不動産売買のトラブルを防ぐために判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
不動産広告を見る際の注意点(不動産公正競争規約)
【Q】
新居として新築の戸建て住宅やマンションを購入するため、不動産広告をチェックしています。どのような点に注意して広告を見る必要があるでしょうか。
【回答】
1 不動産広告に対する規制
インターネット・チラシ・新聞等の不動産広告は、一般の購入者が不動産取引に入る端緒となる重要な情報源です。そのため、不動産広告に記載された物件情報や取引条件が、一般消費者に対して誤解を与えることのないように、不動産広告には、宅建業法、不当景品類及び不当表示防止法、「不動産の表示に関する公正競争規約」による規制が設けられています。これらの法規制では、広告表示の基準、誇大広告等の不当表示の禁止、未完成物件の広告開始時期等の制限を定めています。
特に、不当景品類及び不当表示防止法に基づき公正取引委員会の認定を受けた「不動産の表示に関する公正競争規約」(以下「公正表示規約」)では、居住用の物件を対象として、主に、広告表示の開始時期の制限、必要な表示事項(物件概要)、表示基準、特定事項の明示義務、特定用語の使用基準、不当表示の禁止等、広告表示の具体的な基準を規定しています。
これらの規制の中で、新築物件に関連する主なものは、(1)広告開始時期の制限、(2)物件内容・取引条件に関する表示基準、(3)不当表示の禁止、(4)特定事項の明示義務です。これらの点に注意しながら広告を見る必要があるでしょう。
(1)広告開始時期の制限
未完成の宅地または建物は、宅地の開発許可や建物の建築確認を受けるまで広告をすることはできません。
未完成建物の広告を見る際には、建築確認番号、入居予定年月日、主たる設備の概要の表示を確認する必要があります。
(2)物件の内容・取引条件等の表示基準
公正表示規約では、同規則において、物件の内容・取引条件等に関し、ア.取引態様(売主・代理・媒介)、イ.物件の所在地 ウ.交通の利便性 エ.各種施設までの距離・時間 オ.団地の規模 カ.面積 キ.物件の形質 ク.写真・絵図 ケ.設備・施設等 コ.生活関連施設 サ.価格・賃料 シ.住宅ローン等、を記載する際の具体的な基準を定めています。これらの基準の一部が、公正表示規約及び同規則の2022年改正(同年9月1日施行)により、下記の通りに変更されました。
ウ.交通の利便性、エ.各種施設までの距離・時間
① 販売個数が2以上の分譲物件においては、最も近い住戸の出入り口、及び、最も遠い住戸の出入り口からの徒歩所要時間等の表示が必要。
(例:〇〇駅まで徒歩3分から6分、△△駅まで100mから200m)
② 通勤時の所要時間が平常時の所要時間を著しく超えるときは、朝の通勤ラッシュ時の所要時間と平常時の所要時間をその旨明示して併記できる。
(例:A駅からB駅まで通勤特急で×分、平常時は特急で△分)。
③ 乗換えを要するときには、その旨を明示し、所要時間に乗換えに概ね要する時間を含める。(例:最寄り駅のA駅からC駅まで40分から45分
※B駅で○○線に乗換、※上記所要時間には乗換え・待ち時間含む)
④ 物件と最寄り駅間の所要時間に関し、物件から最寄り駅等までの所要時間を表示する
(例:A駅まで徒歩〇分)。
以上のように、規制が強化されました。
交通の利便性、各種施設までの距離等は物件を選ぶ際の重要な要素となるため、記載を丁寧に確認する必要があります。
ク.未完成の新築住宅等の外観写真
未完成の建物を表示する場合には、取引する建物と規模・外観が同一の建物の外観写真に限るとされてきましたが、ⅰ)取引する建物の施工者が過去に施工した建物であること、ⅱ)構造・階数・仕様が同一であること、ⅲ)規模、形状、色等が類似している、場合には他の建物の外観写真を表示できると規制が緩和されました。但し、取引する建物と誤認されるおそれのないように表示する必要あり。
(例:「前回販売した外観写真であり、窓の位置等のデザインが異なります。」と明示)
このような記載がある場合には、取引物件との違いを確認する必要があります。
(3)不当表示の禁止(誇大広告の禁止)
物件の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通その他の利便、対価の額又はその支払い方法、金銭の貸借の斡旋、について、著しく事実に相違する表示をし、又は、実際よりも、著しく優良であり、若しくは有利であると誤認させる表示をしてはならないとしています。
実際には予定がないにもかかわらず「近いうちに大型施設ができる」、旨の記載等が不当表示にあたります。このような記載のある場合には、計画の具体的実現性について確認をする必要があります。
(4)特定事項の明示義務
都市計画法、建築基準法その他法令による利用制限や傾斜地、地形が著しく悪い不整形地等、消費者が通常予期することができない物件の欠陥で、消費者にとって、著しく不利益となる事項については、広告の見やすい場所に、わかりやすい表現で表示する必要があります。
(例:「再建築不可」、 建築基準法42条2項の道路について「セットバック要」)
2022年の同規則改正により、土地が擁壁に覆われていないがけ上又はがけ下にあるときには、その旨に加えて「建物を建築する場合に制限が加えられているときは、その内容も併せて明示する」ことになりました。
特定事項として明示される内容は、土地の利用計画や建物の建築計画に影響を与える重要な事項である可能性があります。広告にこのような記載がある場合には、自身の土地利用や建築計画にどのような影響があるのか、事前に調査・確認をする必要があります。
2 まとめ
不動産広告には、公正表示規約の基準に基づき、様々な情報が記載されています。
公正表示規約のルールに基づかない不当表示や曖昧な表示には注意する必要があります。
未完成の新築物件の場合には、取引建物が未だ存在しないため、不動産広告やパンフレット等の情報が大きな役割を占めますが、現地に赴き、周辺環境・景観・日照・交通利便性等、を実際に確認することも重要です。