不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産売買のトラブルアドバイス目的物に関する重要な事項(建物の法的規制 その2)(2016年6月号)

不動産売買のトラブルアドバイス

専門家のアドバイス
瀬川徹

不動産売買のトラブルアドバイス

不動産売買のトラブル
アドバイス

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

2016年6月号

不動産売買のトラブルを防ぐために判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。

目的物に関する重要な事項(建物の法的規制 その2)

Q

A(耐震基準とインスペクション)

4 仲介業者の責務
①中古住宅の売買に際しては、必ず、仲介業者が中心となり、契約時における中古住宅の客観的な状況を詳細に調査確認し、その結果を売主、買主の双方に確認し、その状況を書面などに記録しておくことが大切です。
②仲介業者は、媒介契約上の義務と共に重要事項説明義務の一環として、中古住宅の客観的な状況を調査確認し、買主に報告説明する責任があります。特に、アスベスト建材については、使用の有無の調査が行われているか否か、調査が行われている場合には、その内容を説明する義務があります。(宅建業法35条)。

5 建物状況調査(インスペクション)
①契約時における中古住宅の客観的な状況の調査は、売主と買主の間に立ち、公正中立な立場で行なわれる必要があります。又、その調査には、建物に関する専門的な知見を要する場合があり、建築に関する専門家の助力が必要不可欠と考えられるようになってきました。
②そこで、国土交通省も、建物に関する専門家が、売買契約の当事者(売主又は、買主)から依頼を受けて、建物の基礎・外壁などに生じたひび割れや雨漏りなどの劣化や不具合を調査する制度(建物状況調査、インスペクション)を推奨し「既存住宅インスペクション・ガイドライン」(2013年)を公表して望ましい検査項目を示すなどの普及に努めています。
③又、宅建業法の一部改正の結果、仲介業者には、中古住宅の売買の仲介にあたり、次の義務が生じます。
ⅰ依頼者に対し、インスペクション業者のあっせんの可否を書面で示す。
ⅱ中古住宅のインスペクションが行われているか否かを確認し、行われている場合には、その結果を買主に説明する。
④なお、インスペクションの調査料金は、調査の内容にもよりますが、調査時間が2~3時間程度の内容の場合5万円~6万円程度から行うことが可能と思われます。この費用を買主が負担する場合、中古住宅の取得費用がその分割高になる面がありますが、安心して購入できる面を重視すれば、検討に値するものと思料します。

6 新築住宅の瑕疵担保の保証
①ところで、新築住宅(完成後1年以内、かつ、未使用)の場合には、売主の瑕疵担保責任やその履行責任が加重されています。
②新築住宅の基本構造部分等の一定部位の瑕疵担保責任期間を引渡から10年以上としています(住宅の品質確保の促進に関する法律)。他の部位の瑕疵担保責任の期間は、売主の住宅販売会社(宅建業者)が新築住宅を引渡から2年以上ですので(宅建業法)、加重されています。
③又、瑕疵担保責任の履行を確保する狙いから、住宅販売業者に対し、一定基準日の間に販売した新築住宅の戸数に応じた一定額の住宅瑕疵担保保証金の「供託」、又は、一定の「保険契約の締結」を義務付けています(住宅瑕疵担保履行法)。

7 比 較
①近時、新築住宅の供給戸数が横ばいから下降傾向となることが予測される中で、中古住宅の市場は、拡大の傾向にあります。あなたは、次の比較の上で選択を行って下さい。
②新築住宅は、一般的に瑕疵の存在する可能性が低く、仮に、瑕疵が存在した場合でも前記の瑕疵担保の保証の制度が存在し安心感がありますが、売買価格は、高額と思料されます。
③中古住宅は、耐震性の不足や経年劣化による瑕疵の可能性があり、又、瑕疵が存在した場合の瑕疵担保の保証は、特別な保証制度を活用しない限り約定に従うか、約定がない場合には、瑕疵の存在を知ってから1年以内に限り瑕疵担保責任を負担します。なお、約定の一般的な内容には、売主が個人の場合は、 雨漏り・シロアリの害・建物構造上主要な部位の木部の腐蝕・ 給排水管(敷地内埋設給排水管を含む)の故障について引渡完了日から3ヶ月以内に請求を受けたもの。又、売主が宅地建物取引業者の場合は、引渡完了日から2年以内に請求を受けたものについて売主が瑕疵担保責任を負うとするものがみられます。しかし、前記のインスペクションを活用することで、瑕疵の有無などを調査することができ、中古住宅の品質や性能に対する適切な評価が可能となり、紛争の予防に役立ちます。又、売買価格が低額と思料されます。

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