家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
土地はこうして探しなさい Vol.2
何といっても地盤のチェック
建物の引渡しを受け、住み始めて2~3年後に壁にひびが入った、建具の具合が悪くなったのでどう対処すればよいですかという相談を受ける事がたまにあります。
これらの不具合は目に見えて確認できるものです。これが単にそこだけの問題であればよいのですが一番やっかいなのが「不同沈下」です。「不同沈下」とは、地盤が悪いのに十分な対策がとられていなかったために建物が不均等に沈む現象です。
売主の承諾を得られない場合、購入前に調査する訳にもいきませんので、宅地の前はどんな場所だったのか、近隣の人に聞いたり、あるいは、役所のハザードマップ等で調べることはできます。
ただ仮に安定しない地盤が予測されても、地盤調査を行いそのデータに基づき地盤改良をすれば安心して住むことができます。
盛土には十分な注意が必要です
地盤が悪い例として盛土が代表例です。盛土とは低い地盤や斜面に土砂を盛り上げて高くし平坦な地表を作ることです。反対が切土でこれは土地を削って造成する方法です。一般的に切土は土地を削るので地盤は安定していると言われます。
ただ斜面の造成地であると斜面をひな壇上にするためコンクリートの擁壁(ようへき)を設けます。擁壁をつくる際にかなりの土をいったん運び出し工事が終了してから再び土を入れます。この盛土部分がやはり沈む可能性があるので十分に気をつけなければなりません。
地盤調査は当たり前に行われると誤解される方が多くいらっしゃいますが、地盤調査は、義務ではないのです。
平成12年(2000年)の改正建築基準法施行令で地耐力に応じた仕様の基礎を選定する義務が設計者に課せられた為、地耐力(建物が建つ場所の建物を支える力)がどのくらいあるかを知らなければ正しい設計ができないため結果的に地盤調査をしないという事はないと考えるのが正解なのです。
地盤調査はこんな方法で行います。
一般的に一戸建ての地盤調査には「スウェーデン式サウンディング試験」(SWS)と呼ばれる方法のものが多く用いられています。
先端がキリ状になっているスクリューポイントを取り付けたロッドに荷重をかけて、地面にねじ込み25cmねじ込むのに何回転させたかを測定するのです。調査可能な深さは10mまでです。測定箇所は建築予定の建物の四隅と中央の5ヶ所なので仮に建て替えなどで敷地に既存建物がある場合は建物を解体した後でなければ調査をすることはできません。
地盤調査報告書が届いたら
地盤調査報告書にはロッドを25㎝貫入させるためにどれだけの重さを載せたかや回転数、推定土質などが記入されています。専門的に難しいところもあるので設計担当者によく説明を受けることです。地盤調査報告書に記載されているN値という言葉はもっとも重要なのでこれだけはぜひ理解しておいて下さい。
N値とは地盤の硬さを表す地耐力を示す数値です。木造住宅を建てるのに必要なN値は3.0以上とされています。
地盤調査報告書には換算N値という項目があります。5か所の測定箇所がすべて3.0以上になっているか確かめて下さい。
地耐力不足の場合はどうする
地盤調査の結果、地盤改良が必要なことがあります。
地盤改良の主な方法としては次の三つの方法があります。
<表層改良>
表層地盤を1m程掘り起こし、セメント系粉体固化剤に混ぜて軟弱地盤層の強度をあげます。
<柱状改良>
地盤に直径40~60cmの穴を掘りその中に固化剤を入れて柱状体をつくり土との摩擦抵抗で建物を支えます。大型重機の搬入が必要となり、狭小地には向きません。
<鋼管杭>
柱状改良工法が難しい土地に鋼製の杭を打ち込む工法で、狭小な現場でも工事は可能です。
家の重さは70トンです
丈夫な家づくりは地盤のチェックから始めることですが、例えば約40坪(延床面積)の住宅であれば家財道具などを含めて約70トンの重さになります。一般的にはこの重さに耐える基礎設計をしているということです。
資料やデータなどわかりづらいところもありますが、地盤調査の結果、地盤、基礎などは正しい対策をしないと重大な欠陥住宅になる場合があります。
とても気に入って土地を購入し、地盤調査の結果たとえ地盤に不具合があったとしても悲観することはありません。設計者とよく相談し、正しい対策をすれば何も心配する必要はありません。
次回は「依頼先はこうして選びなさい」です。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。