家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
人気間取りのトレンドを知る
変わらず人気、LDKのオープン一体型
家づくりは何といっても資金計画が大切ですが、さらに大切なのが誰にお願いしてどういう家をつくるかということです。特に間取りを決めていく段階では最近の人気間取り傾向や、どんな最新設備があるのか気になるものです。そこで最近の人気な間取りの傾向を調べてみました。すると、家事を快適にする間取りや、収納にこだわった間取りが採用されていることがわかりました。特にキッチンの使い勝手やコミュニケーションの取りやすさが求められているようです。この傾向はここ数十年変わることなく支持されています。代表例としてはオープンスタイルのダイニングキッチンです。ダイニングキッチンにさらにリビングを加えることで、より大きな空間を確保し一体感をつくっています。中にはリビング部分を吹抜けにして、さらに広がりを感じさせるダイナミックな空間にデザインする家もあります。以前であれば吹抜けは暖かい空気が上昇するので、寒いといったイメージがありました。しかし、近年は省エネの観点から断熱性も考慮されるようになり、断熱性能の高いサッシや床暖房などを採り入れるなどして、室内の温熱環境もきちんと計画することが可能となったので、心配する必要はありません。
リビングを吹抜けとした事例
パントリーと室内物干しスペースが人気
最近は共働き世帯が多くなり、少しでも家事をラクにしたいということで、多くの間取りにパントリーと室内物干しスペース、さらには大きめの収納スペースを設けています。パントリーはまとめ買いに対応できますし、キッチン周辺の小物も一時的にパントリーに置けるのでキッチンをきれいに保てる点が人気です。また、日本は雨が多い国にも関わらず、これまで室内物干しスペースのない間取りで、雨の日は仕方なくリビングのカーテンレールに掛けたり、廊下へ退避するなどその役割を果たしていました。しかし、廊下や縁側スペースも無い間取りでは、はじめから物干しスペースを考えておく必要があります。家事の中でも洗濯動線をどう考えておくかはとても重要なポイントで、1階に干すのか2階に干すのかによって家事ラクはもちろん、プランニングも大きく変わりますので、しっかりとチェックしておきましょう。
キッチンと洗面室の関係、玄関収納も関心の高いテーマ
「キッチンで汚れたタオルや布巾をすぐに洗濯機に入れたい」或いは「子供だけで入浴している時、キッチンと浴室が近ければすぐにお風呂の様子も見に行ける」といった理由でキッチンと浴室が直結の間取りも人気があり関心が高いテーマです。
次に収納です。特に玄関における収納は関心が高いです。家族でアウトドア、さらには靴や帽子などで外出時におしゃれなどを楽しむ人が多くなったのでしょうか。玄関に大型収納を設け、さらには収納内に手洗い器をつけて、子どもに手洗いの習慣を身につけさせるためのプランも見受けられます。
あれば嬉しい窓のあるバスルームとウッドデッキ
かつて浴室はほとんどが1階にありました。しかしユニットバスが採用されるようになってからは、防水性が高まり2階にも浴室が設置されるようになりました。ユニットバスというと、無機質な内装で窓がなく閉鎖的なイメージがありましたが、近年のユニットバスは内装も様々で、当然窓も設けることも出来ます。大きさも1坪、1.25坪くらいの広さを目安に選ぶ傾向があります。
リビングの延長としてウッドデッキを設けるアイデアがあります。視覚的に広がりを感じさせ、天気の良い季節は外での団らんを可能にしてくれます。デッキの材料はホンモノの木でも良いのですが、腐るのが気になる人は樹脂のデッキなどもあります。ただ夏の暑い時は熱が蓄熱されるので、素足で歩くには熱いです。
佐川からのアドバイス
最近の間取りでは、家族の団らんやコミュニケーションの取りやすさがより重視される傾向にあります。特に家族をつなぐ場であり、みんなが集まるダイニングやキッチンです。この傾向は当面、変化することはないでしょう。家をつくる目的は、やはり家族の団らんをどうつくるかです。気持ちの良い光が入ってくる、そして風も。これら全部を含めてストレスを感じさせない心地良い空間をつくることは、最終的に家族の団らんをつくることに繋がっているのです。改めて「団らん」を中心として間取りを考えてみてください。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。