家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
建築工事費のカラクリを知る
最も一般的な3.3平米(坪)単価法
家を建てようと思った時、誰もが一番始めに関心を持つのが、一体どのくらいの費用で建てることができるのかです。
そこで、ネットや不動産広告に目を向けると、坪単価の目安があり「総額○○○○万円で建てられます。」といった文言が書かれています。
住宅のコストを算出する方法は3つあり、最も一般的なのが「3.3平米(坪)単価法」です。他には各工事項目の箇所を積み上げていく「積み上げ方式」や「実例総計分析法」があります。しかしこの2つは専門的な知識がなければ難しいので、誰にでもわかりやすい坪単価法が広く活用されているのです。
3.3平米(坪)単価法の落とし穴
別途工事は費用に含む、含まない?
仮に延床面積132平米(約40坪)の家を坪単価50万円で建てようとすると、建物本体価格は2000万円となります。一般的にはこの時点で2000万円(税別)で家は建つのだと思います。しかし、その本体価格には別途工事費はすべて含まれているのか? 何が含まれていないのか? をチェックしなければ、あとで予算繰りが大変になってしまうのです。
別途工事というのは主にエアコン、照明器具、デッキ、ガス、屋外から引き込む給水管のつなぎなどです。
依頼先の会社によっては、「エアコン2台は計上、リビング、ダイニング、和室の照明器具のみは別途」などとしている場合もあります。
これらは統一されているものではなく各社バラバラです。
何が本体価格に含まれていて、何が含まれていないのかをしっかり確認することが大切になってきます。
一般的に考えるとなぜ始めから別途工事にしないで本体価格に計上しないのか? と不思議に思われるかも知れません。建築物は敷地の形状、家族の暮らし方、こだわる物などそれぞれに違うので別途工事という項目が発生しているのです。したがって少なくとも我が家の別途工事はどうなっているのか、概算費用はどのくらいなのかを頭に入れて全体予算を考えておく必要があるのです。
吹抜けは床面積に入らない?
床面積というのは、壁で囲まれた室内の床の面積を指します。そして各階の床面積の合計が延床面積です。
延床面積132平米(40坪)の家を坪単価50万円で建てようとした場合2000万円と書きましたが、この延床面積に吹抜けやロフト、ベランダの床面積は含まれていません。
しかし、実際には工事しなければなりませんので、施工床面積は増えることになります。
仮に2坪増えた場合、2000万円÷42坪=47.6万円となり坪単価は約2.4万円下がりますが、逆に50万円×2坪=100万円のアップで2100万円になるとも考えられます。このあたりの表示の仕方は実に曖昧なのです。
一般的には延床面積に坪単価を掛けますが、むしろ施工延床面積に坪単価を掛けた方が実際の建物本体価格に近い金額が算出されるのです。
全体予算をつかむ
建物全体の費用を坪単価法で算出した際、それは総予算の70~80%と考えることです。残りの20~30%は別途工事や諸費用となります。
つまり延床面積132平米(40坪)で2000万円とすれば、約860万円の別途工事や諸費用がかかるということです。
仮に全部含めて坪単価で割ると、約70万円/坪となり、建物本体価格が50万円/坪でしたので、坪単価が20万円アップすることになります。
この20万円/坪の中には、諸費用や引越し費用や登記代なども含めています。
■建物の本体価格に含まれない主な別途工事と付帯工事
坪単価に影響を与えるものは
本体工事は大きく「躯体工事費」、「仕上げ工事費」、「設備工事費」の3つに分けられます。
そのうち全体の約40%は躯体工事費となりますが、躯体工事は建物の骨組みをつくる最も重要な工事ですのでコストを下げることはできません。
坪単価に影響を与えるのは残り60%の「仕上げ工事」と「設備工事」なのです。
まず仕上げ工事でコストが上がる要因となるのがエコ建材の採り入れ方です。近年は環境や健康住宅への関心が高まり自然素材などを使う人が多くなっているからです。
特に注意しなければならないのが、仕上げ工事で壁に吸湿性のあるケイソウ土を使う場合は材料費がそれ程高くなくとも、水を使うので養生する期間が長くなり、手間代が高くなります。それが坪単価を上げる要因になることもあります。
自然素材を使う場合はコストバランスをよく考えて採用することです。
設備工事費は、10年前くらいであれば本体価格の20%前後でしたが、近年は25%を越えています。
設備機器はグレードを上げるとすぐに快適さを実感できるため、ついショールームなどへ見学に行くと高品質なものを選びがちになってしまいます。
高品質で高機能の設備機器は、価格が高いので結局は坪単価を押し上げる要因になっていくのです。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。