家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
建替えそれともリフォーム どっちを選ぶ
家族が求める住まいの形を明確に
建替えかリフォームかの判断は建物の見た目だけではわかりづらいところがあります。
仮に築年数が経っていても建物の構造に問題がなければ建替えをする必要はないでしょう。
住まいは勿論、構造をもっとも重要視しなければなりませんが使い勝手が悪く、新しいライフスタイルに対応できないといった場合には建替えも検討しなければなりません。
一方、単に浴室だけ、キッチンスペースだけのリフォームであればそれは改修工事ですみます。しかしリフォームと言ってもとても工事範囲は広く、実際に工事を始めてから追加工事が発生し総工事費が膨らむ場合もあります。
結局、建替えに比べて総工事費は安くても満足しなかった点なども考慮すると結果的には割高になってしまうこともあります。
建替えか、それともリフォームか、それぞれのメリット・デメリットを理解し、これから家族が求める住まいの形を明確にしていくことから始めましょう。
建替え・リフォームのメリット・デメリットは
それぞれのメリット・デメリットは次のようにまとめることができます。
◎建替えのメリット
・家族の新しいライフスタイルに対応できる。
・最新の耐震性、耐久性を求めることができる。
・省エネ、創エネなど多様な住宅性能を備えることができる。
◎建替えのデメリット
・新しい規制で建て替え前の建物と同規模の建物が新築できない場合がある。
・建物解体費用と建て替え費用を含めると総工事費が高額となる。
・仮住まいが必要となり引っ越しが2回必要となる。
◎リフォームのメリット
・工期は比較的短い
・住みながら改修工事ができる。
・仮住まいの費用や引っ越しの費用など余計なコストがかからない。
・限定した場所だけを工事できるので、改修工事の目的がはっきりしている。
◎リフォームのデメリット
・間取りの自由度は限られる。
・いざ工事を始めると追加工事が発生して総工事費が膨らむことがある。
・限定的にみると総工事費は割高になる。
建替え・リフォームの費用に対する考え方と心構え
建替えはまったく新しい家を建てるので自由に思い通りの住まいが実現します。当然総工事費で考えればリフォームより高くなります。しかしながら特定のスペースで見ると工事費は安くなります。例えば、キッチンなどのリフォームは、建て替えに比べ限定的に見ると一般には割高な工事費を支払っているのです。
住宅ローンやリフォームローンを利用する場合、ローンの返済中に、教育費の負担が増えた場合でも無理なく返済ができるか検討しておきたいものです。又、建物は10年20年と使い続けていけば当然メンテナンスが必要になってきます。マンションなどは修繕積立金を毎月積み立てますが、一戸建ての場合はほとんどの人が積み立てていないでしょう。
できれば計画的に修繕費用を準備しておくことです。
目的をはっきりさせよう
建替え・リフォームを比較した場合、総工事費だけの面をみれば当然リフォームです。
しかしそのリフォームでどれだけ満足が得られるか、又あと何年建物の寿命があるかなど迷うところです。それは自分の年齢も考慮しなくてはならないからです。特にリフォームは新築と違って建物の骨格や設備の状態など素人での判断は難しいところがあります。
もし仮に中古物件を購入してリフォームを考えているならば、第三者の専門家に費用を払ってでも確認してもらうことです。
又新築であれば次の世代に継承できる様な間取り計画を考える。あるいは二世帯住宅、賃貸併用住宅などにも将来リフォームできる等、新しい価値観をもって長い視点で住まいづくりを考えておくことも一案です。
いずれにしても住まいは家族、それぞれに置かれた状況が違います。住まいの目的をはっきりさせ優先順位を決め、経験豊かな設計者とのコミュニケーションを積み重ねながら進めていくことで解決していくことです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。