家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
土地はこうして探しなさい Vol.1
土地を用意する3つの方法
一戸建てを建てるには土地がなければなりません。土地を用意する方法としては「購入する」「借りる」「譲り受ける」の3つがあります。
一般的には購入する方が多いのですが注意すべきは「建築条件付き」であるかどうかです。
建築条件付きの土地は、一定期間内に売主または売主の指定業者と建物を建築する請負契約を締結することを売買の条件にしている土地のことで、工法や仕様等に制約が出て来ます。
自由に自分の想い通りに建てたいとこだわりがあるのであれば、建築条件の無い土地を探す必要があります。売地には、更地だけでなく、古家付きの土地もあります。その場合、買主は購入した後に古家を解体して、一戸建てを建てる方法もあります。解体費用はかかりますが周辺環境は既に形成されていることが多く、日当たりやプライバシーに配慮しながらプランニングすることができます。
土地を借りて建てる方には親等の土地(自宅敷地の一部など)を無償で借りる「使用貸借」や地主に毎月地代を支払って、土地を賃借する「借地権」があります。
「借地権」には「普通借地権」のほかに「定期借地権」があります。これは一定期間に限って土地を借りるもので、一般定期借地権の契約期間は50年以上です。期限が来たら更地にして返しますが、当初必要な費用が購入の場合に比べ少なく済むメリットがあります。
土地を譲り受けるケースの多くは、両親からの贈与です。通常財産を譲り受けると贈与税がかかります。家族それぞれに様々な事情があると思いますので、贈与を行う際は専門家に相談して自分達の家族にあった贈与の方法を検討するとよいでしょう。
土地探しに使う交通手段は
土地の見学に行く際、みなさんは交通手段として何を利用しますか。一日のうち2~3ヶ所まわるため車を利用する人が多いようです。しかし、もし気に入った土地があったのなら次は普段利用することになる交通機関を使ってみると良いでしょう。
例えば電車であれば朝夕の電車の本数、終電の時間のチェックをすることです。さらに駅前の掲示板などにはその町のイベントや公共施設などの案内が出ているはずです。その様なところからも街の雰囲気を読み取って下さい。
現地に行くまでに車の交通量、歩道の状況、街灯の有無などをチェックします。もしバスの利用が必要な立地であれば、朝の渋滞が気になりますので平日に一度乗って確かめておくと良いでしょう。勿論学校に通う子供がいればなおさら道路状況などが気になるので要チェックです。
現地についたら
一般的には、不動産の情報が記載されている販売図面を不動産会社から入手して現地を確認します。
販売図面がないときに行うことは方位磁針で東西南北を確認することです。敷地が接している道路の方位によって玄関やカーポートの位置が決まってくるからです。
次に道路の幅、および間口等も測って下さい。基本的にメジャーで測りますが、もし忘れた場合は歩幅で歩数を確認して下さい。後で自分の一歩の歩幅を測ることである程度の概算ができます。又、隣地側がブロック塀の場合はブロックの数を数えることで長さを予測することもできます。
土地探しは冬の日当たりに注意
倍以上違う太陽高度
土地を選ぶ際、多くの人が考えることは日当たりの良さです。相場より価格が安くても一日中日の差さないような土地は人気がありません。
ただ日当たりの良さを気にする人でも意外に見落としているのが季節による太陽高度の違いです。首都圏では夏至(6月22日頃)の時には78.4度ですが、冬至(12月22日頃)では31.6度と、約2分の1以下の低さになります。そのため周囲の建物の状況によっては、夏は十分日照がとれたとしても、冬は日が差し込まないのです。
土地探しは冬がベストシーズン?
季節により太陽高度が違うため、夏と冬では日当たりの違いがあるのは分かっていても、実際に現地を見に行った時にどれだけイメージできるかはやや難しいものがあります。土地探しは日当たりの悪い冬にするほうが少なくとも住んでみて実際の日当たり日照が大きく違ったということがなく望ましいのかもしれません。
しかし、気に入った土地の日当たりが多少悪くてもそのことだけで諦める必要はありません。
例えば日当たりを考慮してリビング・ダイニングを2階にしたり、あるいはトップライトを設けたりと、いろいろ対応策は考えられます。敷地の条件が悪ければ設計力のある建築家にお願いすることです。なかには敷地の条件が悪い土地を多少安く購入し、その分アイデアあふれるおもしろい住まいを造られた例はたくさんあります。
道路は4m以上の幅員が必要です。
建物は建築基準法によって4m以上の幅員のある道路に2m以上接している土地でなければ建てることはできないとされています。そして注意しなければならないのが「2項道路」と呼ばれる道路です。
これは建築基準法第42条第2項に規定されていることから名付けられた道路で、道路の幅が4m(6m)未満であっても、道路の中心線から2m(3m)分だけ境界線を敷地内に後退(セットバック)させれば建物が建てられるのです。そのかわりセットバック部分は敷地面積から除外して建ぺい率や容積率の計算をしなければなりません。
又、近年は下図のような旗竿敷地も多く見られます。旗竿敷地に建物を建てる際には地域ごとに条例などがありますので十分注意して下さい。
建物は道路や敷地条件によって制限を受けたり、大きさや形に影響を受けることがあります。できれば信頼できる一級建築士と一緒に土地を見に行きアドバイスを受けることも考えてみましょう。
次回は地盤のチェックや都市計画法の用途地域について解説します。どうぞ楽しみにお待ちください。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。