家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
快適な家をつくりたい、誰に依頼する?
快適と標準はどう違うの
そもそも快適な家とは一体どういうことなのでしょうか。標準とはどう違うのでしょうか?
仮に標準的な家づくりとなれば広く合意されたガイドラインをもってつくるということになります。
例えば日本の住まいの基本寸法は、尺貫法を用いての91cmですから、182cm、273cm、364cmといった寸法を基本につくってきました。
したがってトイレや階段の幅は、柱間寸法の91cmにしてきました。
壁の厚さなどを引くと、実際の有効内法寸法は80cm弱になります。
この寸法では快適とは言えません。
トイレ内に手洗い器などつけたい場合、あるいは2階にベッドを搬入したいとなると少々狭い感じがするからです。
できれば柱間寸法を100cm、あるいは120cmにするとスペースに余裕が生まれ快適な空間が作れそうです。
つまり快適とは「体に負担をかけないで、空間が行為や動作に沿っている」ことと言えます。
それでは標準的な家づくりではなく快適な家づくりはどのようにして実現していけばよいのでしょうか。
誰にお願いするかで家づくりは決まります。
快適な家づくりを成功させる最大のカギは誰にお願いをするのかです。
つまりパートナー探しです。
一般にハウスメーカー、工務店、建築家の3つの方法があります。それぞれにメリットデメリットがあります。
ハウスメーカーは1年に何万棟という数多くの住まいをつくらなければ会社を維持させることはできませんので、標準的な家づくりをもっとも得意とするところです。
工務店は施工を主軸としますので、オーソドックスな形で施工性の良い建材を選びがちになります。工務店も標準的な家づくりになります。
最後に建築家に依頼した場合はどうでしょう。
そもそも設計料というソフトに対する対価をいただくわけですから、いかに快適な住まいをつくるかが問われます。
標準的な家づくりでは自分のアイデンティティが無くなるわけですから、ある意味快適な家づくりと闘っていると言っても良いでしょう。
設計料をどう考える
建築家に依頼した場合、当然設計費用が発生します。工事金額の10~12%位が一般的になります。
この費用はどう考えたら良いのでしょうか。
ハウスメーカーは住宅展示場などをもって営業展開しているので、展示場の維持費にかなりの費用を使っています。
したがってそれなりの高い利益率を上げないと運営していくことはできません。その費用はすべて見積りに計上されているということです。
工務店など設計・施工を同じ会社で行う場合、第三者のチェックが入りづらいです。
難しい収まりはやめてシステムや標準化された安全な収まりで施工をするので、均質な仕上がりになりがちです。
建築家は、設計はもちろん見積り内容のチェックから、工事が始まれば施主に代わって現場をチェックしていきます。
仮に適正な施工がされていない場合には、工事のやり直しや是正を求める事もします。
そして最終的には工事監理完了報告書を作成して施主に報告するのです。
家づくりはよく、施主にとって一生に一回の大仕事とも言われます。つまり財産を作っていくという事です。
その財産をつくっていくパートナーとして建築家に支払う設計費用を高いと考えるか安いと考えるかは個人の判断によりますが、仕事の役割を考えるととても重要であることは確かです。
建築家はどうして見つける
自分の知人、友人にいればいいのですが、ほとんどの人はいないと思います。
そうであればインターネットや雑誌、書籍などで探し、その人の考え方や人となりを調べることです。
インターネットが普及してメールでの問い合わせも多くなっています。
施主と建築家の出会いはお見合いみたいなもので、家が完成してからもずっと関係は続いていきます。
快適な家づくりをするなら相性の良い建築家と仕事をすることです。
また、「建築家」=「一級建築士」ではありません。
違いは高い倫理観を持ち合わせ哲学があるかどうかが分かれ目なのです。
建築家に関しての用語解説
・建築家とは
建物または計画する建築技術に熟練し、それらを自らの職能としている専門家
※法的に資格が付与された建築士とは概念が異なります。
・プランニングとは
計画や企画を立案すること
・基本設計図とは
実施設計図を仕上げる前に必要な基本の設計を示す図面(配置図、平面図、立面図、断面図、仕上表、その他必要に応じて検討する図面などです。)
・実施設計図とは
建物を実際に建設するための設計を示す図面。
一般的には工事契約に添付されるものをいいます。
・建築家の報酬
報酬に対する算出方法には決まった基準はありません。一般的に使われている算出方法は次の3つです。
1.工事金額の総額に一定のパーセントを掛ける料率方式
2.国のガイドライン、国土交通省告示第15号による方式
3.工事面積に一定の金額を掛ける算出方式
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。