家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
二世帯住宅をつくる場合の注意しておくポイント
二世帯住宅のよいところ
二世帯住宅は、親世帯が比較的便利なところに住んでいるのでそこに建てる、あるいは、多少郊外であっても広い土地を購入して建てる方法などが考えられます。
二世帯住宅の良いところは、何と言っても土地の有効活用です。子供の送り迎えや何か困ったときにはお互いが助け合うことができるのも二世帯同居のよさです。
一般にデメリットとしては、生活スタイルや価値観の違いがよく言われます。これらはお互いの共通ルールをつくり、その中でプライバシーがきちんと確保できるプランニングを考えておけば、それ程デメリットを考えなくてもよいのではないでしょうか。
間取りを考えるにあたって
まず、はじめに、玄関を1つにするか、または、2つにするかによって、駐車場・アプローチ・玄関の位置関係が変わるケースもあるので注意することです。
特に玄関が同じ方向にあればアプローチは共有できるのですが、左右それぞれに玄関2つを設けるとなると、敷地もそれなりに広く確保しなければなりません。
目安としては200㎡(約60坪)位です。仮に建ぺい率50%、容積率100%とすれば、1.2階とも100㎡(約30坪)となり、あわせて200㎡位は必要な面積になります。勿論1階に親世帯、2階に若夫婦と子ども2人を想定しています。
二世帯住宅で注意しておくこと
二世帯住宅で考えておかなければならないのが、一般の個人住宅とは違って、親子の家族形態が安定している時期が意外と短いということです。親は高齢になり、子どもたちは成長するといった具合に家族形態が大きく変化していきます。
その為、二世帯住宅は完成後の家族形態の変化に応じたリフォームのしやすさという視点も考慮して計画する必要があるのです。
特に給排水や電気配線メーター類などはそれぞれに分けパイプスペースを設けておくと、後々細かいトラブルにもならないでしょう。
また、新しい土地を探して二世帯住宅を考えている場合、できれば建築家と一緒に土地を見ることをお勧めします。
土地には様々な条件があり、例えば、厳しい北側斜線制限がある場合、意外と2階の居室の天井が低くなることも考えられますし、2階の採光は確保できても周囲環境によっては1階の居室は暗くて寒い部屋になってしまうこともあります。そのあたりも建築家のアドバイスを受けながら土地を探すと、仮に条件が悪くても、設計力でカバーできる土地もあります。
反対に、南側道路で日当たりがよいと思って購入した敷地にいざ間取りを考えてみると、玄関にスペースを取られてしまうもったいないケースも考えられます。そのような敷地の場合、カースペースも南側になるので、リビングやダイニングから無機質な車を見ながら生活をすることにもなります。
土地に掘り出し物はあるかと言えばそれは無くて、むしろその土地をどのように活用するかが大事と言えるのではないでしょうか。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。