家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
住まいのトラブル~多いのは雨漏り、その対策は
外回りのデザインに無理がある
日本の気候の特徴は、6月7月の梅雨、秋の長雨をもたらす秋雨前線です。特に秋雨の時期は、台風シーズンと重なって大雨になることもしばしば。
また、近年はゲリラ豪雨の発生回数も増加傾向にあり、気象条件が厳しくなる一方です。
しかし、住宅は、例えば軒の出が少なかったり、ベランダやルーフバルコニーが増えていったりと防水の観点からは問題のあるデザインが増えています。
住宅の相談を受けている団体などのデータをみても、トラブルで多いのが雨漏りです。これは雨の多い日本の気象条件で、影響のある外まわりが無理のあるデザインで建築されているともいえます。
不具合相談の16.3%は雨漏り
(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターが昨年まとめた「住宅相談統計年報2016年」によると、新築住宅で12,832件の相談があり、実際に不具合が生じていたのが、10,413件で、81.1%でした。
そのうちの1位が「ひび割れ」で22.7%、「雨漏り」は16.3%で2位でした。特に屋根、外壁、開口部といったところに問題が多く見られています。
1位のひび割れは、築3年未満での相談が多いのですが、雨漏りは、築3年以降も相談に至る割合が高く、頭を悩ませるトラブルのひとつになっているのです。木造住宅は、躯体内に水が侵入すると、構造材が腐り耐久性や耐震性を損なう最悪の事態にもなりかねません。
そうならない為にも、屋根、外壁、開口部まわりのデザインには施主も注意を払っておく必要があります。それでは、どんなところに注意を払っておけばよいのでしょうか。
こんな所に配慮しておこう
雨漏りといえば、屋根を連想しがちですが、実は8割以上は側面からの原因によるものです。
特に最近は、軒の無い家が増えてきています。そのほうがシャープなデザインとなり格好がよいからです。しかし、屋根と壁のジョイント部分の処理をきちんとしておかないと、竣工して数年後にその部分が雨漏り発生の原因になる可能性があります。
また、屋根からの雨が壁を伝って流れることにより、壁が汚れカビが発生する原因にもなります。
昔の家のように大きな軒を出す必要はありませんが、せめて30㎝〜40cmでも出しておけば、水を切ることができ、壁の汚れも防ぐことができます。
次に問題になる所は、部屋とバルコニーの段差です。
部屋からバルコニーに出るときは段差がないほうが出やすいのですが、段差がないと仮にゲリラ豪雨の際、排水口が雨水をのみきれず雨水がたまり、部屋に流れ込んできてしまいます。
少なくとも段差は12cm以上確保することです。特にリフォームする際などに注意することは、使い勝手を優先して段差をなくしてしまうことです。
デッキとサッシの間(赤い丸の部分)をぴったりつけないで、少しすき間(3cm位)を空けるだけでも雨のはね返りを防ぐことができます。
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。