家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
間取りよし、次はインテリア計画
好きなインテリア写真を集める
住まいの心地よさをつくる要素は様々あります。なかでもインテリアは直接肌に触れたり、色彩や照明など、心理的にも影響を与えます。仮に満足な間取りができたとしても、統一感のないインテリアであれば、間取りも活きてきません。
インテリアの雑誌などを見ると、必ずと言っていいほど「自分のスタイルを見つけることが大切」とか、「自分ライフスタイルを探そう」という文言が多く見受けられます。しかし、急にそう言われても、なかなかイメージしにくいものです。なので、始めにまず自分の好きなインテリア写真などを見つけることから取り組んでみてはいかがでしょうか。見つけたら、その写真を分類することで、なんとなく方向性が見えてくるかもしれません。では、どのように分類していけば良いのか、考えてみましょう。
インテリア写真を分類してみる
インテリア雑誌や写真集、パンフレット、カタログなど、自分が「素敵だな」と感じたものをスクラップして洗い出してください。次に、そのスクラップを次の軸の上においてみて下さい。軸は「Cool(硬質な)-Warm(温かな)」と「Light(軽やかな)-Heavy(重厚な)」の2軸です。
分類分けができたら、スクラップがどこのゾーンに一番多く集まったか確認しましょう。そこが自分の好きなイメージとなります。
インテリアのイメージは6パターン
自分の好きなイメージが少し明確になったら、次はどのパターンに分類されるかを決めましょう。
◎ナチュラル
ナチュラルスタイルには自然素材が欠かせません。木目の美しさを活かした家具、温もりのあるファブリック、そして照明も柔らかなフォルムが特徴です。
◎カジュアル
気取らず、普段着のままなど、その言葉の持つイメージを大切にします。明るい木目の家具をメインにしながら、鮮やかな色彩をワンポイントで活かす演出がスタンダードです。
◎モダン
シンプルで直線的なフォルムが印象的なモダンインテリアになります。スチールやガラス素材を使った家具は、モノトーンでクールなイメージなものを中心に構成されます。ファブリックの色味も無彩色が求められる特徴があります。
◎エレガント
優雅で上品、女性的なインテリアです。優しく、淡いグレイッシュなブルー、ローズ、ラベンダーカラーなどの色調に、ゴールドやホワイトを加えて「優しさ」を強調しています。
◎ダンディ
男性的なこだわりを秘めたインテリアです。決して派手ではないものの、本物志向の家具や素材を使います。テーマカラーはダークグリーンやゴールド、ブラウンなどです。小物などにもこだわりが見受けられます。
◎クラシック
一般的にはヨーロッパ様式のインテリアを指しています。ブラウンやベージュなど、落ち着いた色調の壁紙や、ファブリックが濃い色合いの家具が中心になります。
自分の選んだスクラップが、これらのパターンのどこに分類されるかを決めます。そして、分類された箇所の写真など、多くの参考事例を見ることで、より自分の好きなインテリアが明確になっていくのです。
インテリアをつくる4つの要素も考えてみる
分類して、自分の好きなスタイルが見つかれば、インテリア素材や色彩などもより選択しやすくなります。さらに深掘りをしたい人は、次の4つを留意するとより自分好みのインテリアになっていきます。
① 空間とシルエット
空間のスケールを掴み、どの位の大きさの家具を置くのか、家具のシルエット(輪郭)を意識してみる。直線か曲線か、このシルエットは空間のテイストを決めるポイントになります。
円形のスペースに合わせたリビング
② カラーとパターン
色彩やパターン(模様)も空間の印象を決める上ではとても重要な要素です。仮に大きな面積を占める部分であれば、ニュートラルカラー(無彩色)をベースにし、他はアクセントになる様にパターンを散らすと良いでしょう。
③ リズムとバランス
家具や小物の配置にリズムを与えることで部屋全体、空間全体がイキイキとした印象になります。例えば家具はシンメトリー、小物は連続して複数並べる方法です。ちょっとした遊び心も大切です。
家具と小物で空間に遊び心とリズムを与える
④ マテリアルと質感
少し存在感の強いもの、質感の異なるものを空間に取り入れることは、やや「外す」感があります。しかし、時には見慣れた空間に新しい表情をつくってくれることもあります。
水屋箪笥を置くことで統一された空間に異なった表情を与えてくれます
佐川からのアドバイス
「自分は感性がないから、わからない」と思われている人に一言。部屋に入った時に、誰もが自然と目の行く場所が出来ればインテリアは大成功です。つまりフォーカルポイントをつくることです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。