まわりにあるエコキュートや給湯器、エアコンの室外機等は、いずれ修理や交換をする時期がきます。その際の作業スペースも、予め配慮しておく必要があります。
よくあるケースとして、隣家との境界線上にブロックが3段ほど積まれていましたが、その隣家の主が変わり、建替え時にブロックの上に新規でフェンスを立ててしまう例です。足元の部分だけでなく、上半身の部分も狭くなると、室外機等の運搬が困難になります。
Q6:防犯対策はどうしていますか?
A:最近だと、いわゆる「闇バイト」と素人が強盗に手を染める犯罪が頻発しております。闇バイトや空き巣にしても、敷地の「死角」になるような窓から侵入される可能性が高いため、対策を講じる必要があります。具体的には面格子、シャッター、防犯フィルム、そして防犯灯などです。また、先述したように窓の「踏み台」とならないよう、窓と室外機の配置に注意しましょう。
Q7:外まわりで使う用具はどこに収納しますか?
A:外まわりで使う主な用具は、ホース、箒、スコップ、剪定バサミ、高圧洗浄機、デッキブラシ等があります。これらの用具を収納するスペースが必要となります。一般的には物置を設置したりしますが、外観とはあまりマッチしないので、玄関スペースに下駄箱と一緒に設けるか、あるいは階段の下を利用して屋外側に扉を設けて、外からアクセスするアイデアもあります。
Q8:電気の引込みや電話線はどこからきていますか?
A:敷地の状況にもよりますが、電気や電話の引込線が玄関近くに引込まれている住宅をよく見かけます。私としてはせっかくの外観が台無しな気がします。図面ができた段階で、電柱の位置と引込位置を確認し、可能な限り外観のデザインを損なわないような位置で引込むように、配慮してほしいです。これは意外と見落としがちなポイントです。
ワンポイントアドバイス ― カーポートは「建築物」
建物を建てるには、その敷地にどれほどの規模の建物がつくれるか、建築基準法で定められています。一般的に建ぺい率や容積率といったものです。
仮に建物と同時にカーポートも設置したいとなると、カーポートも建築物とみなされるため、建築面積、延床面積の算入対象となります。設置をする際は計画にも影響する場合もあるので、早い段階から設計者に要望を伝えるようにしましょう。
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佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。