家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
自分らしい間取りをつくる17のアイデア
注文住宅だからこそ特別な空間をつくる
誰もが自分の家を建てたいという憧れはあります。しかし、いざ建てるとなると「キッチンはここ」「リビングはここ」「リビングは日当たりよく」というように部屋を基点に考え、これらの部屋はそこでどんな行為をするかはおおよそ決まっています。こうした決まった部屋はブロックのように組み合わされていくので、どうしても固い空間になってしまいがちでもあります。
そこで、注文住宅だからこそ叶えられる自分らしい暮らしのイメージを考えてみてはいかがでしょうか?
自分らしい暮らしのイメージと言ってもなかなか難しいものですが、その手がかりとなる基本的なアイデアを紹介します。
■リビングでのアイデア
①リビング階段
リビングの中に階段を設けて、必ずリビングを通ってから2階の個室に行く動線の考え方です。顔を合わせるきっかけとなるので、コミュニケーションがとりやすいプランです。
②勾配天井
傾斜した屋根の形状をそのまま空間にも活かすことで、天井が高くなり空間に広がりをつくることができます。2階にリビング・ダイニング・キッチンをプランニングした時に考えられます。
③吹抜け
タテ空間の広がりが生まれ、部屋面積以上の広さを感じることができます。隣家が近くても、上部からの採光を確保することができ明るいリビングをつくることも可能です。ただし、熱環境を配慮することが重要です。
④アウトドアリビング
リビングからバルコニーやテラスデッキなど段差を無くし、ひと続きにすることで内と外の繋がりが一体的になり、広がりが生まれます。季節の良い時には外で食事や読書もでき、ちょっとした家族での非日常も味わうこともできます。
■キッチンでのアイデア
⑤ダイニング一体型キッチン
キッチンから一直線につながるダイニングテーブル一体型は配膳や後片付けがラクです。さらにダイニングスペースがコンパクトになるため、リビングを広く使うことができます。ダイニングテーブルの高さに合わせて、キッチンの床の高さを下げる必要があります。
⑥キッチン隣接リビング
キッチン側に立つ人とリビング・ダイニング側に座る人の目線の高さを合いやすくするためにキッチン側の床の高さを変えます。特に朝の忙しい時など、目線が合うことでコミュニケーションがとりやすくなります。
⑦家事シェアキッチン
作業スペースをアイランド型に配置するので、キッチンをぐるりと回遊できます。キッチンを囲んで家族が参加しやすい動線が生まれるので、家族全員が家事に関わりをもてます。
⑧キッチン+家事スペース
キッチン横に何でも使える家事スペースを設けておくと、家事をしながらキッチン作業もできるので、効率も上がり動線的にもとてもラクです。
⑨キッチン+パントリー
特に共働きの世帯は週末に買い物をすることが多くなるので、食材や調味料をストックしておくのに便利です。プレートやコーヒーマシンなど調理器具などをまとめて収納するのにも重宝します。
■その他の空間でのアイデア
⑩ランドリースペース
家事動線は洗濯動線ともいえます。雨の日に干せるスペースは意外と設けていないものです。スペースが取れなければ巾広の廊下、サンルーム付きのベランダも考えてみて下さい。その際、コンセントを一つ付けておくと何かと便利です。
⑪玄関土間スペース
玄関や階段、廊下はできるだけ小さくして、リビングを広くしようと考えます。しかしリビングとの繋がりをもたせた玄関、土間は建具などを工夫することで広々とした空間にすることも可能です。
⑫大きなウォークインクローゼット
小さいウォークインクローゼットではなく寝室などにまとめてしまえる大容量のウォークインクローゼットを設けると寝室はスッキリします。クローゼット内はオープンな棚にすることで、洋服を見つけやすくもなります。湿気対策としてコンセントをつけておくことをおすすめします。
■こだわりスペースアイデア
⑬小さな中庭をつくる
敷地は30坪以下でも中庭はつくれます。中庭を設けることで、空間に「抜け感」ができ、目線を遠くまでとばせるので、広く感じさせてくれるのです。
⑭趣味の部屋
空間には見せ場も重要ですが、逃げ場や隠れ場も大切です。自分の時間を楽しむ趣味の部屋をもつことで、活力も生まれてきます。
⑮リラクゼーションルーム
洗面室ではなくもう少し広いスペースを確保し、身体のケアを図り健康増進につなげます。
⑯音楽ルーム
周囲に気兼ねなく音を出せるよう防音施工をし、あわせて空調計画も考えておくことです。
⑰小さな神棚をつくる
家族の祈るものとして、神棚を設け家族の安全と絆をつくるアイデアもあります。家族の心を合わせる場をつくることで、絆が生まれます。家族関係が希薄になりつつある社会でこういった工夫もあらためて考えてみてはいかがでしょう。
アドバイス
住まいは部屋という名詞ではなくコトという動詞から考えることで、アイデアや家族がどんな暮らしを求めているかがより明快になることもあります。
例えば「ふんわりした気持ち」「すーっと落ち着く空間」など自分の感情と向き合うのです。その思いを建築家に形にしてもらうことでもよいのです。
自分が手に入れたい空間にアイデアを重ね、より理想の注文住宅づくりに近づけていって下さい。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。