安心・安全な不動産売買契約を締結するために不動産売買のトラブルが、どのような局面から生じているか、そのトラブルを防ぐには何を注意すれば良いのかを解りやすく解説しています。
不動産購入の流れ・広告の注意点
不動産広告に希望条件にあう物件を見つけました。現地案内を受けようと思います。今後、不動産購入までの手続きはどのような流れになるでしょうか。
一般の方が不動産を購入する場合、以下の流れを取ることが多いでしょう。
①
インターネット広告等で物件探索
②
現地案内で物件確認
③
取引条件交渉(買付証明書の提出・売渡承諾書の受理、融資事前審査等)
④
媒介業者と媒介契約締結
⑤
媒介業者から重要事項説明書の交付・説明
⑥
売買契約締結(融資本審査)
⑦
金銭消費貸借契約
⑧
決済・物件引渡し
これらの手続き以外にも、税務相談や建物状況調査等、状況によって様々な関連手続きを行う場合もあります。
マイホームを購入する予定です。不動産広告をみる際の注意点は何でしょうか。
不動産広告やパンフレット等には、物件情報や取引条件等、不動産を選ぶ際の重要な情報源となる事項が記載されています。これらの情報は消費者に重要な影響を持つため、宅地建物取引業法や不当景品類及び不当表示防止法、「不動産の表示に関する公正競争規約」等の法規制により、下記の通り、広告開始時期、物件の内容・取引条件等の表示、誇大広告等の禁止、特定事項の明示義務等のルールが定められています。特に、未完成物件の場合、実際の建物を事前に確認することができないため、不動産広告の記載が正確であることが重要となります。下記の広告規制に注意して不動産広告を見る必要があります。
1 広告の開始時期の制限
未完成の宅地または建物は、宅地の開発許可や建物の建築確認を受けるまでは広告をすることができません。未完成宅地・建物の広告を見る際には、開発許可番号や建築確認番号が記載されていること、また、入居予定年月日、主たる設備の概要の表示を確認する必要があります。
但し、建築条件付土地売買契約や自由設計型マンション企画では、一定の事項を示すことで、建築確認等を受ける前の広告が認められています。未完成建物の売買の広告であるにもかかわらず、建築条件付土地売買契約の広告と誤解を生じさせる記載をしているものもあるため注意が必要です。
2 物件の内容・取引条件等の表示
不動産広告には、①広告主、②物件の所在・規模・形質等、③物件の価格、④その他取引条件、⑤交通その他利便や環境等、を見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により分かりやすい表現で記載することが義務付けられています。
物件の内容・取引条件等に関しては、ア.取引態様(売主・代理・媒介) イ.物件の所在地 ウ.交通の利便性 エ.各種施設までの距離・所要時間 オ.団地の規模 カ.面積 キ.物件の形質 ク.写真・絵図 ケ.設備・施設等 コ.生活関連施設 サ.価格・賃料 シ.住宅ローン等、が記載されます。
エ.各種施設までの距離・所要時間については、販売戸数が2以上の分譲物件では、最も近い住戸と最も遠い住戸の距離・所要時間が表示されます。また、徒歩による所要時間は、道路距離80mにつき1分間で表示されます。
新築未完成物件の「ク.写真・絵図」では、完成予定の建物と規模・外観が同一の建物の外観写真だけでなく、一定の条件のもと施工業者が過去に施工した類似の建物の外観写真が使用される場合もあるため、完成予定の建物との違いに関する注意書きに留意する必要があります。
3 不当表示・誇大広告の禁止
著しく事実に相違する表示をし、又は、実際よりも著しく優良であり、若しくは有利であると誤認させる表示は禁止されています。実際には予定がないにもかかわらず「近いうちに大型施設ができる」「高速道路の建設計画がある」旨の表示や、駅まで直線距離が1kmではあるものの、実際の道のりは3kmある場合に「駅まで1km」との表示等が誇大表示にあたります。このような記載がある場合には、計画の具体的実現性や実際の道のりについて確認をする必要があります。
4 特定事項の明示義務
都市計画法、建築基準法その他法令による利用制限や傾斜地、地形が著しく悪い不整形地等、消費者が通常予期することができない物件の欠陥で、消費者にとって著しく不利益となる事項については、広告の見やすい場所に、わかりやすい表現で表示する必要があります。接道義務を満たさない土地について「再建築不可」、前面道路が2項道路である場合に「セットバック要」等の記載が特定事項に当たります。
特定事項として明示される内容は、土地の利用計画や建物の建築計画に影響を与える重要な事項です。自身の土地利用や建築計画にどのような影響があるのか、事前に調査・確認をする必要があります。
広告で見た建物の現地案内を受ける予定です。現地案内で気を付けるべき点はなんでしょうか。
現地案内では、物件の劣化状態、周辺環境、日照、騒音、匂い、景観等、不動産広告ではわからない点を直接確認できる貴重な機会です。特に、日照や騒音等は、訪問する時間帯によって状況が異なる場合もあるため、気になる点がある場合には、異なる時間帯に複数回確認に訪れることも有効です。
また、居住中の物件の現地確認では、家具や電化製品によって、物件内部の全てを確認することが難しい場合もあります。そのような場合でも、後のトラブルとならないように、可能な限り、物件の状況を聞き取り・現状を確認した上で、購入するか否かの決断をすることが大切です。
近年は、テレビ電話等を利用したオンラインでの現地案内が利用される機会が増えています。オンラインでの現地案内は、直接現地に赴くことが難しい場合にWEB画面を通じて、物件の様子を一通り確認できる点で、非常に有用な手段といえます。一方で、前記の通り、劣化状況・日照・騒音・匂い等、直接現地に赴かなければ確認できない点も多いことを留意の上で、利用を検討すべきでしょう。