家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
中古住宅を購入してリフォームするという選択
今後質の良い中古住宅が市場へ
日本人は新築信仰という言葉があるようにこれまで土地を開発し、分譲地や建売住宅を新築し販売してきました。その結果、18年に行われた総務省(住宅・土地調査)のデータによると住宅総数は6,241万戸でその13.6%にあたる849万戸が空き家となっています。今後の世帯数の推移をみても、2023年の5,419万世帯がピークで2040年には5,076万世帯になると予測されています。これらの数字は以前から予測されています。にもかかわらず新築が増え、空き家が市場に出回ってこないのは税制面で新築物件が優遇されたり、不動産取引が面倒だったり、質の良い中古住宅が少ないという理由がありました。
しかし、ここ2~3年の中古市場を調べてみると新しい流れを感じさせるデータが浮かび上がってきました。
2016年から18年まで首都圏マンション契約件数で3年連続中古マンションの契約件数が新築を上回ったのです。さらに2000年に施行された「品確法」いわゆる住宅の品質確保の促進等に関する法律を適用して建てた住宅が中古住宅として市場に流通してきたのです。
予算的な問題で新築をあきらめ中古住宅・マンションという人も増えていますが、一方では安心できる住まいが増えてきたともいえます。今回は新築に関する記事ではなく中古住宅にスポットをあて、中古住宅を購入し、リフォームして住むための注意点をアドバイスします。
中古住宅の寿命ってどのくらい
一般的によく聞かれるのが中古住宅の寿命は30年といわれます。ちなみに法定耐用年数は22年です。耐用年数とは不動産投資で使われる用語ですが法的に定められた「建物を使用できる期間」のことです。これは国の固定資産における減価償却費から言われています。つまり木造住宅の場合、22年間で徐々に価値が減っていき22年経過すると価値は0(ゼロ)です。
しかし、実際には築22年を超えても多くの人が問題なく住んでいます。中には住宅ローンの返済をしている人もいるかもしれません。実際のところ私は築50年を超えても問題ないと考えています。
大切なことは物理的耐用年数です。人間の身体で言えば骨格がしっかりしていれば姿勢正しくまっすぐ歩けるということです。
基礎にひびく割れはなく、土台、床組、小屋組などに腐朽はなく、建物全体に歪みや傾きが見られないことです。日本は湿度の多い国なので床下が白アリにやられていたり、浴室の床下が湿気で腐っていたということが多くありました。しかし近年の建物はべた基礎なので床下土間はコンクリートで仕上げますし、浴室はユニットバスであれば湿気がこもる心配もありません。
あとは壁内部の結露や雨漏りをチェックすればよいのです。
設備等の不具合や建具の調整などは交換ができますからそれ程心配しなくても良いのです。何と言っても基礎と骨組みがきちんとしていることが、長寿命の住まいにはとても重要なのです。
不安であれば住宅性能表示制度を活用する。あるいはホームインスペクション
住宅性能表示制度は新築ばかりでなく既存住宅にも適用できます。
「構造の安定に関すること」「劣化軽減に関すること」「温暖環境に関すること」「維持・管理更新の配慮に関すること」の4つが必須項目です。
これらの制度を活用することで、住宅の性能を簡単に比較することができ、さらに第三者による現場検査なので信頼できる数値で安心です。
あるいはホームインスペクション(建物状況調査)は、民間で建物の基礎や外壁の状況や雨漏りなど建物の劣化状況を、目視や計測などにより診断するものです。費用は戸建てで約6万円位です。
経済的耐用年数?も併せてチェックしておこう。
物理的耐用年数とあわせて経済的耐用年数もチェックしておくことです。中古住宅の寿命と購入する際の年齢と投資する予算、さらにはライフサイクルと照らし合わせて今後出費が予想されるコスト及びメンテナンス費用などを含めた経済的耐用年数です。
できれば、ホームドクター的な一級建築士をみつけ、プロだからこそできる適切なアドバイスや買い手のライフスタイルに寄り添ったきめ細かい情報を一緒になって考えてくれる人がいるととても心強いですね。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。