不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産売買のトラブルアドバイス契約の当事者に関する重要な事項を学ぼう(2016年2月号)

不動産売買のトラブルアドバイス

専門家のアドバイス
瀬川徹

不動産売買のトラブルアドバイス

不動産売買のトラブル
アドバイス

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

2016年2月号

不動産売買のトラブルを防ぐために判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。

契約の当事者に関する重要な事項を学ぼう

Q

A(意思能力、行為能力)

①この住宅の売買契約を行う為には、あなたとこの高齢者の方の双方に、この住宅の売買の是非を判断できるだけの能力(意思能力)が必要です。もし、その能力が欠けている場合には売買契約が無効となります。
②もし、この高齢者の方が精神上の障害によりその事理を弁識する能力に欠ける常況にある場合には、親族等の申立により、家庭裁判所で後見開始の審判を受ける必要があります。審判を受けた高齢者は、成年被後見人となり自ら住宅の売買を行う能力(行為能力)が制限されます(制限行為能力者)。
③家庭裁判所は、この審判の際に、必ず、成年後見人を選任します。成年後見人は、成年被後見人の法定代理人として住宅等の資産の管理や処分の権限を持ちます。但し、成年被後見人が住む住宅の売却は、別途、家庭裁判所の許可を得て行う必要があります。
④この高齢者の方は、寝たきりとのことですから、住宅の売買の是非を判断できる状況にあるのか心配です。あなたは、この点を慎重に確認する必要があります。
⑤もし、後見開始の審判が必要な場合、その手続には数か月以上の期間が必要です。又、成年後見人が成年被後見人の住まいを売却するには家庭裁判所の許可が必要ですので、その時間もかかります。しかも、住宅の売買契約が締結されてもあなたがこの住宅に移転できる時期は、一般的に住宅の売買代金の決済後ですから、更に先になります。
⑥もし、あなたが、未だこの住宅に移転ができない時期に借家契約を終了させると、移転までの間、他の借家を探す必要が生じます。この状況は避けなければなりません。
⑦ですから、仲介業者は、必ず、寝たきりの高齢者の方との面談等により状況を確認し、成年被後見人ではないか、今後、後見開始の審判の必要性はないか等を考慮しながら、売買契約の締結時期、住宅への移転時期等を助言します。あなたは、その助言に従い、借家の解約時期を決めることが大切です。
3 借家契約の解約手続
①一般的な借家契約では、契約期間の途中でも借家を終了させることができる期間内解約の特約(合意)を入れています。
②この特約は、借主が、期間の途中で解約をすると、定めた予告期間(1月、3月、6月等)の経過時に借家契約が終了するとの合意です。又、予告期間相当の賃料を支払えば、直ぐに借家契約が終了するとの合意です。
③あなたは、解約により予告期間経過時に借家から退去する必要が生じますので、仲介業者と住宅の売買時期、及び、移転の時期を確認した上で、解約を行うことが大切です。

4 行為能力の制限
①不動産の売買に一定の制限を受けるのは、成年被後見人だけではなく、被保佐人(家庭裁判所で保佐の審判を受けた者)や未成年者、破産者なども同様です。
②被保佐人の場合は保佐人の同意、未成年者の場合は親権者の同意が必要です。又、破産者の場合は、破産者本人ではなく破産管財人が売買を行います。
③不動産の売買に際しては、契約の当事者(売主・買主)がこうした行為能力の制限を受けているかを確認することも大切です。

5 代理人による売買
①又、息子さんが、この高齢者の方の代理人となって住宅の売買を行う場合には、息子さんがこの高齢者の方から住宅の売買を行う権限を付与されていることが必要です(任意代理)。この権限を付与する際も、この高齢者に意思能力等が必要です。
②従って、代理人との売買契約を行う場合には、あなたは、仲介業者に高齢者の方が成年被後見人等の制限行為能力者ではないことを確認、印鑑証明書の添付による委任状の真否の確認、委任事項の確認等を行ってもらい、その代理権限の根拠と範囲を慎重に確認することが大切です。

6 重要事項説明書と売買契約書
①仲介業者が使用している「重要事項説明書」や「売買契約書」の記載事項の中には、売買の当事者に関する内容があります。
②「売買契約書」には、必ず、売主及び買主が署名捺印する欄があります。通常は、売主及び買主の各本人が住所を記載し署名捺印を行います。しかし、高齢者の方が成年被後見人の場合には、売主欄に成年被後見人の高齢者の方を記載し、その下に成年後見人が法定代理人として署名捺印します。又、任意代理人が行う場合には、本人を記載した上で、代理人が顕名(〇〇代理人)して署名捺印します。この署名捺印により売買契約が成立します。
③「重要事項説明書」には、「売主の住所・氏名」の欄と「対象となる宅地又は建物、登記記録に記載された事項」の欄があります。これは、売主が誰か、及び、物件の登記記録(旧登記簿謄本)上の所有者名義人を確認するものです。
④仲介業者の重要事項説明や契約書の読み上げは、こうした契約当事者に関する重要な事項の確認をする機能を持っていたのです。あなたは、仲介業者のこうした説明をよく聞いた上で売買契約を行って下さい。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

瀬川 徹tooru segawa・瀬川 百合子yuriko segawa弁護士
瀬川徹法律事務所東京都中央区銀座2-9-14 銀座ビル5階
※不動産関連をはじめとして、法人・個人の幅広い法律問題を取り扱っております。

瀬川 徹
不動産業界(含む建設)の公益社団・民間等の数社の顧問弁護士
不動産業界団体の講演会・研修会の講師
宅地建物取引士(旧・取引主任者)法定講習会の講師
東京地裁民事22部(建築紛争専門部)の調停委員
東京地裁民事22部(借地非訟事件)の鑑定委員
厚生労働省・社会保障審議会委員(年金記録訂正分科会・会長代理)
電力広域的運営推進機関・ADR(あっせん・調停)委員

瀬川 百合子
東京理科大学建築学科卒業
平成22年弁護士登録 東京弁護士会所属
建築紛争審査会運営委員会
神奈川県宅建協会法定講習講師