家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
100万円コストダウンするテクニック
つい「このぐらいなら」が予算オーバーを招く
家づくりはなかなか予算通りにはいかないものです。展示場やショールームなどに行って、つい優れた機器を見て体験してしまうと、我家にも取り入れてみようとなるものです。心の中では「このぐらいであれば予算内で収まるだろう」と勝手に判断します。そんな積み重ねが予算オーバーとなるのです。
仮に300万円とか400万円オーバーとなると、根本的な問題(建物の大きさ等)から検討しなくてはなりませんが、100万円位であれば、なんとかなるものです。
計画する前に心がける5項目
一般的には見積もりが上がってきて、コストダウンを検討するものですが、もしローコストで収めたいのであれば、建築計画の段階で次の5項目を頭に入れながら進めていくことです。
1.建物の形状はできるだけシンプルにする
2.階高や天井の高さは標準にする(階高2.9m、天井高2.3~2.4m)
3.水回りの設備を集中させる(配管経路を短く)
4.外まわりの工事は最低限とし、住みながら完成させていく。
5.見積もりを依頼する会社は1社または2社(相見積もりをして安い方を選んで、安かろう悪かろうになることもあります。信頼できる1社をじっくり検討することで、結果的に安いということもあります。このあたりは設計担当者とよく相談すると良いでしょう。)
100万円を目安にコストダウンする箇所はココ!全10項目
100万円ですから、小さなチェックを積み重ねることで達成できるのです。
①仕様レベル(グレード)を見直す
他のメーカーで同じようなものがないか調べます。
②水回りの設備のランクを見直す
キッチンやユニットバスなどの設備は100万円を超える高価な商品です。無駄なオプションがついていないかを確認してください。例えば吊戸棚は高くて、これまでも使っていなかった場合は思いきって無くすことです。4~5万円は下がります。
③仕上げ材を見直す
床材や外壁材を下げることが無理あれば、内装のビニールクロスを1000番シリーズではなく、量産タイプにすれば全体で8万~10万位は下がるでしょう。
④数を減らす
開口部のサッシの数は多すぎませんか?また、開閉方法も引違いなどシンプルなものに変えることで、コストダウンが図れます。最近は1階2階、両方にトイレを設けますが、1階のみの方が家族のコミュニケーションが増えることもあります。
⑤造作家具を減らして、市販品で賄う
造作家具はありますか?あるのであれば、既成品で賄えれば、かなりのコストダウンになります。
⑥コンセントや照明器具の数をチェック
一般にコンセントは多めにつけておくと便利ですと言われます。確かにそうですが、結局、家具の後ろになって使えなかったということもあります。よく生活をイメージして再チェックすることです。照明の器具も同じです。
⑦建築家や工務店おすすめの商品を採用する。
建築家や工務店はそれぞれに得意とする流通ルートを持っているものです。そのルートを活かすことで、割引率の高い機器を取り入れ、コストダウンを図ります。
⑧施主支給も考えてみる
あまり勧めたくはないのですが、どうしてもという時にはネットで購入して、支給する方法です。勧めたくない理由は、後に何か問題が発生した時の責任問題があるからです。このあたりは、施工会社とよく相談することです。
⑨建物本体工事費が下がれば、一般管理費も下がります
工務店は一般に建物本体工事に会社経費として、何%の一般管理費を計上します。工事費が下がれば、一般管理費も下がります。
⑩雑工事の考え方
見積もり以外の工事で意外と見落とすのが、カーテン・ブラインド工事とエアコン工事です。特にカーテンのオーダー品は高くなります。こだわる箇所はオーダーにして、他はなるべく既成品にすることです。エアコン工事は天井カセットなど、壁内隠蔽するのであれば、工務店にお願いすることです。後に故障した際、面倒だからです。それ以外は新型でなくても、今のエアコンはとても性能が良いです。販売メーカーと直接やり取りすることで、コストダウンを図りましょう。
佐川旭のアドバイス
近年の材料や設備機器には、高機能な付加価値がついているものが多く流通されてきました。実際取り入れたものの、あまり使われなかったという声も聞かれます。
コストダウンというと、つい「グレードを下げる」といったマイナスイメージで捉えがちです。そうではなく、むしろ自分たちの生活スタイルで、本当に必要なものは何なのかを問う作業であると考えてみてください。
見積もりに関しての用語解説
一般管理費・・・会社全般の業務の管理活動にかかる費用
掛け率・・・定価に対する、購入価格の割合を表す。7掛けで仕入れるというのは、定価の3割引ということです。
実行予算・・・工事契約成立後、施工者が実務に即して作成する予算のことです。
設計価格・・・メーカーが提示する定価と同じような意味で使われます。
材工共(ざいこうとも)・・・材料費と施工費を合計した単価です。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。