家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
木造で大空間リビングをつくる
関心が高い広いリビングを求める傾向
ここ数年、間取りの変化を見るとシューズクロークや洗面所、リビングなどの空間を充実させたプランニングが多いように感じます。シューズクロークはアウトドアが盛んになり、手軽なキャンプやバーベキューの道具を収納できるスペースが求められるようになったことが一つの要因でしょう。洗面所は共働き世帯が増加していることもあり、家事の効率化が重要視されているからでしょう。さらにリビングは、コロナ禍の在宅ワークによるワークスペースの確保や、子どもとの共同作業など、家族と過ごす機会が多くなったからでしょう。実際に2021年リクルートが住宅の購入を検討している世帯を対象にした調査では、「広いリビングが欲しい」が最も多かった要望でした。その希望に沿うように、ハウスメーカーなどでも広いリビングなど大空間を意識した構造技術の開発に力を入れています。特に木造による大空間の実現です。
大空間リビングの魅力
一般的な木造住宅のリビングの広さは18畳前後です。大空間リビングは26~30畳くらいの広さなので約50㎡になります。広いリビングの魅力は何といってもライフスタイルの変化に柔軟に対応できること、開放感だけでなく家族が一体となれることです。子どもが幼い時は遊べるスペースとして、成長した後は夫婦の趣味に使うことも可能です。住宅は子どもがキッカケで家を建てることが多いですが、意外と同居している年数は短いものです。むしろ夫婦で過ごす時間の方が長いのです。広ければ友人を集めて食事会を催したり、イベントを企画したりと地域の人との関わりがつくれるスペースにもなるのです。そんな住宅を木造で、かつ大空間のリビングを設計しましたので、紹介したいと思います。
1階平面図
〈リビングダイニングの概要〉
・横最大スパン 5.46m
・縦の長さ 8.19m
・天井高 3.0~5.0m
断面図
大空間の構造(建方時)
大空間リビングをつくる際の注意点
大空間をつくるにあたって注意しなければならないことは、熱環境をどう計画するかです。特に真夏・真冬においての心地よさと、光熱費のバランスを検討しておく必要があります。大空間をつくるには、十分な明るさを確保するために大きな窓を設けます。そうなると、そこから熱の損失、或いは熱の侵入が多くなります。参考として、採用した項目を上げておきます。
〈採用及び工夫した項目〉
・床:栗無垢材+電気床暖房
・壁:断熱材(セルロースファイバー t=120mm)、室内側:石膏ボードt15
・窓:ペアガラス(外:アルミ、内:樹脂⇒ハイブリッド窓)+インナーサッシ+空気の流れをつくる窓の配置(地窓や高窓など)
・空調:床置き型エアコン×1台+壁掛け(壁面埋込)エアコン×1台=計2台
周辺環境や構造など検討する際は、建築家などと十分相談して進めていくと良いでしょう。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。