家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
住まいの換気
換気は快適な生活をつくる
新型コロナの対策として、手洗いや消毒の徹底、さらには「密閉・密集・密接」いわゆる三つの密を避けるよう国から提唱されています。なかでも、外出自粛などが続き自宅で過ごす時間が増加するに伴って部屋の「換気」を気にしている人が増えているようです。コロナ対策というより、もともと日本は高温多湿の気候・風土を持った国です。いかに湿気を外に流すかが設計のポイントでもありました。あらためて換気に関して解説していきましょう。
住宅の換気は「窓」と「給気口+換気扇」の2種類
建築基準法では居室の換気について①換気のための開口部の面積と②シックハウス対策の24時間換気システムが定められています。①と②を満たせば上手く換気ができるかといえばそうでもありません。風の通り道をつくってあげなければ空気は淀みます。当たり前ですがまずは風の入口・出口となる南北窓を設け、バランスの良い大きさにしてあげることです。
家全体を1つの大きな空間と捉え、緩やかに空気の循環が行われることが理想です。もし仮に、現在開き戸であれば引き戸にしたり、ドアの上に開閉のできる欄間を設けるなどして空気の流れをつくってあげることです。
24時間換気システムは、外気を居室の給気口から取り込み、トイレや浴室・洗面所などに設けた換気扇から排気して新鮮な空気環境を保っていこうとする考え方です。なかには、「寒い」「うるさい」「電気代がかかる」といって止めてしまうケースもあります。電気代は、24時間連続で運転してもおそらく月300円~500円位の範囲で済むはずです。また、最近は静音設計のモーターもありますので、うるさいと感じる人は換気扇を取り替えてみてはいかがでしょうか。
換気にはどんな種類があるの?
換気には様々な種類があります。まずは換気にはどんな方法があるのか確認しておきましょう。併せて換気に関する専門的な言葉も説明しておきます。
これまで換気の方法は工事業者にまかせていたかもしれません。しかし、これからは在宅での仕事も増え、新しい生活様式になってくる可能性もあります。自分のライフスタイルに合った換気方法を検討しておくことも大切です。
換気の方法としては、自然換気と機械換気があります。
自然換気は文字通り、風や温度差など自然現象による換気です。一方、機械換気は機械によって強制的に排気や給気を行うため確実な換気量が確保されます。
一般的な住まいは第3種の換気計画を導入されています。つまり、給気は機械に頼らず自然に給気させて、排気は機械(換気ファン)に頼る方法です。この第3種換気は比較的コストを抑えることが出来るため、最も普及しているのです。第2種換気は病院の手術室や精密機器工場などで採用され、一般的に住宅ではあまり採用されません。住宅に採用するのであれば第1種換気か第3種換気ということになります。第1種は若干コストがかかりますが、確実な換気量を確保できる良さがあります。
換気扇1台で給気も換気もおまかせ
給気口・排気口を個別に設ける必要がなく、1台で外気の取り入れと室内空気の排出を同時に実現できる換気扇があります。熱交換型の優れものの換気扇です。換気による熱ロスを回収し、取り入れた新鮮な空気を再び熱をのせて室内に返します。
冬、冷たい外気を予熱して給気するので冷たい空気が吹き出す不快感を防ぎます。1台7万~8万位しますが、熱ロスが少ないので省エネで冷暖房費の節約になります。
効率的に換気をするには
効率的な換気のためには、当たり前ですが2つの窓が対角線上にあることが大切です。しかし、プラン上上手く作れないことがあります。もし仮に現在住んでいる住まいが窓1か所あるいは窓も無いところであった時はどのように換気をするのがよいでしょうか。窓1か所の場合、窓のそばに扇風機を置いて外へ向けて風の流れをつくってあげる方法があります。また、窓が無い部屋の場合、廊下などの部屋の外に空気が流れるようにしてあげる方法が考えられます。いずれにしても換気は、窓を開けて風の道をつくる、24時間換気システムを正しく使う、そして、キッチン・浴室・トイレの換気扇等を上手く組み合わせて空気の流れをつくってあげることが基本になります。ちなみに、エアコンに換気機能があると勘違いしている人がいます。ほとんどのエアコンは室内の空気を循環させるだけで換気はできませんのでくれぐれも注意をして下さい。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。