家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
駐車スペース設置で注意すべきポイント
後で駐車スペースの位置変更は無理なので・・・
間取りを考える際、はじめに日当たりの良い位置や玄関と駐車スペースの関係、そして階段の位置などをイメージしながらゾーニング※計画をします。これらに共通している点は、外から内へ(道路と玄関)内から内へ(1階と2階をつなぐ)と行動が明らかに変わる節目なところです。つまり、行動が明らかに変わる空間をどのように繋ぐかが間取りを考える際にとても重要なポイントなのです。
一般に、間取りの内部は建物の構造的な安全が確保されればどうにでもできます。万一気に入らなければ壊してリフォームすることも可能です。しかし、どうにもならないのが駐車スペースと敷地に対する建物の配置です。そう簡単に作り変えることはできません。したがって、この辺りの配置計画は、道路の幅や電柱の有無、駐車スペースの間口の広さ、駐車スペースから玄関あるいは勝手口といった具合に様々なことを考えてプランニングをすることが大切です。なかには、敷地が狭かったので駐車スペースの間口の広さ(幅)を2.5mにしたのですが、隣家との境に丁度電柱が立っていてそれが邪魔して何回もハンドルを切って車を入れなくてはならないため、大変困ったという例もあります。
道路幅と駐車スペースの関係も含めて見落としがちなポイントをチェックしてみましょう。
※ゾーニング:空間を用途に応じて分けることで、大きくはパブリックゾーン、プライベートゾーン、サービスゾーンの3種類になります。
駐車スペースは延べ床面積に入る?
駐車スペースは、屋根なしの青空駐車場であれば何も問題ありません。しかし、ガレージのような柱と屋根があると建築の床面積に算入されますので、建ぺい率や容積率のチェックが必要です。ただ、ガレージがその敷地に建てられた建物の延べ床面積(1階・2階などの全ての床面積)の5分の1を超えた時は、超えた部分の面積が延べ床面積に算入されますので注意して下さい。
間口を決める
駐車スペースには、道路からまっすぐ入るという方よりも、曲がりながら車のハンドルを切って出入りする方が多い感じがします。敷地状況にもよりますが道路幅と駐車スペースの間口の広さ(幅)は車の回転半径を考えて決めることです。
北側道路・南側道路と駐車スペースの考え方
◦北側道路
北側道路は、意外にも南側道路よりも駐車スペースは確保しやすいです。玄関を北側に配置すれば駐車スペースからの導線もスムーズです。玄関はそれほど日当たりを必要としないので、北側にし、その分南側に人が集まれるスペースを確保することができます。また、用途地域にもよりますが北側には北側斜線という厳しい斜線制限があります。駐車スペースを北側に配置することでその分建物の高さを高くすることができるメリットもあります。
◦南側道路
南側道路であれば、敷地全体は日当たりもよく、敷地としてはとても良いです。しかし、南側に駐車スペースや玄関をプランニングすると家族が集まるリビングやダイニングのスペースが南側に広く確保できないことがあります。また、リビングから無機質な車を見ながら団欒するといったことも考えられます。できれば、緑を見ながらリラックスしたいものです。敷地の形状にもよりますが南側道路の場合はこの辺りをチェックすることがポイントです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。